第11話 ギャルゲーの主人公は大体金欠
「つー、訳でだ。兎。俺はしばらく、過去や未来に飛ぶつもりはない。さしあたっては、ワープ機能を使えれば十分だ。そこで、相談なんだが、代償で金でもいいのか?」
俺は時空兎に生のアジをグチャボリと餌やりしながら語り掛けた。
過去や未来にタイムスリップするのは、この世の理を捻じ曲げる荒業のため、当然代償も大きい。記憶やら、そいつが一番大切にしている物やら、エグい要求をしてくる。だが、時間軸をいじらない場所の瞬間ワープは、比較的代償が緩い。
作中では、頭痛とか吐き気程度でもワープさせてくれていた。
「ぴょい」
時空兎は口から血を滴らせながら頷く。
「おっ。マジか。例えば、東京大阪間を一瞬でワープするならどれくらい?」
「ぴょい」
黒兎がどこからともなくソロバンを取り出して弾き、俺へと提示してきた。
ふむふむ。大体、飛行機の十倍くらいの感覚か。
「なるほど。そんなもんか。ちなみにタイムスリップはいくら? 例えば、一年前へいくとして」
「ぴょい」
「おほっ」
思わず変な声が出た。うわっ。やばい。単純な場所のワープとは全然桁が違う。
twitterで金をばらまいてる元アパレル通販会社社長でもさすがに躊躇するような金額だ。
「これが……十年前なら?」
「ぴょぴょい」
「――マジで? 単純に十倍じゃなくて指数関数的に増えてんじゃん」
俺は目ん玉が飛び出てループザループをかましそうな額に、声を震わせた。宝くじに当たっても普通に無理なやつじゃん、これ。やっぱり、当分タイムスリップは無理だわ。
「ぴょい」
時空兎は、『当然だ』とでも言わんばかりで頷いた。
「サンキュー。参考になったぜ。やっぱり金を稼がなきゃ始まらないよな。金ができたら、今度お礼に好きな肉食わせてやるよ。何がいい?」
「ぴょい。ぴょぴょぴょい」
時空兎は器用にパソコンのデスクに飛び乗ると、器用にキーボードを叩き始めた。えーっと、なになに。『ワニ肉のヒレステーキ』?
やっぱり、めちゃくちゃ鰐恨んでますやん。
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