106(2,974歳)「私は歩く金銀財宝製造機量産機」

 24時になるまで待ってから【1日が10000年にテンサウザンドなる部屋・ルーム】化されてる魔の森別荘、フェッテン様部屋の前に【瞬間移動】すると、


「――アリス! ってうわわ魔族!?」


 たぶん毎晩来てるっぽいフェッテン様がフェッテン様部屋から飛び出してきて、私の背後にいる3名にビビる。


「あははフェッテン様、私に会えるのがうれしくてたまらないってのは私もとてもうれしいのですが、最低限の【探査】はしましょうよ」


「【契約】は?」


「私の従魔にさせました」


 従魔化は【契約】よりも強力な方法だ。従魔は絶対に私に反逆できない。反逆しようという意思が持てない。ステータスからは【魔王の従魔】という【契約】が消えていることも確認済。


 考えれば考えるほど、【従魔テイム】って【闇魔法】版の【契約】なんだよね。同じ抽象メソッドを別の開発者――例えば全知全能神ゼニス様と魔法神がそれぞれ【光魔法】と【闇魔法】として実装したみたいな。


「事情は?」


「私が人族で、バカ容量の魔力を持っていて、魔力養殖方法を持っているとだけ」


「分かった」


 最低限の応答だけでも以心伝心。ま、私とフェッテン様の仲ならね!

 そこから、食堂でお茶しつつ事情を説明した。ありとあらゆる全てをだ。


「というわけで、あなた方3人には、強大な魔力を得る代わりに私の手先となり、私の戦争行為に加担してもらいます」


「「「――…」」」


 私の従魔となった時点で、私に逆らおうという意思は全て摘み取られている。【従魔テイム】っていうのはそういう魔法だから。

 そして、マスターではない人間のフェッテン様に対しても、3人が目を赤くさせて『人族絶対殺すウーマン』になることはない。【従魔テイム】LV11の私が、全魔族に対して行っているのであろう魔王の【無制限従魔テイム】LV10を上書きしてしまったから。


「ま、そう悲観するものでもありません。私、とにかく人を殺すのが苦手でして。この前攻めてきた魔族の軍勢も、全部生きたまま私の【アイテムボックス】の中に収納してあります。魔王だって、生け捕りにできるんならそうするつもりですし、それを可能にするすべ――【ふっかつのじゅもん】がありますので。

 戦争行為というのは、ビジューさんを利用して大量の金銀財宝を王国中にバラまいて経済を大混乱させ、加えて私の放つ必殺の娯 楽テレビゲームで大衆を堕落させ、とても戦争なんてしていられない状態にすることを指してます」


 顔色が良くなるお三方。


「あと、これは最も、もっと~も重要なことなのですが、ここにおわしますアフレガルド王国王太子殿下のフェッテン様は、この私と数千年来愛し合ってるマイスイートハートです。デボラさんもサロメさんもクロエちゃんも見目麗しいですが、絶対に、ぜぇっっっっっっっったいに色目を使わないこと!

 …――使ったら殺す」


「「「い、イエス・マイ・マスター!!!!」」」


「あ、あの、ところでマスター」


 クロエちゃんが、フェッテン様の方から目をそらしつつ私に聞いてきた。


「なぁに、クロエちゃん?」


「それです、なぜ私だけ『ちゃん』呼びなのですか?」


「あぁ、前々世の話はさっきしたでしょう? 私の中でJKはギリ『さん』呼び可能だけど、JCはもう完全に『ちゃん』呼び判定なのです」


「は、はぁ……」


「ってことで、とりまレベル200までいってみよー!」


「「「200ぅ!?」」」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「うぉぇぇえええええ……」


「ケロケロケロ……」


「うっぷ……」


 レベリング部屋で、いつもの光景。本当に、本当に見慣れたいつもの光景だ。


「あはは、若者たちよ強くなれー!!」


 自分たちが苦しんでいる姿を見て楽しんでいる私に、恐怖の眼差しを向けるお三方。


「あっはっはっはっ! 王国にはこんな風にしてアリスに無理やりレベリングさせられた民が何十万人といるんだ。こっちの陣営に付けた君たちは間違いなくラッキーだよ」


 フェッテン様も楽しそう。

 別にサイコパスというわけでもないと思うんだけど、まぁ見慣れ過ぎて感覚がマヒしてるんだろうねぇ。私も含めて。


「「「何十万……」」」


「あはは、私の領民なんて全員レベル100以上だよ」


 一部、結局更生しきれなかった強姦魔や殺人鬼を除いてだけど。



    ◇  ◆  ◇  ◆



「はいこれ魔法教本の魔王国語版。初級から聖級まで順番に呪文を詠唱して。魔力のことは心配いらない。私が【魔力譲渡マナ・トランスファー】し続けるから」


 3人とも200まで上がったところで、安全な居住区裏手のグラウンドで魔法の練習。

 ちなみに、最近王国では聖級をも含む魔法教本を少量流通させている。購入できるのはレベル100以上であり、私が発行している【契約】書にサインした人だけに限ってはいるけれど。

 無論、陛下のご許可は得ている。


「聖級!?」


「いえそれより、マスターの魔力は大丈夫なのですか!?」


 ビビるサロメさんと、私を気遣うデボラさん。


「まぁ、アリソン様なら……大変失礼ですが、魔力量をお聞かせ願えますか?」


 引きつり笑いのクロエちゃん。

 3人には、これからの魔王国での生活を考えて、『マスター』または『アリソン様』呼びにしてもらっている。間違っても『アリス様』と呼ばせるわけにはいかないもの。


「10億です」


「「「じゅっ!?」」」


「な、なるほど……言ってた『赤ちゃん期養殖』の成果か……」


 デボラさんが納得しきり。


 というわけで数日かけて、お三方には全属性聖級魔法使いになって頂いた。

 3人とも『自分が、まさか信じられない!』って感じで感動してた。


 無論、パワーレベリングはこんなもんじゃ終わらない。

 ノティアさんとアデスさんも通った道。


 ようこそ、無限【魔力譲渡マナ・トランスファー】からのぉ【鑑定】地獄へ!

 地獄の門は今、解き放たれた――



    ◇  ◆  ◇  ◆



 数十年後――

 そこには、表情を失って久しいお三方と、


「ぼちぼちステータスを見させてもいいんじゃないか?」


 楽しそうなフェッテン様。


「そですねー。じゃあデボラさんサロメさんクロエちゃん、ステータス・ウィンドウを見ることを許可します! 存分にご確認なさい!」


「「「イエス・マイ・マスター!! 【ステータス・オープン】!」」」


 果たしてそこには、三者三様の数字ではあるものの、いずれも数百万を超えるMPの表記があった。


「わた、私、これが、私の魔力――」


「こ、これだけの力があれば、きっと院長先生に恩返しができる!!」


 感動の涙を流すデボラさんとサロメさん。そして、


「ふぅ~……単に憎々しいあの家族どもを見返すか、引っ張り上げて操縦していい夢見せたところで叩き落すか、どっちがいいかしらね……」


 ひとり、完全に闇落ちしているクロエちゃん。こえぇよ。






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追記回数:26,042回  通算年数:2,998年  レベル:5,100


次回、金銀財宝製造機×4が宝石商ビジューを狂喜乱舞させる。

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