第45話 整理

 どういう事だ?じゃあ誰が?あいつじゃないのか?俺は混乱している。少し整理しないといけないようだ。俺はタイムトラベルやパラレルムーブをし始めてからそれが引き起こすリスクを調べ始めた時、俺は電波の流れの中に途切れ途切れになっていたり、不安定な箇所があることに気がついた。その数値を遡って調べてみると、先天的に不安定な部分と、後天的に不安定な場所があることを突き止めた。

 そしてそれをさらに詳細に調べていくと、そこで形成されている次元にもなんらかの悪影響が及ぼされていると言うことまで突き止めた。俺はとりあえずその不安定な部分の次元へと向かった。

 だが、どの地点のどの場所に行っても特に変わった様子もなかった。その答えは後でわかる。その先天的な地点の中にはあの親父が乗っていた飛行機の事故の瞬間もあった。

 俺はそこでこの異常が親父になんらかの影響を与えているに違いないと考えた。つまりこの異常を解決すれば親父は救われる。そう思っていた。そして未来にもいくつか電波の異常が、そして過去にも異常が数カ所まるで集合体のように密集していた。俺はそこでまず未来の電波異常の場所を調査した。そして俺はそこで、平越時哉に出会った。それと同時にこの異常の正体が分かった。この異常は本来別々のはずの電波の波の波長がたまたまあってしまったり、何らかの外部からのコンタクトで波長を合わせられたりする状況のことで、それが起こると、平行している世界の行き来が出来るようになっているようだった。俺は偶然にもその波長をポケットラジオで合わせる事でその行き来を実現していたが、その地点は時々何か大きな衝撃があると、波長が合う瞬間があるようだった。だからこっちの世界では大きな異常が見られなかった。それはその異常が別の世界に言ってしまっていたからだった。そして勝手に俺はこの異常と平越時哉を繋ぎ合わせた。

 俺は親父が生きている事、そして帰って来ない理由を知って憤りを感じていたのは言わずもがなだが、そこで俺は元の自分の世界、そしてもう一つの世界をそれぞれ見比べ違いを探すことにした。

 するとことごとくその違いに平越時哉が関与していることがわかった。そしてその始まりは過去の地点・・・戦時中の日本の時代まで遡っていたことはついさっき分かったことだが、俺はてっきりそこでいるはずのない平越時蔵がいることで、本来戦死するはずの時蔵が戦争を生き延びて子孫を残すと思っていた。だがそこはそもそも異常ではなかった。すでに平越家の血は受け継がれていた。

 世界はそう簡単ではなく、俺が思っているよりずっとずっと複雑だったようだ。もっと四次元的に考える必要がある。もしかしたらこれらの事象は歴史の通りではないのかもしれない。今までことの発端は戦時中の日本にあると考えていた。

 そうだ!俺は何て馬鹿なんだ。そもそも平越時哉と時田雅志の二人が人為的に電波をいじれるのなら、この異常の発端はもっと別のところに・・・いやもっと身近に・・・頭がおかしくなりそうだ。

 どちらにせよ、ではこの戦時中に起きるもう一つの異常とは?その異常が起きる時大抵タイムパラドックス的な何かが起きている。その法則的に俺は死ぬべき誰かが生きのびてしまうと考えた。だがそれは平越じゃない。誰か別に・・・とりあえず俺はここまでやった。この先俺がやってきたことが無駄になろうが、これをやり切ることができれば復讐は果たせなくても正しいことしているに違いない。

 それにしてもここは・・・辺りを見回すと見慣れた景色が広がっていた。またここか・・・いつもの養護施設の入口の近くにいた。真夜中の彼らが施設に来た夜だった。

 そこに鼻をすすりながら女性が走ってきた。

 「ごめんなさい。」俺にぶつかった女性は心ここに在らずって感じだった。

 「大丈夫ですか?」俺はぶつかったことに対して心配した。しかし、彼女は違った。

 「大丈夫です。ちょっといろいろあって・・・」そういえば彼らの母親とこうして会話するのは初めてかもしれない。ただ、この勘違いはちょっと変わっている人かもなんて思ってしまった。

 「話聞きましょうか?」俺は咄嗟に言葉が出てしまった。

 「すいません。急いでるので・・・」なんかフラれた気分だ。だが俺はどうしても聞きたいことがあった。

 「後悔してますか?」

 「え?」彼女は不意な質問に驚いた表情だった。

 「あなたは今後悔してますか?」俺が一番聞きたい人はこの人ではないかもしれない。しかし、これは子に対してどんな親でも同じなのかどうしても聞いてみたかった。

 すると彼女は急に泣きながら振り返りそのまま走り始めた。果たしてこれは彼女だから?それとも親という存在はみんなそうなのか?結局のところどっちなのか結局わからなかったが、何故か俺の中でほっとしている自分がいた。

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