例え世界を敵に回しても復讐を果たす
ワールド
第1話 始まりの儀式
トリス村という王国から離れた小さな村。
そこで俺【ローク】と三姉妹は今日も四人で仲良く遊んでいた。
「ローク! 今日は何して遊ぶ?」
「そんなに、引っ張らない方がいいわよ」
「ふふ、本当に元気がいいわね」
苦しいからやめてくれ。
心の中ではそう思っているが、俺は内心とても嬉しかった。
このトリス村の中でも美人で可愛いと言われる三姉妹。
自分に密着している訳だから男なら誰でもそう思う。
「じゃあ、駆けっこして遊ぼ! やっぱり、体を動かして遊ぶのが一番だよねぇ」
この元気でいつも俺を引っ張っているのが【ニーナ】。
短い青い髪で運動するのに適しており、ニーナ自身も伸ばすのが嫌いと言っている。
「ニーナはもう少し女の子らしさを身に付けた方がいいよーまぁ、言っても聞かないか」
呆れながら、穏やかでいつも笑顔が魅力的な【シャノン】。
金髪の長い髪を束ねており、ポニーテールがその童顔に似合っている。
そして隠れ巨乳。
「大丈夫! 何かあったらお姉ちゃんが相談に乗ってあげるから……」
二人を暖かく見守っているのが姉の役割をしている【フローレン】。
三姉妹の中で一番落ち着きがあり、自分の意見をあまり主張しないタイプ。
料理などを担当しており、しっかり者。
フローレン姉さん、俺、ニーナ、シャノン。年齢的にはこの順で生まれた。
この村で育ち、ずっとこの村で過ごしていく。
平和で幸せな日々を送っていく。ずっとこの日々が続いていくと思っていた。
そんなある日だった。
それは朝ご飯の前に両親から知らされた。
「村の儀式……? 何それ?」
「あら? 知らなかった?」
「遂にお前達も一人前になるという訳だ」
母親と父親は俺達に説明してくる。
村の外には魔物がおり、俺達はずっと外には出るなと言われていた。
だが、村から離れた大きな国にはそれらに対抗する為に。
【スキル】を取得し、戦闘経験をした戦士がいるらしい。
その戦士達は毎回各村の子供が儀式を受けている。
強力なスキルを取得して、戦闘のセンスがあれば国に招聘される。
そうなれば、このトリス村にも多額のお金が入って来て豊かになる。
しかし、両親は無理強いはしない。
「でも、儀式を受けるのは貴方達の自由よ」
「そうだな! 可能性の話だが、もし強力なスキルを取得してしまえば、お前達は離れ離れになってしまうかもしれないからな」
「え……? そうなの?」
俺も含めて他の三人も表情が曇る。
ずっと一緒に過ごしてきたのに急過ぎるな。
しかし、三人に頼り過ぎなのは自分の中にある。
悲しい時も慰められて、お腹が減っている時も料理を作って貰えたり、遊び相手にも困らない。
これはチャンスじゃないか。国に行って一人前の男になれば三人も認めてくれる。
それに、お世話になった人達にも恩返しが出来る。
「迷っているならそんなにはやく決めなくていいわよ」
「そうそう、まだ幼いお前達にはきつい選択だと思うが、最終的には自分達で決めるべきだ」
両親はそう言ってこの話は終わった。
どうするべきか。黙り込んでいる隣の女性達。きっと、俺と同じ気持ちだろう。
朝飯の後は、村の手伝いをしながら三人と話し合っていた。
「はぁ、しっかし……スキルとか何とか知らないがめんどくせーな」
斧を振り下ろして木を斬りながら、ニーナは必死に忘れようとしている。
気のせいか? 隣で俺の事をチラチラと見ているように見えた。
考え過ぎか。ニーナは、面倒くさい事は嫌いな性格。今回の件もあまり快くは思っていないだろう。
俺自身も決め切れていない中。
「おい! ローク……お前はどうすんだよ?」
グイっと二の腕を掴まれて体を引き寄せられる。
顔が近い。結構な時間を過ごしてきたつもりだが、こんなに接近されるのは初めてだ。
よく見れば可愛いなニーナも。初めて意識する異性の感覚に俺は少し顔を赤面させてしまう。
「あ? どうしたんだよ黙って?」
「あ、いや……」
「こっちが聞いてんだよ!答えろよ! ロークは、どうすんだよ?」
押しが強いが決め切れていないニーナ。乱暴な口調だがそこに弱さがあった。
声は震えており、俺の選択次第なのか。
正直な気持ちとして三人とは離れたくない。でも、俺の中にある冒険心は目覚めかけていた。
「ニーナとも、シャノンともフローレン姉さんとも別れたくない、だけど」
「……だけど?」
「この村の外にも興味があるんだよ! 景色とか食べ物とか……この目で色々と見てみたい!」
「お、おう! そんなに見たいのか?」
こんなにニーナの前で自分の考えを言うのは初めてかも。
しかし、ずっと思っていた事でもる。村の外はどんなものが待っているのか。
探求心が止められなかった。
だから、本音を言うとニーナも俺から顔を逸らしてしばらく黙り込む。
やばい、余計な事を言い過ぎてしまったか。昔からニーナには叩かれたりしていた。今回もそうなるだろうと、目を細めて警戒していた。
「そうか、そうなのか……ロークがそう言うなら、私もそうしようかな?」
「あ、あれ?」
「ほ、ほら! やっぱり行くなら四人一緒の方がいいだろ? そっちの方が安全だし、楽しいだろ?」
俺もそれを望んでいる。というか、やっぱりみんなと一緒に成長していきたい。
環境は変化しても、それをいい方向に繋げていきたい。
すると、ニーナは白い歯を見せて笑いながら、俺に約束をしてきた。
「だったら私もそのスキルの儀式とやらに行く! でも、約束してくれ……どんな事があってもロークとは一緒だ」
「うん! もちろんだよ!」
「……それに伝えたい事も」
「ん? どうしたの?」
「いや、何でもない! 何でもない……とにかく指切りだ! 約束破ったら……どうなるか分かるよな?」
怖い、これは大変な事になりそうだ。苦笑いをしながらも俺はニーナと固い約束をする。
ありがとう、ニーナ。その約束絶対に守ろうね。
ニーナと固い約束を交わした後。今度は、シャノンに呼び出された。
人気のない場所でシャノンは俺に背を向けながら話す。
「ロークはどうするの?」
ニーナにも聞かれた。俺は、あの時言った内容をそのままシャノンに伝える。
話し終えると、シャノンはこちらを向いて、うっすらと笑っていた。
ニーナと違って何を考えているか分からない。
独特の緊張感が伝わって来て、シャノンは一歩ずつ俺に歩み寄る。
「そう、やっぱりそうなんだね」
「そうなんだねって、シャノンも?」
「私もロークと同じ! この村にもみんなにも感謝してるけど、外の世界を見てみたいって気持ちは本当なの!」
「そうだったのか、いや……シャノンはずっとこの村に残っていたいかと思っていたよ」
「まぁ、そうよね……自分の気持ちとか本音はあまり出さないからねーでも、人の気持ちには敏感なのかな? もしかするとニーナも……私も」
「ん? ニーナがどうしたの?」
「ううん! 何でもない! でもさ、これだけは約束して欲しいな」
すると、シャノンは俺の手を握ってきた。
白くて柔らかい手の感触。何度も手を繋いで来たのに何だろう。ドキドキとしてしまう。
シャノンは小さく笑いながら、目を細めながらニーナと同じように、
「ロークとは一緒にいたい、だからずっと傍にいてね?」
少しだけだがシャノンの手を握る力が強くなった気がする。
普段は大人しいシャノン。こんなにも言ってくるのは珍しい。
俺も、シャノンの握る手を強くしてその約束に応える。
ありがとう、シャノン。凄い勇気を貰えたよ。
でも、見間違いだろうか。本当に一瞬だけ、見た事もない黒い表情が見えた。そんな気がした。
時間帯は夕方となり、畑仕事をしている時。
フローレン姉さんは話があると言われた。
今日はニーナとシャノンからもそういう事があってある程度は覚悟していた。
「ローク……あの話どうするわけ?」
いつもと雰囲気が違う。
表情を険しくしながら語り掛けてくる。
保守的な性格で現実的なフローレン姉さん。
きっと俺の決断を聞いたら反対するだろう。
しかし、俺は正直な気持ちをフローレン姉さんに伝える。
「そう、多分だけどロークはそう答えると思っていたわ」
「……え?」
しかし、意外にもフローレン姉さんは反対しなかった。
「過ごしてきた時間が長いからね……それがロークの意見だったら反対はしないわよ」
「ニーナもシャノンもわざわざ俺に聞いて来たんだけど、みんなが思う程俺は出来た人間じゃないよ」
「そんな事ないわよ! ロークがいるからこそ、私達は楽しい日々を送れているのよ」
「そうかな?」
「ふふ、真面目で優しくて何事にも熱心なローク……私達の、ううん村の誇りよ」
「やめてよ、照れるだろ」
「だから、ロークがやるなら私もやるわ! まだほっとけない部分もあるし、私も外の世界がどんなものか興味があるし」
フローレン姉さんはたまに無意識に褒めてくる。やめて欲しい恥ずかしい。
「そうと決まれば、ご飯を作らないと! 今日は豪勢にいきましょ」
こうして俺とそれぞれの三人は決断をした。
スキルを取得して、外の世界に出られる。
環境は変化するがまた楽しい日々が待っている。
だけど、ここから俺の幸せだった生活は崩れていくことになる。
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