第61話

俺は七回も三人で抑えた。ベンチに戻ると高住先輩が笑顔で向かえてくれた。


「ナイスピッチングだな。まだ1対0で神経使うかもしれないが、最後まで頼むぞ」


高住先輩を投げさせないで終わるのは申し訳がなく感じるだろう。きっと高住先輩は投げれなくて歯がゆく感じているはずだ。だから俺はこの試合に絶対に勝って高住先輩に次の試合に投げてもらおう。


「はい、最後まで投げ抜いて勝ちますよ」


「はは、その意気で頼むぞ」


俺は頷くと、バッターを見た。バッターは九番からだ。なんとしても長沢先輩にチャンスで回して欲しい。長沢先輩はやられっぱなしで終わるようなタイプじゃない。チャンスで回せば次は打ってくれるだろう。


バッターは追い込まれたがなんとか粘りまくってフォアボールで塁に出た。次のバッターは恐らくバントだろう。長沢先輩をみるとよそけ通りバンドのサインを出していた。初球で番とに成功して、ハイタッチをしていたので俺もベンチからハイタッチをした。


二番打者は繋ぎのバッティングでセカンドに転がしツーアウト三塁になった。


「頑張れー菅井くーん」


彼女だろうか。澄んだ声が響き渡る。ていうか彼女アルプススタンドにいないんだね。多分声が聞こえるから一塁側の席で見ているのだろう。菅井はその声を聞き手を振った後引き締まった顔で打席に入った。


初球は見逃しストライクになった。二球目はスライダーの可能性が高いのを知っているからか落ち着いている。まぁスライダーと揺ってもインコースかアウトコースかはわからないんだけど。球の質的に山をはって打たなきゃ打てない。


アウトコースかインコースかどっちに山をはるのだろう。菅井先輩は思いっきり踏み込んで打ちにいった。菅井の予想通りボールがきてボールは右中間を破った。


これで同点だ。長かったな点とるまで。まぁ相手が森田じゃ早く点を取るのは無理か。


するとベンチからチームメイト達が盛り上がりナイスバッティングと褒め称えてる。


次は長沢先輩だ。流れはこっちにきている。ここで逆転しなきゃ次のチャンスは延長戦になるだろう。だからなんとしても打って欲しい。俺のスタミナもどこまでもつかわからない。最近走り込みを始めたばっかだから。


ふぅーと深呼吸をして長沢先輩が打席にたった。アルプススタンドは今日一の盛り上りを見せている。逆転できるかもしれないから盛り上がっているのもあるかもしれないが、長沢先輩時代が学校で結構人気なのも後押ししているだろう。野球部の練習をわざわざ見に来る人がいるくらいだ。知的なイケメンと同学年ではいわれている。ちなみに高住先輩も人気だ。あれ野球部イケメンばっかじゃね。くそリア充め。イケメンは滅びろよ。


とか思いながら俺は長沢先輩を応援する。イケメンと勝つことは別だ。俺が打席にたつよりも長沢先輩が打つ可能性が高いしな。


長沢先輩は初球を見逃した。初球はボールだった。いつもだったらここてスライダーだが読まれていることを読んでいる可能性があるから違うボールを投げてくる可能性がある。


長沢先輩は読んでいないような見逃し方をした。ボールを見逃しかたをして、ワンストライクワンボールになった。長沢先輩はその後に見逃して、ツーストライクツーボールになった。確かウィニングショットはカーブの可能性が高いんだっけ。長沢先輩は最後の球にかけたってことか。


すると森田はカーブを投げてきた。長沢先輩は踏み込んで、ボールが来るのを待って打ちにいって、ボールは右中間に飛んでいった。


よっしゃー逆転だ。長沢先輩はベンチに向かって手を掲げた。ベンチもスタンドも大盛り上りだ。まぁあの信州大学松戸相手に勝ち越したんだ。後は俺が0点で抑えれば勝てる。つまりねるを渡さなくてすむってことだ。


『データが役に立ったか。俺の解きはそこまで重視されなかったからデータを読む人はいなかった。だがお前はデーターの重要性を伝えてみんなに読ませてみせた。これはねるとお前の勝ちたいという執念の結果だ』


執念ねー、確かに俺は絶対何がなんてもこの試合には勝ちたいと思っている。ねるをやすやすと渡したくはないからな。


やがて攻撃が終わって、俺はマウンドに上がった。信州大学松戸は負けてるからか、意地を見せてきてツーアウト満塁のピンチになったが、後続を抑えてピンチを脱した。


ふぅーそろそろ疲れが見えてるな、まぁ140球ぐらい投げてるし、本来ならここで高住先輩に変わっているんだが、怪我をしてる変えられない。次で終わりだからなんとしても踏ん張らなくては。うちのチームの攻撃の時にできるだけ回復するか。


俺はアクエリを飲んで、ベンチで肩甲骨体操をしてから、長沢先輩が塁にいるので熱血に話しかけてキャッチボールをしないかと言った。 


「いいぞ、その代わり次で終わらせろみせろ」


「ああ、次で終わらせる」


俺は気合いの籠った目を熱血に向けた。スピードと切れは初回に比べて落ちてきていて、コントロールをよく投げないと打たれる可能性が高い。だからキャッチボールをするときは相手のグローブにめがけて投げることを意識をする。


「はは、百球以上投げてるのにコントロールは落ちてないな」


「まぁコンロールよくなきゃ打たれるから、いつもより意識して投げているからな」


「そうか、俺も首尾で飛んできたら必ず取って盛り上げてみせるから、安心して投げていいぞ」


熱血は守備がいいから、さらに気合いをいれるとなると安心するな。俺は投げることだけな集中するか。十球ぐらい投げると、俺達のチームの攻撃が終わったので俺はふぅーと深呼吸をして熱血に思いっきり一球あげたあと、マウンドに上がった。


最終回か、これでねるがデートにいくかどうかが決まる。この回は森田が回ってくらから気を付けるか。俺は今投げれる全力で投球練習をした。


そして投球練習が終わって、マリンスタジアムをゆっくりと見渡して俺は改めてプロと同じマウンドにたっていることに武者震いをした。プロが投げているマウンドでかったら格別な気持ちだろう。ふぅー気持ちが昂ってるが、冷静にならいと。


ふぅーよし、落ち着いた。俺はピッチャープレートにの前の部分を掘りって、先頭打者を見た。



















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