第17話 そして、舞台は整った
「ん。
「ああ。いつでもいいぞ」
「ボクもいいよ~。シズクは?」
「…………OK」
久しぶりの
が、それよりもこれから
「了解。回線接続……完了。
視界に闇が訪れたと思った次の瞬間、シズクは久しぶりの
最後の
少しの苦さと懐かしさをのみ下すと、かたわらに視線を向ける。
そこには同じように
「……始めて経験するが。なんとも不思議な感覚だな、これは」
「ま、慣れだよ慣れ。ボクなんか、こっちの方が
「ええ、まあ」
「……なんだ、シズク。その顔は」
「いや。そういうセレスは珍しいな、と」
「
「ああ」「任せて」
まだ少し不安げなセレスティーナにシズクとヨシュアが力強く
今から始まる
†
ヨシュアの発案による提案……というよりも半ば脅迫に近いプランは想像以上に2つの指揮系統が混在している作戦司令部を揺さぶることに成功していた。
「いいかい? 実はこの作戦でのボクらの立場はね……まだ決まってないんだよ」
という言葉から始まったヨシュアの話は、シズクとセレスティーナの意表を突くには十分な内容だった。
「補給で
「なんだと? どういう意味だ?」
「ボクらに命令を下す権利はトゥーン人は実はもってない。ただ、合同作戦中は隊長もしくは副隊長の下命に従うべしという命令が出ているだけだ」
「それは理解しているつもりだが……結局、私の指揮ということは騎士団の意向に従わざるを得ないということではないのか?」
イマイチ理解出来ない、という顔のセレスティーナにヨシュアは笑いながら首を振った。
「少し、違うんだな。もし、隊長さんが指揮を執れない……という事態になった場合はどうなると思う?」
「それは……シズクが指揮権を引き継ぐことになるな」
「だね。じゃ、どうしてシズクが副隊長になれたと思う?」
「それは……実質的な名誉位階ではあるが、従騎士の称号を有しているからな。立派な騎士だ」
「そう。つまりね……シズク、キミがキーマンなのさ」
「お、俺?」
思わぬところから、自分の立場を再確認したシズクは思わず自分自身を指さしていた。
たしかに1つ1つ言われてみればその通りだが、シズクとしては完全にセレスティーナの補佐としてしか自分のことを見ていない。
なので、実は自分にも指揮権がある……ということはまったく考えもしていなかった。
「そ。キミだよ、シズク。シズクは地球側とは
「え? あれって、お飾りの称号なんじゃ?」
「
「
日本で生まれ育ったのだから当然と言えば当然だが、貴族などと言われてもまるでピンと来ない。
「いやいや。これが本当なんだな。そしてね、シズク。キミに対するトゥーン側の評価はキミが想像している以上に高いみたいだね」
「なんで?」
「なんでって……キミは英雄だよ? 異世界人でありながら、たった数人でアピスの本拠地に乗り込んで騎士たちの
「それ、本当に俺?」
「改めてそう聞くと、確かに英雄的だな」
セレスティーナがそんな風にうなずくのをシズクがジト目で眺めているのも素知らぬ顔でさらにヨシュアが続ける。
「そして、そんな英雄の尊敬する唯一の上官が隊長さん。キミってわけ」
「……んむ? ちょっと待て。私は決してそんな大それた」
今度はセレスティーナが面食らう番だった。ハトが豆鉄砲を
「そんな2人が身命を賭して、ことの重要性を訴えているのにあっさりそれを握りつぶした。このままでは2人がどう動くかまったく予測出来ない、なんてね。話をあちこちにばら
「お、脅した!? だ、誰をだ!?」
「ジャーガ・フォライス夫妻とその上位のお偉いさん。さすがに領地持ちの貴族が動くと違うね」
「ん。隊長と副隊長が2人
アリアナの言葉に「なんせ、今でも
「もちろん、地球側もトゥーン側もこんなことで互いの関係が気まずくなることは望んでないさ。ただ、その反面でお互いに抱えている人員の指揮権だけは死守したいとも思っている。隊長さんが思いあまって職を辞して、シズクが後を引き継ぐ。そして、彼がやらかした場合、指揮権に固執して責任を
「少しどころか、完全に脅迫ではないか……」
「こうなっちゃうと、一番良いのはね。2人の行動を認めちゃうことさ。面子があるからノーペナルティってわけにはいかないだろうけどね。というわけで、あとは実際に話し合いで落とし所を見つけるだけってわけさ」
そんなに
とにかく広大なトゥーンであるために実際に顔を合わせてというわけにはいかずに
†
『地球側の接続およびトゥーン側の接続を確認』
地球側の席に2人。トゥーン側の席に2人。
「さて……それじゃあ、楽しい会議の時間だ」
ヨシュアの楽しそうな声と共に会議の幕があがった。
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