村上春樹が書いたことのない物語
「それじゃあ、主人公が眠れないで、もうそのままずっと、そうだな、二週間くらいだ。二週間も寝ないでいるのに、むしろ覚醒しきってる、なんて短編はどうだい?」
「ダメだ。それは村上春樹が既に書いている。それではパクリになってしまう」
「ああ、そうか。それは、いけないな」
「いけないね」
「それじゃあ、そうだなぁ。長編にしようか」
「それはいいね、どんなのがある?」
「ああ、そう、そうだな。15歳の少年が、父親のもとを離れて」
「それはいけない。それは村上春樹が書いている」
「そうか、そうなのか。それなら、しょうがない」
「ああ、しょうがない」
「別の短編ならどうだろう。たとえば、空腹に苛まれる夫婦が、深夜のマクドナルドを襲って」
「だめだ。それも、村上春樹だ」
「100%の女の子」
「だめ」
「パスタを茹でていたら」
「無理」
「1973年」
「ノー」
「俺は一体なんのために小説を書けばいいんだ」
「村上春樹が書いたことの無いネタだよ」
「やれやれ」
※ ※ ※ ※ ※
【解説】
今回は村上春樹の作品をある程度知っていないと面白くなかったかもしれないので、一応、作品タイトルをここに残しておきます。
主人公が眠れない話・・・・・・・・・・「眠り」
15歳の少年が父親のもとを離れる話・・・「海辺のカフカ」
空腹の夫婦がマクドナルドを襲う話・・・「パン屋再襲撃」
100%の女の子の話・・・・・・・・・・・「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」
パスタを茹でていたらの話・・・「ねじまき鳥と火曜日の女たち」
1973年の話・・・・・・・・・・「1973年のピンボール」
すべて村上春樹の作品です。大変面白いので、知らなかったという人は一度読んでみると面白いかもしれません。以上です。
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