第58話 乖離。

「俺は、『特にどちらかが好きとかはない』って答えたけど……。」

「……………。」

俺の言葉にすずちゃんは黙り込んでしまう。


ーーーーーーしばらくの沈黙の後。


「そう、なんですね…………。」

すずちゃんはそう呟くと、スクッと立ち上がり自分の席に戻って行く。

「す、すずちゃん…………?」

……何だ?すずちゃんの様子がいきなりおかしくなったぞ……。

何か変な回答したか……?

聞かれた事をそのまま答えただけなんだが……。


何か違和感がある話し方だったな……。

俺はこっそりすずちゃんの座っている席を覗くと、すずちゃんはガックリと肩を落として、両手で顔を覆っていた。


何がなんだか分からないまま、車はそれぞれの家の前に停車し、一人、また一人と降りていく。

「またな……。」

俺はコピペされた台詞の様に降りる友達を見送る。


そして遂に、俺が降りる番となる。

「じゃあまた……。」

俺は真也と奏ちゃん、すずちゃんに声をかけるが、返事があったのは真也と奏ちゃんだけだった。


何かがおかしい………。

でも、その何かが分からないままその日を終えた。

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