拗らせイケメンと四人の美少女

Joker

第1話 要するに俺は一人が好きなんだ

 クラスメイトとはほぼ他人である。

 これは俺が昔から思っていることだ。

 クラスメイトとは学校で勉学を一緒に受ける他人だ。

 学校以外では何をしているかやどんな人間なのかなどは分からない。

 クラスではイケイケでもバイト先では大人しい従業員なんてこともあり得る。

 つまり俺が何を言いたいかというと……。


「学校での姿だけ見て好きだなんて言ってる奴は本当にそいつを好きじゃねーんだよ」


「でた、またお前の持論かよ」


 食堂で昼食をしながら、俺は目の前にいる唯一の友人、笹原英司(ささはら えいじ)に向かってそういう。

 

「てか、恋愛どうこうの前にお前は俺以外に友人をつくれ圭司(けいじ)」


 英司は俺、前橋圭司(まえはし けいじ)の名前を呼ぶ。

 こいつの言う通り、俺には英司以外の友人と呼べる存在がいない。

 まぁ、友人を必要としていない部分もあるのだが、このご時勢一定のコミュニケーション能力は必要なわけで、英司の言っていることもわからないわけではない。


「はぁ……お前はまず彼女の前に友達だな、このままじゃお前本当に社会に出て上司とかと会話できなくなるぞ」


「失礼な、俺だって会話くらい出来る。ただむやみに近しい人間を作りたくないだけだ!」


「なんだよそれ」


「だって、面倒だろ? 突然遊ぼうぜ! とか言ってくるやつとか、いきなりおい磯野野球しようぜ! とか言ってくる奴」


「そんな日曜夜七時みたいな友人ばっかりじゃねぇよ、じゃあなんで俺と友達なんだよ」


「お前は急に遊びに行こうとか、放課後に遊びに誘わない、学校で付き合う友人としては丁度いい」


「うわぁ……俺、お前と友達やめたくなったわ」


「お前は面倒じゃないのか? 友達付き合いなんて疲れるだけだぞ?」


「そんなことないと思うけど?」


「いや、あいつらはちょっと輪を乱す言動をするだけですぐに陰口を言い、気にくわないとすぐにそいつをいじめる」


「お前の偏見がすごいのはよくわかった」


「だから俺は高校に進学してもこのスタンスは変えない。クラスメイトは他人、友人は少なくていい、彼女なんて絶対いらない」


「なんだよ、その青春を全否定する発言は、俺たちもう高校生だぞ? 友達と馬鹿やったり、彼女作ってひと夏の思い出作ったりしたいとか思わないの?」


「アホか、そんな無駄な時間を使う暇があったら、俺は自分がやりたいことに時間を使う」


「はぁ……あっそ」


 俺たちが高校に入学してもう早いもんで二か月が経とうとしていた。

 俺は家から近いからという理由で、この私立千善高校(しりつせんぜんこうこう)を選んだ。

 いたって普通のこの学校、特別偏差値が高いわけでも低いわけでもなく、かといって部活動に力を入れているわけでもない、本当に普通の高校だ。

 しかし、俺は入って二か月でこの学校に来たことが失敗だと気が付いた。

 自由すぎる校風、キャラの濃すぎる生徒、そして同じくキャラの濃すぎる教師たち……てか校長が今時ズラって……。

 ほかにもいろいろとツッコミどころが多いこの学校に入学したことを俺は深く後悔していた。

 近いからってだけで学校を選んだ己の浅はかさを恨みたい。


「要するにお前は一人で居たいのか?」


「あぁそうだ、一人は楽だぞ」


 昼飯を食べ終えた俺と英司は食堂から教室に移動しながらそんな話をする。


「じゃあ、俺と一緒なのもうざいか?」


「いや、俺も人間だあんまり一人なのは寂しい」


「結構わがままだなお前……」


「まぁな」


「どや顔すんな」


「まぁ、そんな感じで友人は一人か二人位がちょうど良いと思っている」


「はぁ……なんだかなぁ……」


 俺たちがそんな話をしながら廊下を歩いていると、俺たちの前の廊下でたむろしている女子達がいた。

 要するに学園内カースト上位の自分を可愛いと思っている面倒な女子達だ。

 なんでわざわざ廊下で話をするんだか……。

 そんな女子達の元を俺たちは通り過ぎる。


「はぁ、あぁいう女子も面倒だよな、なんか一人が輪を乱すとそいつを標的にして陰湿ないじめをするだろ?」


「いや、そうじゃない子もいるって」


「そうか? 女子ほど面倒な存在は居ないぞ」


「はぁ……イケメンなのにもったいないなお前」


「お前はまた何をアホなことを俺はイケメンなんかじゃなねぇよ、たまに言うよなお前、馬鹿にしてるの?」


「いや卑屈すぎだろ? じゃあ振り向いて見ろよ」


「え?」


 俺は言われるままに後ろを振り向く。

 廊下に居た女子全員が俺から目を逸らした。

 うむ、俺の顔は見るに堪えないということか……結構……傷つくな……。


「英司………泣いていいか?」


「待て何を思った?」


「だって女子が全員顔を逸らしたぞ、俺の顔は見るに堪えないらしい」


「いや、それ全員お前の後ろ姿見てて突然お前が振り向いたから顔逸らしたんだよ」


「そんな都合の良い解釈あるか! あぁ俺はもうだめだ……早退する」


「メンタル弱すぎだろ」


「お前が変なことさせるからだろ……はぁ他人の気持ちとか考えたくない……面倒だ」


「お前はその面倒臭がりな性格もどうにかしろよ、そんなんじゃ社会に出て困るかもしれないぞ」


「そういわれてもなぁ……俺のもっとうは面倒ごとから出来るだけ避けるだからな」


「それがダメなんだよ、はぁ……イケメンのくせにその性格で全部台無しだよ」


 これが俺の学園生活の一部だ。

 基本的には英司と一緒に学校生活を過ごしている。

 そして、英司はたまに俺に変なことを言う。

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