鬱ゲー転生。 知り尽くしたギャルゲに転生したので、鬱フラグ破壊して自由に生きます【旧題】泣きゲーの世界に転生した俺は、ヒロインを攻略したくないのにモテまくるから困る――鬱展開を金と権力でねじ伏せろ――
第9話 無意味なグダグダ日常パートはギャルゲーの醍醐味
第9話 無意味なグダグダ日常パートはギャルゲーの醍醐味
「お魚さん、いっぱい釣るー。釣って、ぎょしょー作るー。納豆にかけて食べるのー」
ぷひ子がそう意気込んで、釣り糸を水面に垂らす。
魚醤か。納豆に限らず、ぷひ子は発酵食品全般を愛しているらしい。
(まあ、実は納豆は重要アイテムだからな)
納豆好きは完全ネタ設定に見えるが、一応、主人公とぷひ子が初めて出会った時にぷひ子が腹を空かせており、主人公がたまたま冷蔵庫にあった納豆と余りものの冷や飯を食わせてやったということに端を発している。
つまり、ぷひ子は主人公から初めてもらったプレゼントが納豆なので納豆好きな訳だ。
だが、そんなの関係ねえ。俺は納豆が嫌いなんだ。すまんな。
「俺はチャーハンかな」
「じゃあ、納豆チャーハン!」
「カレーの隠し味にしてもおいしいらしいわね」
「へえー。蕎麦屋のカレーは美味いみたいな?」
「うーん、どうかしら」
「納豆とろろそばー」
「夏バテ防止にはいいかもな」
二人の内どっちかだけに会話の比重が偏らないように気をつけながら、他愛もない会話を進める。だったら壁に向かって話してろよ、と某にわか雨師匠のようなことを叫びたい気分だ。
ほんとリアルギャルゲーは、細かいところに気を遣うのがめんどくさい。
ゲーム上では読み終わるのに数分もかからないあっさり流されてしまうイベントだが、現実では数時間なので、変なフラグを立てないように気を遣いながら接するのは疲れる。
いっそのことヒロインたちとの接触を断ちたいが、もちろん、それはできない。
ヒロインたちを攻略しないといっても、最低限、『友人』ぐらいの関係性にはなっておかないと、いざ何かトラブルがあった時に絡みづらいからだ。
だって、いきなり見ず知らずの人間が「お金をあげます」、「援助してあげます」とか言って近寄ってきても警戒するよね?
まあ、とはいえ、限られた時間の中、一人で全ヒロインと濃いつながりを持つのは難しいので、いずれは取捨選択とアウトソーシングしていかなければいけないことは分かってる。
でも、この二人に関しては、粗略な扱いはできない。
ぷひ子はくもソラという物語においてはメインヒロインなので当然。
実はみかちゃんは彼女本人の攻略ヒロインとしてのストーリーは薄い方なのだが、舞台装置として非常に重要な役割を果たしているので隅に置けないという事情がある。
みかちゃん生存ルートの場合、彼女は青年期編で生徒会長を務めて広く交友関係を持つ存在となるのだ。メタ的にいえば、『生徒会の仕事を手伝って』とかなんとか、みかちゃん経由で主人公に他のヒロインとの出会いの場、もといフラグを立てるイベントがたくさんある。
要するに、みかちゃんと仲良くしておかないと、将来的に彼女と親密な関係になるヒロインとの接触機会が消滅するので、現段階で悪印象を持たれる訳にはいかないのだ。今後の活動にも影響するからね。
全く、ギャルゲーの――特に田舎の人間関係は、狭くて芋づる式なのだ。めんどくせえ。
めんどくさいついでに、ここでは今後のために絶対回収しておかなければいけないブツがある。
「ぷ、ぷややー! ゆ、ゆうくん! なんかきたー! すごいきたー! て、手伝ってー!」
ぷひ子の持った竿が大きくしなる。
ぷひ子は狼狽して、俺に助けを求めた。
「なに!? 分かった! みか姉! タモ持ってきて!」
俺はそう叫びならがら、二人羽織りのような格好で、ぷひ子の持った竿を後ろから掴む。
「うん!」
みかちゃんが獲物を受け止めるタモを取りに走る。
しばらくの格闘の後、それは水面の下にゆらりと影を覗かせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます