【幕間】魔法少女と閃光の剣士の奮戦
エリカとセイラは森に散らばった魔物たちを討つべくネブラスタを出た。
二人の前方には夜の闇に包まれた森が広がっていた。
エリカは飛行魔法で上空を移動しており、セイラは剣を発光させた状態で木々の間を縫うように進んでいる。
夜の森は戦うには暗すぎるため、エリカは光魔法を放った。
まばゆい球体がいくつも空に浮かび上がり、暗闇を明るく変えた。
そして、その光は木々の影に隠れていた魔物たちの姿を明らかにした。
二十体近いオークと数十体のゴブリンの群れ。
セイラからは全体像が見えないが、上空にいるエリカは息を呑んだ。
彼女が悪の組織と戦っていたトーキョーに魔物など存在しなかった。
その両目には、まるでハロウィンで仮想した集団のようにも映った。
――だがしかし、彼女は思い直す。
自分がいる場所は異世界なのだと。
魔法で炎を起こせば森を焼き、氷を起こせば木々を傷めてしまう。
エリカはそう判断して、あえて肉弾戦で戦うことを決めていた。
彼女の眼下では、セイラが剣を抜いて魔物の群れと接触するところだった。
エリカはその付近に下降し、地面に着地した。
いくつもの不穏な気配と突き刺さるような殺気。
見える範囲の向こうからもざわめきが聞こえてくる。
彼女が着地した周辺には複数の魔物がいた。
そんな敵に対して、彼女は実戦で身につけた格闘術の構えを取る。
師はおらず、動画や雑誌から見様見真似で学んだ技術だった。
とそこへ、一体のオークが襲いかかった。
木の幹のようなこん棒をエリカ目がけて叩きつけてくる。
「――思ったより危なくないかも」
力任せに振られたこん棒を軽やかにかわし、彼女はオークの顎目がけてハイキックをした。
それと同時に純白のスカートが宙でなびく。
周囲に何かがぶつかるような大きな音が響いた。
そのオークは後ろへ吹き飛び、木にぶつかって静止した。
ぴくりとも動かず、一撃で仕留められようだ。
時を同じくして、エリカの視界の端でセイラの戦いが捉えられていた。
剣身が上空の光を反射して、閃光のように流れていく。
セイラは複数の魔物に囲まれそうだったが、素早い動作で攻撃を回避しながら攻撃を繰り出していた。
剣技に詳しくないエリカでもセイラの技術が達人の域であることはよく分かった。
一方、エリカの近くにいた魔物たちはオークが瞬殺されたにもかかわらず、怯む様子を見せていない。
彼女は数的不利を感じつつも、劣勢だと感じてはいなかった。
先ほどに続いて別のオークが徒手空拳で襲いかかってきた。
目にも止まらぬ速さで、人間の何倍もある大きさの拳が迫る。
エリカに一発目を回避されると、オークは連続で攻撃を繰り出してきた。
怒涛の勢いのラッシュをエリカは軽やかな足捌きでかわした。
彼女は敵の動きを見切った後、カウンターの要領でアッパーで反撃した。
その拳はオークの顔にクリーンヒットして、その衝撃で吹き飛んだ。
宙を舞ったオークは地面に落下した後、ピクリとも動かなかった。
「うーん、まだまだいるなー」
エリカはうんざりするような声で言った。
彼女が横に振り向いてセイラを見ると、あちらにもまだ魔物が残っている。
エリカの一撃は強烈でも、セイラの剣戟では仕留めきれない魔物も出てきた。
たとえオークが危険度Cであっても、同等の複数のゴブリンをあしらいながらでは厳しい状況だった。
ナイター照明が下りたように明るい森の中、二人の奮戦が続く。
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