87(1,792歳)「そして再びの、魔王復活」

「ご覧の通り、塩害ですよ」


 今日も今日とて冒険者としてホーリィさん、ノティアさん、リスちゃんと一緒に他領巡り。


「ウチは海沿いの細い領だから……畑がよく、塩にやられる」


 説明してくれるのは今回の依頼主、ザルチャデン男爵様。

 そして、目の前に広がるのは見渡す限りの畑。それも白く染まった。はぁ~……ウチみたいに塩不足で困ってた領もあれば、塩過剰で困るところもあるなんてねぇ。


「ではやりますね――【探査】からのぉ【アイテムボックス】!」


 あとには、塩だけ綺麗さっぱり消えた畑が残る。


「ほ、ほほぉ~~~~ッ! 卿の魔法は何度か見たしウワサもかねがねお聞きしていたが、これほどまでとは!!」


 喜んでくれる男爵様。


「私ほど広範囲なのは無理でも、レベル100の人なら似たようなことはできますよ。なんなら手ほどき致しましょうか?」


「是非お願いしたい!!」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「これ、塩です。塩化ナトリウム。NaClです」


「「「「「…………」」」」」


 あえて塩を除去せず残しておいた畑の前で、男爵様と、連れてこられた4名のレベル100で【探査】と【アイテムボックス】が得意な従士さんが、私が手のひらに乗せた塩を凝視する。


「まずは【鑑定】してください。塩、塩化ナトリウム、NaClと出ましたか?」


「「「「「【鑑定】! むむむ……」」」」」


 詳細な【鑑定】はものっそMPを消費する。私は緩やかに【魔力譲渡マナ・トランスファー】で魔力を供給してやる。


「で、出ました!」


「はぁ……なんとか出ましたよ」


 口々に成功を伝えてくる皆様。男爵様もちゃんと【鑑定】できた模様。そりゃ男爵様ご本人もレベル100だもの。というか貴族家当主は大抵、率先してパワーレベリングに参加してる。まぁ私が10歳で【勇者】だと判明したあとは、さらなるレベリングをしてもらうことになるわけだけど。


「では続いて、こちら、土です」


 手のひらの塩の1センチほど横に、畑の土の塊を乗せる。


「で、【探査】! で、手のひらの上に乗っているものから、塩の位置だけを特定します。からのぉ【アイテムボックス】!」


 塩だけが綺麗に収納された。


「「「「「おぉ……」」」」」


「まずはこの練習からいってみましょう!」



    ◇  ◆  ◇  ◆



 ってことで半日ほどの特訓により、5名とも目の前数メートル程度の範囲なら畑から塩だけを除去できる様になった。ここまでくれば、あとは練習あるのみだ。



    ◇  ◆  ◇  ◆



 その翌日、これまた別の領主邸にて。


「何か特産が欲しいのです……」


「「「「そればっかか!」」」」


「え!?」


「「「「あ、これは失礼を……」」」」


「でもこの領、温泉源あるじゃないですか」


 そう、この領は山奥にそれはそれは立派な温泉を持っている。


「ですが、道を開くのが大変で……」


「道、敷きましょうか?」


「えっそんなことが――って、ああ! そういえばいろんなところで魔法で道を敷いてらっしゃると聞いたことが!」


「じゃ今から行きます?」


「すたーっぷ! お姉様、これってあれっすよね? 前世で勝手に道敷いて町興ししちゃって陛下に怒られたやつ! 以前言ってたじゃないですか」


 と、ここでリスちゃんからのご指摘。


「【おもいだす】! ――ハッ! そうだった!」


「はぁ~……どうしてアンタはこうバカなんだい」


「アリスちゃんらしいというかなんというか……」


 あきれ返るホーリィさんとノティアさん。

 そしてわけが分からないって顔の領主様。ごめんなさい……。


 ってことで【瞬間移動】して秒で謁見して、許可をもらって道を敷いた。



    ◇  ◆  ◇  ◆



「何か特産が欲しいのです……」


「「「「あー……」」」」


「真珠の名産地だと聞いていますが」


「量が取れないんですよ」


「実は真珠を養殖する方法があるって言ったら、どうします……?」


「!?」


 真珠無双!



    ◇  ◆  ◇  ◆



「何か特産が欲しいのです……」


「「「「……」」」」


「分かってました。分かってましたよ。だから実は、昨日のうちに閣下の領内で見つけておきました、特産品」


「えええ!?」


 驚く領主様。


「閣下の領の山に生えてたキノコで、シイタケと言います。干すと物凄い旨み――アミノ酸というんですが――が出るのです。で、こちらが干した後のもの。で、こちらがシイタケのだし汁。さらにそれを使ったお味噌汁」


「な、な、なんという味わい、旨み!」


 シイタケ無双!



    ◇  ◆  ◇  ◆



「たまにはアリスと遊びたいんだ……」


「「「「……」」」」


「あ、あのー……フェッテン様? お気持ちは分かりますけど、王城の名前で指名依頼を出すのはやめてください」


「だが、ここ半年ほどほとんどまともに会えていないんだぞ?」


「あー……確かに」


 開発者に領主に開発者に冒険者に開発者に領主に開発者に冒険者にと、ここんとこ忙しかったから……ある意味ゲーム開発に浮気してるとも言えるか。


「浮気だと!?」


「えっ!?」


「アリスちゃん、声に出てたわよ」


 とノティアさん。


「違います違いますフェッテン様! 私、フェッテン様のこと、ゲーム開発…………よ、よりずっと好きですよ!」


「そのタメはなんなんだよ!」


 ってことで、その日1日滅茶苦茶デートした。

 もちろんホーリィさん、ノティアさん、リスちゃんは帰っていったよ。



    ◇  ◆  ◇  ◆



 とまぁそんなこんなで各領主に恩を売りつつ『アフレガルド王国対魔物警戒網』を構築し、時に領主、時に冒険者、時にテレビゲーム開発者として活躍しつつ時は流れた。


 10歳。洗礼。

 今回は、人の多い朝イチは外して来た。

 そして――


「アリス・フォン・ロンダキルアよ、【魔法使い】の気持ちになって祈りなさい。おおっ、全知全能神ゼニスよ、アリス・フォン・ロンダキルアが新たな職に就くことを何卒お許しください!」


「ぅぐぼげ※※※※※※※※※※※!?」


 赤ちゃん期養殖でのMP9億分の経験値が私を襲い、

 まさか、まさか、まさかの――



 レベル5000超え!



 いやぁノティアさんがゲロを除去してくれなきゃ死んでたね。

 ステータスはこんな感じ。



********************************************************

【名前】 アリス・フォン・ロンダキルア

【年齢】 10歳

【職業】 魔法使い Sランク冒険者

     アフレガル王国ロンダキルア辺境伯 ゲームプログラマ

【称号】 勇者 能天気 不屈 脱糞交渉人 期間限定時空神 亜神

     魔の森の悪夢 竜殺し 王国の守護者 聖剣に認められし者

     癒しの天使 恵みの天使 豊穣の女神 農耕神 井戸掘り名人

     一夜城 歩いたところが道になる人 衛生の賢者 鐙の賢者

     相場破壊神 常識破壊神 化粧業界破壊神 はちみつレモン

     コンクリートの母 魔法教本の母 栄養学の母 蒸留酒の母

     羅針盤の母 顕微鏡の母 ゴム長の母 銀行の母 経済学の母

     ファンデーションの母 ベアリングの母 ボードゲームの母

     カードゲームの母 絵本の母 ミニスカートの母

     ピコピコの母

【契約】 全知全能神ゼニスの使徒 (従魔情報詳細表示)


【LV】 5,009 ←UP!

【HP】 399,412/399,412 ←UP!

【MP】 1,001,720,153/1,001,724,426 ←UP!


【力】   37,926 ←UP!

【魔法力】 100,271,816 ←UP!

【体力】  36,854 ←UP!

【精神力】 31,513 ←UP!

【素早さ】 40,542 ←UP!


【勇者固有スキル】

  無制限瞬間移動LV10 無制限アイテムボックスLV10

  極大落雷LV10 おもいだすLV10

  ふっかつのじゅもん・セーブLV10 ふっかつのじゅもん・ロードLV10


【戦闘系スキル】

  片手剣術LV9(+3) 槍術LV3 盾術LV4 体術LV7

  闘気LV10 威圧LV9 隠密LV8


【魔法系スキル】

  魔力感知LV10 魔力操作LV10

  土魔法LV9 水魔法LV8 火魔法LV8 風魔法LV8

  光魔法LV10 闇魔法LV8 時空魔法LV10

  鑑定LV9


【耐性系スキル】

  威圧耐性LV8 苦痛耐性LV10 精神耐性LV6

  睡眠耐性LV10 空腹耐性LV1 イケメン耐性LV5

  毒耐性LV10


【生活系スキル】

  アフレガル王国語LV5 算術LV8 礼儀作法LV3 交渉LV6

  整腸LV4 建築LV6 野外生活LV7 料理LV5 野外料理LV5

  食い溜めLV1 裁縫LV4

********************************************************



 そして、勇者爆誕。

 そこからの流れはまぁ、ほぼ前世と同じ通りだ。


 違う点といえば、私が【契約】書をガンガン発行して王国中にレベル100の民を量産し、森や山の魔物をガンガン狩るようお願いしたこと。

 そして、陛下とともに慎重に面接しつつ、1万人の軍人さんに【契約】の上で【1日が100年になるワンハンドレット・部屋ルーム】のことを明かし、レベル500の軍人1万人を用意したこと。

 ウチの従士1,000人と合わせると、11,000人のレベル500集団だ。


 さらには、ノティアさんについては私からの無限【魔力譲渡マナ・トランスファー】からの【鑑定】でMPと魔法力を鬼養殖し、1分間だけなら『アフレガルド王国対魔物警戒網』の代理をお願いできることが可能になった! 私の従魔ブルーバードの一部をノティアさんに仮【従魔テイム】させ、私が休憩する時に本【従魔テイム】するという器用な真似を身につけたんだよね。

 たった70年そこらで王国一の魔法使いになれるほどの天才だもの。数百年も【鑑定】し続ければ、この境地に至るか。


 そして12歳の春、魔王復活。


 魔物の集団暴走スタンピードよ、かかってこい!

 相手になってやる!






**************************************************************

追記回数:21,001回  通算年数:2,929年  レベル:5,100


次回、フェッテン様死す!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る