第151話 はちゃめちゃワンダーランド

「守らなくちゃ。ゆーくんを守らなくちゃ。ゆーくんは宝物だからみんなが狙ってくるからとられちゃうから戦わないといけないから」




 ぷひ子がハイライトの消えた目でうわ言のように呟き始める。やばっ。




「大丈夫だ! 美汐! 俺はどこにもいかない! ――ダイヤさん。俺はまだ精通も迎えてないから、物理的に既成事実を作るのは不可能ですよ!




 俺は必死にぷひ子の肩を揺すりながら、ダイヤちゃんに事実を叩きつけて説得を試みる。




「……問題ない。……精通はしてなくても、勃起はするはず」




 即答するダイヤちゃん。




 はーいダメでした。ダイヤちゃんはオネショタ過激派かよ。




「ゆーくんのゆーくんがゆーくんにあな愛し星にせかるる天川の忘らるる身の口惜しければ」




「……危険度Bの脅威を感知。任務を妨害するなら殺す」




  闇墜ちしていくぷひ子。




  近づいてくるダイヤちゃんは、ぷひ子へ警告しつつ、俺へと手を伸ばす。




(いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!




 ぬばたまの姫がパイルダーオン憑依したぷひ子と、ダイヤちゃんとがバトったらガチで死人が出るうううううううううううううううううううううううううううううううう!)




「マスターぁに触るんじゃないわよぉ。ロボ子ぉ!」




 刹那、俺の頬を煽る熱気。




 疾風のように、俺とダイヤちゃんの間に割り込んできたアイちゃんが、ダイヤちゃんへと斬りかかる。




(ナイスゥ! アイちゃん。来てくれるって信じてたぜ!)




「……サードニクス。……私は、あなたと敵対するつもりはない。ただ、成瀬祐樹と裸で身体を重ね合わせた光景を映像に収めたいだけ」




 ダイヤちゃんは瞬時に土と氷を混ぜた剣を生成。アイちゃんの斬撃を受け止めた。




「黙りなさいよ冷血女ぁ! マスターの初めてはねえ! チューも童貞も後ろの穴も全部、全部、全部アタシのものなのよぉ!」




 髪を真っ赤に逆立てて、そう宣言するアイちゃん。




(マジで? 初耳なんですけど!?)




 これはアイちゃんフラグが立ったと解釈していいのか? いや、でもアイちゃんだしなあ。恋愛的な意味ではなく、獲物に対する所有欲と考えた方がいいのかも。




 あっ、ちなみに、初めてのキスはぷひ子にもう奪われてるから手遅れだよ。




「……成瀬祐樹の貞操を狙う者は全て任務の障害。排除する」




「上等よぉ! ロボ子を殺せばぁ! アタシはこの世で最強の女ねぇ! うふふふふふふふ!」




 他人様のお庭で遠慮なくガチボコやり始めるダイヤちゃんとアイちゃん。




 ぷひ子ママ謹製の花壇が焼かれ、窓ガラスが割れる。




「あああああああああああああああ! そんな! 戦友と姐さん! 小生はどっちに味方すればいいんっすか? ――いや、そもそもどちらについても、二対一なんて卑怯者のやることっす! ……そうっす! いいこと思いついたっす! 小生が二人共倒せばいいんっす! そのままじゃ勝てないっすけど、ダイヤと姐さんがバトって、疲れた所を狙えばいけるかもしれないっす! 漁夫の利っす! 小生も智将になるっす!」




 心の声をダダ漏れにしながら、死地へと参戦していく脳筋。




「虎子ぉ! 早速本性を現したわねぇ! いいわよぉ! まとめて二人共キルキルキルキルキルキルゥ!」




「……賢明でない判断。キャッツアイは模擬戦において、一度も私に勝利したことがない」




「うるさいっす! 小生だってちょっとは強くなったんっすよ!」




 さらに激しさを増す、熱風! 雷撃! ブリザード!




 壁が爆散し、樹がひっくり返り、季節外れの雪が降る!




 俺の貞操を巡って繰り広げられる、三つ巴の戦い!




「全く野蛮な方々ですこと――ユウキ。危ないですし、ワタクシの家でお茶にでも致しませんこと?」




 さりげなく俺の側まで来ていたシエルちゃんが、袖を引いてくる。




 虎鉄ちゃん見てるかー? これが本当の漁夫の利だぞー?




(ああー! もうメチャクチャだよ! 真面目に色んな人に相談した結果がこれかよ!)




 やっぱり、ギャルゲーの主人公は悶々と独りで悩んで色々こじらせてナンボってことか? そうなのか!? ギャルゲーの神様よ。




「あ、う、う、うう、お、おんなの子、おんなの子ばっかりりりりりりりり、ぷ、ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!」




 急にガクガクと震え始めたぷひ子が、白目を剥いてぶっ倒れる。




「美汐! 大丈夫か!?」




 俺は慌ててぷひ子に腕を伸ばす。




 その身体が地面にぶつかる前に、何とか抱き留めることができた。






(メディイイイイイイイイイイック!! メディイイイイイイイイイイック!!! ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! なんて日だ! 今日はなんて日だ! )




==============あとがき===============


 そんなこんなで本話でも世界崩壊ニアミスのぷひ子ちゃんですが、2月19日の書籍版発売に向けて、下記URLにて、PV第2弾が公開されました!

 よろしければ、第1弾のみかちゃん編と併せてご覧ください。CVは、もちろん、田村ゆかり 様です! めろーん↓ 


https://www.youtube.com/watch?v=5saCT2xKmR0


 もし書籍版にも興味を持って頂けましたら、下記からご購入を検討して頂けますととても嬉しいです。


https://twitter.com/fantasia_bunko/status/1494629502663618560?s=20&t=tkB7vZsYX3xL8tKkITzAXw

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