第2話 不思議なその雰囲気

 その顔は、とても、なんというか、無表情なのに、その、えーと、クールというか、冷めてるというか。でも冷たいという感じじゃない、言葉に表せない顔をしていた。

 それは、その顔つきからなのだろうか。美青年という言葉が当てはまるのに、高感度があまり高くない、という雰囲気なのだ。



 その人は、その顔つきで、またその小道から出てきた。先週と同じ時間で同じタイミング、そして奥から先輩が遅れて出てくる。今日は1人だけだった。その人たちは少し距離を保ちながら歩いている。別に変な光景ではないはずなのに、なぜか違和感を感じた。

「…、なんだよ、じっと見て。」

 先輩が声をかけてきた。違和感がなんなのかはわからないが、間違いなく、変な感じなのだ。



 そしてまた一週間が過ぎた。先週のことを直前で思い出し、いつもより数分早く出てみた。

 そしてその小道から、あの人が出てきて…いない。まだかな?

 少し迷ったが、その小道の奥を進んでみることにした。

 その道は、校舎の中庭につながる道だった。その中庭には、ドアがない。出入り口が1つもないのだ。

 そうか。何かの違和感は、行き止まりなのにそこから出てきたからなのかな。

 と考えて、角を曲がろうとした少し手前で、その人が出てきた。いつもと同じように、ゆっくりと歩いて。5〜6mくらいの距離だったが、お互いがびっくりして一瞬立ち止まった。が、またすぐに歩き始めた。

 すれ違いざまに、その顔をちらっと見た。その人も、俺をちらっと見てきた。

 顔の表情が、変わらず、無表情のままだった。

 その奥には、今日は、いなかった。誰もいなかった。

「…、あれ?」

 今日はあの人、1人だけでここにいたのか?

 すぐに振り向いた。あの人が広い道に差し掛かり、曲がったところだった。

 そこで思った。さっきの違和感で、すれ違いざまに、ふわっと体臭というのか、すごいいい香りが漂ったのを思い出した。ただ、その香りにも、なにか引っかかりを感じていた。なんの匂いなんだろうか。

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