第30話 宿泊学習編7

「流石だな前橋!!」


 俺が立ち上がって身なりを直していると池内が笑顔でこちらにやって来た。


「顔が良いだけ無くて腕っぷしも強いなんて、やっぱりモテる奴は何をやってもすごいんだな!」


「だからモテねぇよ。それよりうちのクラスって何人残った?」


「えっと、25人くらいかな?」


「なるほど……男は何人くらいやられた?」


「えっと……7人だね」


「圧倒的に男子が減ったな……残り13人か……三組に勝つのは難しいかもな」


 とりあえず俺たち一組は再び陣地に集まり、残ったメンバーで作戦を立てることにした。

 

「あれ? 八代と九条と大森は?」


「あぁ、あいつらならもうやられたぞ」


「マジかよ……まぁ前線に居たし仕方ないか」


 しかし、リーダー各が全員いなくなったのも痛いな……。

 新しくリーダーを立てて三組が責めて来るのを待つか?

 なんてことを俺が考えていると、今度はゆっくりと三組の生徒が俺達の陣地にやって来た。


「嘘だろ! もう責めてきた!」


「まさか、私達が消耗しているのを狙って!?」


「クソっ! 仕方ない全員戦闘態勢……を?」


 俺が指示を出そうとした瞬間、一人の男子生徒が前に出てきた。

 黒髪で背が高く、なんだか爽やかな感じがした。


「一組の大将に提案がある!」


 前に出てきたイケメンがそう言った。

 その瞬間、周囲はざわざわと騒ぎ始めた。


「提案?」


「一体なんだ?」


「隙をついて襲ってくるんじゃないか?」


 一体提案とはなんであろうか、このまま責めれば三組は高い確率で俺たちに勝利出来るというのに……。

 俺がそんな事を考えていると、三組のイケメンは声を上げてこういった。


「大将同士の一騎打ちを申し込む!」


 え?

 マジ……?

 いやいやいや絶対そんなの嫌だよ!?

 めっちゃ注目されるし、責任も重たいじゃん!

 もしこれで負けてみろよ、絶対クラスの奴らそれをネタに俺をいじめるぜ?

 で、でも断ったら断ったでなんか色々言われそうだしなぁ……。


「うわっ……あいつ」


 俺が色々な事を考えていると、隣にいた井宮が三組のイケメンの顔を見て嫌そうな顔をした。

 なんだ?

 面識でもあるのか?

 そんな事を俺が考えていると、俺は英司に背中を押された。


「え、英司!?」


「ほら大将同士の一騎打ちだってよ! 行ってこい! そして死んで来い!」


「お前ふざけんな! なんでやられる前提なんだよ! まさかさっきのあれ根に持ってるのか!?」


「まぁな」


「まぁなじゃねぇ! 良いからさっさと離せ!!」


 そうこうしているうちに俺は英司に押され、三組のイケメンの目の前に来ていた。

 英司はそそくさと皆のところに逃げて行った。

 はぁ……なんで俺がこんな目に……。


「初めまして前橋君、僕は最上吉秋(さいじょう よしあき)」


「あぁ、どうもよろしく」


「早速だけど、僕がなんで大将同士の一騎打ちを望んだか、その理由がわかるかい?」


 いや、知るわけねぇじゃん、普通に責めて来てくれよ。


「実は僕はね、二組の井宮さんの事が好きなんだ」


「へ?」


 え?

 あぁそうなの?

 てか、こんな大勢の前でそんな告白して良いの?

 こいつ恥ずかしくないの?

 てか、俺が恥ずかしくなってきた!!


「でも、この前振られてしまってね……それで理由を聞いたら、彼女は『強い人が好きなの』と言ってその場を去ったんだ。だから僕は彼女と付き合うために君よりも強いという事を証明しなければいけない! だから一騎打ちを申し込んだんだ!」


 いや、なんで俺に申し込むんだよ!

 それに多分だけど、井宮の言ってる強いって、ゲームの強い奴だと思うんだけど?

 多分リアルの対人戦闘の事じゃないと思う。


「あぁ……とりあえず理由は分かったけど、なんで俺なの? 別に俺、そこまで井宮と仲良くねぇよ?」


「嘘を言わないでくれよ、見ていればわかる、男子には冷たい井宮さんが君には心を許しているかのように親しく接している! きっと井宮さんは君に好意を持っているはずだ!!」


 いや、違うから。

 ただ趣味が合うだけだから、何かこいつ勘違いしてるんじゃねぇか?

 てか、もし仮にこいつの言う事が正しかったとしても普通俺に言うか?

 俺がため息を吐きながらそんな事を考えていると、最上は剣を俺に向けて宣言する。


「宣言しよう! 僕は君を倒して再び井宮さんに告白する!!」


 いや、勝手にしろよ。

 なんで俺が悪者みたいになってんだよ!

 やべぇーよ、面倒くせぇよ! 

 早くこいつから離れたいよ!

 でもこいつを倒さばレクリエーションも終るし……後ろの井宮もなんか恥ずかしそうにしてるし、さっさと終わらせちまうか。


「あぁ、分かったよ、じゃあ一騎打ちを受けるよ」


「そうか、ありがとう!」


 なんだか爽やかな奴だなぁ……。

 そうだな……俺が負けたら井宮から何か言われそうだし、それにクラスメイトからも顰蹙を買いそうだし、本気でやるか……。


「ルールは簡単、先に相手のターゲットを光らせた方の勝ちだ」


「あぁ、分かったよ」


「それじゃあ、スタートはこのコインが地面に落下したらにしよう」


 なんで外国のコインを携帯してんだよこいつは……。

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