第113話 秋の修学旅行…その②

さて、しまなみ海道ツーリング当日、快晴の天気の元、

朝の7時に朝食を終えた俺達は、出発地点に集まり、

ロードサイクル用の自転車を受け取り、その使い方や注意事項の説明を受けた。

その後、全員で広場に集まると、あつらえたお立ち台の上に、

黒いグラサンをかけ、サイクリング用の白いウエットを着た、

筋肉質の白人男性があがった。

見た感じ、良く海外ニュースで見る、某国の人に似ている。

と、その横に鈴音先生も立つ。どうやら通訳をする様だ。


その白人男性はマイクを持つと、

良く通るドスの利いた声で外国語を話し出した。

って、これって英語じゃないだろ?

と思った瞬間、鈴音先生が通訳する。

「親愛なる早苗実業学校の諸君、

私はロシア連邦共和国大統領、ウラジミール・プーチンだ」

その言葉を聞いた瞬間、会場に大きなどよめきが起こる。


続いて語るプーチン帝の言葉を、鈴音先生が続けて通訳する。

「今日はロシア連邦共和国提供による、しまなみ海道御朱印レースを行う。

ルールは後程詳しく説明があるから良く聞き給え。

この御朱印レースは、単に早ければ良いという様な、単純なものではない。

体力、知力、そして協調の精神が重要となる。

高得点をあげたチーム及びクラスには、ロシア連邦共和国提供による

豪華賞品を授与する。ふざけた行いや振る舞いをした者は、

全員シベリア送りだ。それでは諸君の奮闘を期待する」


そう語り終えるとプーチン帝はお立ち台から降りた。

恰好からしてどうやら彼も参加するつもりらしい。

「おお~!」

と、再び会場でどよめきが起きた。

成る程、驚きのゲストとは、プーチン帝か…。

って、それって1私立高校ごときに出来る事なのか?

もはや驚愕を通り越して、呆れてしまうレベルだ。


さて、その後、艶めかしいクレオパトラさんがお立ち台に立ち、

ルールの説明をし始めた。

「皆の者、良く聞け。

まず今から配る組み分け表により、男女4名で1チームとする。

このしまなみ海道には、様々なお寺、神社、名所がある。

これから手渡す地図とスマホのGPS機能を使い、

地図に指定されたお寺、神社、名所で御朱印を押して貰うのじゃ。

御朱印帳は各チームに2冊渡す。

尚、成績はチーム単位、及びクラス単位での集計になる。


出来るだけ沢山の種類の御朱印をゲットしたチームが優勝じゃが、

出発からゴールまでは7時間以内という時間制限がある。

ちなみに御朱印の場所は沢山あるから、

全ての御朱印を制限時間内に得る事は、物理的に不可能じゃ。

移動は最低2名1組で行う事を条件にするゆえ、

各自スマホで連絡を取り合いながら、

如何に効率的に御朱印をゲットするかが大事じゃ。

尚、所々にいじわるを設けておるから気を付けよ。

わらわからは以上じゃ」


なる程、チームで効率的に御朱印を集める戦略が必要という訳か…。

しかもいじわる…何らかのトラップも準備してあるみたいだから、

一筋縄ではいかない…つまり、運の要素もある訳だ。

7時間以内という事は、ロードサイクルで10キロを1時間…。

全然早いペースではないが、平坦な場所ばかりではないだろうから、

やはり地図を読む理解力と戦略眼、チームとしての結束が重要になるだろう。


それから配られたチーム表…。

俺は織田信長、如月雪音、天音姉妹とチームになった。

時間は間もなく9時。出発まであと30分程ある。

「参加するからには優勝を狙う。で、あるか」

「で、あるな」

天音も相槌を打っている。

「地図といっても各島にあるポイントの電話番号と、ざっくりした

場所が書いあるだけだな。ポイントが比較的集まっている場所に行って、

そこで二組に分かれて効率良く御朱印を貰い、それから集まって、

次のポイントを目指すってところか」

俺が言うと、

「では、とりあえず、地図でポイントが多く集まっている場所を確認しましょう。

印をつけて、スマホのテキストに電話番号をインプットです」

雪音が早速的確な判断を下す。


雪音の指摘に基づいて、俺達は早速各自のスマホに出来るだけ

ポイントの電話番号をインプットした。


「フッ…早速ミスター・スポックが活躍する時が来た様デスネ」

隣のチームのビル・Gが不敵な笑みを浮かべている。

なんだよ?ミスター・スポックって?


やがて出発の時間になった。

集団の先頭では、黒のグラサンに白のウェット姿のプーチン帝、

筋肉ムキムキの男性SP1名、超絶スタイルの女性SP1名、

そしてリーリャからなるロシア連邦チームがスタンバイ。


巫女姿に着替え、ノリノリの鈴音先生が、スタートラインにやって来た。

「では位置について。用意、スタート!」

鈴音先生が早苗実業学校の旗を振って、いよいよレースがスタートする。

俺達4人もスタート。いざゆかん!!

…その③に続く。

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