第16話

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 ユウリはフィアナたちとともに、砂漠へと向かった。身体の痛みは激しかったが、それどころではなかった。

 病室に突如、訪れた男の名前はスレアスといい、フィアナの同級生だった。

 フィアナとの交戦場所を通り過ぎてしばらく行くと、背の高い樹木が百本近く生えた一帯が見えてきた。ルミラルの右翼に広がる砂漠で唯一の緑地であり、居住者も何十人といる場所だった。

 スレアスの案内を受けて、ユウリたちは木々の間を抜けていく。すると前方に、木のない開けた場所が見えてきた。人の姿もあり、人数は十人強。輪になって地面に顔を向けている。

 歩を進めた三人は、輪の一角に加わった。ユウリは恐ろしい思いとともに、地に倒れ伏す人物を見据えた。

 ケイジだった。出会った時と同じ、濃紺の軍服を纏っている。だがその目には虚ろで、仰向けの身体は身じろぎ一つしない。

「──足がなくなって……。な、何だよこれ」肝を潰したユウリは、思わず声を漏らした。ケイジの右足は膝から下がなく、断面近くは炭化したかのような黒色だった。

「発見者はここの住人だ。死因はおそらく、炎系統の攻撃を食らったことによる右足からの失血だ」

「そんなっ! ケイジ先生!」フィアナは悲痛な声音で叫んだ。驚愕と悲嘆で、顔を歪めている。

「最後の目撃情報は、昨日の皇帝と法皇との会見の付き添いをした帰り道だ。先生は職務のために聖都で住居を借りていて、昨日は多くの者が住まいに戻る先生の姿を見ている。二人とも、それ以降で先生を目撃していたら教えてほしい」

 スレアスの問い掛けに、フィアナは何かに気づいた顔になる。

「昨日の夕方、ユウリとシャウアと別れてすぐ、私はケイジ先生に声を掛けられたの。『職務に関する話がある。今日の暗黄の刻、聖都の西の外れの丘で待つ』ってね。私は訝しみながらも、聖都の人に道を聞き時間通りに丘に向かった。そしたら急に、ケイジ先生の身体が崩れて、大量の小型悪竜ヴァルゴンが襲ってきた。私は必死に戦ったけど、敵の多さにちょっとずつ押され始めた。で、大ピンチの場面でユウリが助けに来てくれて……」

「そこからは俺が説明するよ」ユウリは静かに割り込み、メイサが現れてリグラムとファルヴォスが去るまでの経緯を述べた。フィアナは深刻そうな顔で、ユウリの説明に聞き入っていた。

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