第14話 小さな出会い1
新米ママ ルナール 視点
愛しのリアと愛娘のティーと3人で暮らしているルナールです。
今日は生活用品の買い出しでサラデナ魔導領に来ています。
サラデナ魔導領は魔導国の首都で王城がある。
そして、貿易も盛んで各領の特産品が集まるので買い物に便利である。
そういえば、
王子が誕生したとか聞いたな。
ウチの子と友達になったりしてね?
まぁ、ティーはどこかの学校には通わせるからクラスメイトになるかもね。
さて、買い物買い物。
調味料や食材は買ったから、あとはティーの洋服だね。
もう、出産祝いの洋服や事前用意した服はキツくなっている。成長が早いなぁ。しみじみ
知り合いの服屋に向かうことにした。
大通りから裏道に入ると争い事が聴こえてきた。
「お願い買って下さい。」
「とても、商品として売れん。帰ってくれ!!」
バン!?
気まずい。
私の目の前でお店の店主から追い出された7歳くらいの少女が閉められたドアの前で落ち込んでいた。
何!?この小説みたいな展開!
私がここで助ける展開なの?
んー、どうしよう?
とりあえず声をかけてみるか?
「ねぇ、君?」
「ひゃっ!?」
女の子は驚いて私の顔を見るなり走り去っていった。
失礼な!?
まぁ、知らない人に声かけられたらそりゃあ警戒するけどさ、だからってだからって、逃げることないじゃん。
とはいえ、先程売ろうとしたであろう商品の袋が落ちているから届けないね。
わざとなの?ねぇ、わざとでしょ?
ため息をつきながら袋を持ち上げると中身が出てしまった。この袋ボロボロね。
持ち上げるだけで崩れるってどれだけ使い古したのやら。
あら?手編みの腹巻きかしら?そういえば、ティーはお腹を出して寝てたわね。大きさも良いし買おうかしら?
他にも手袋とかあるけど必要はないわね。
私は余ってた袋をアイテムボックスから取り出すと詰め替えて女の子を追跡した。
ご都合主義と思われるかもしれないけど、追跡魔法を開発していた。理由はティーが歩き出すとどこに行くかわからない為、必要と感じたからだ。
魔力を覚え、母の魔素を流す時に使う流脈に検索をかけ同じ魔力を持つモノを探すのである。
私を中心に流脈は広がるからこの領の中ならすぐわかる。
ティーをここから探すとなるとかなり時間がかかる。
そこは改良したいな。
そんなことを考えてると見つかった。
んーと、止まってるわね。
私はこの領のマップを取り出し照らし合わせた。
ここかな?
マーキングを書き込み目指したのは居住地区の最奥だった。
転移でパッと近くに跳ぶとボロボロの集合住宅があった。
見習いの時の寮より酷いな。さっさと終わらせよ。
ここからあの子の反応があるわね。
コンコン!
「ハイ…」
カチャ!
ドアが半開きになりさっきの子が顔を覗かせた。
「あっ!?」
女の子は慌ててドアを閉めようとする。
いやいやいや、話聞いてよ。ホント
ガシッ!?
私はドアに手を挟め閉まるの止めた。
イター!?
「貴女の落とした荷物を届けに来ただけよ。」
スマイルスマイル!動け私の表情筋!
「え!?」
「はいコレ!」
私はすかさず女の子に荷物を渡す。
これで逃げられたら面倒だしね。
「ありがとう…ございます。」
うんうん、お礼が言えてエライね。
しかし、手が痛いな、早く治療したい。
「ちょっと、待っててね。ヒール」
私は手の治療を始めた。よし治った。アザなし!
それを見た女の子は驚き慌て出した。ん?
「あ、あのお姉さん!病気を治せますか?」
「病気は症状によるかな?今のは怪我用の魔法だしね。」
「妹を診てもらえないでしょうか。お願いします。お願いします。」
女の子は頭を地に着け土下座をしていた。
うーん、魔導族って神の血が流れているから助けたくなっちゃうんだけど、安易に願いを叶えるのは良しとしない傾向がある。
その理由は報告書と始末書を書くことと申請書を行わないといけないのだ。
申請書の手続きで半年かかるから嫌がられている。
まぁ、神力を使わなければ申請書などは要らないから魔法だけで済めばいいなぁ。
しょうがない。診るだけ診てダメそうなら諦めて貰うか。
「一応診てあげるけど、ダメだったらごめんね。」
「ハイ…」
さて、免罪符を渡したので診に行くますか。
家に入ると部屋の中は埃だらけだった。
家具もなく藁や枝が固めて置いてあるだけだった。
これは酷い!!
最早、人ではなく魔物の巣のようだった。
「なんでこんな生活してるのかしら?」
女の子が藁の近くに座ると泣き始めた。
あっ、地雷踏んじゃった!
「お、おがあさんが…死んじゃってー…うわぁーん!」
あー、周りが助けてくれなかったやつか…
魔導族の国はしっかりしていて、孤児は役所に申請すればちゃんと保護を受けられる。
こんな周りに人がいないようなところで頼れる人がいなかったのかもしれない。
「…あー?」
藁の中から声が聞こえた。
まさか!?
私は藁の塊を掻き分けると、ガリガリに痩せ細っているティーより少し大きい赤子がいた。
このままでは数日で死ぬ、そう思えるほど弱って見えた。
やはり厄介事だった。
私は頭を悩ませた。ハァ!
どうしよう…
この子も一生懸命だったんだなぁ。ナデナデ
藁とかも赤子が寒くないようにするためかな?
うーん…
ふと、部屋の端に小さな台があり、編みかけのマフラーや裁縫道具があった。
「ねぇ、貴女は裁縫出来るのかしら?」
「うん、お母さんに教えてもらって少し出来る。」
特技が裁縫か…ダメ元であの人の所に行ってみるか。
っと、こっちをなんとかしないと…
診た感じ栄養失調と脱水症状と不衛生による症状が出ている。
とりあえず、身体を清潔にしないとね。
私はアイテムボックスがアルコールと水と布とティー用のミルクほ乳瓶を取り出した。
女の子に渡し飲ませる指示をした。
女の子は赤子の口にほ乳瓶を突っ込み飲ませた。
もう少し優しくやりなさい。ハァ
私はアルコールを水で薄め、布に浸して赤子の身体を拭いた。
身体が被れるかも知れないけど今は仕方ない。我慢してね。
しかし、ティーのほ乳瓶のミルクごくごく飲むな、よっぽどお腹が空いてたのね。2本目も出しとこ。
よし、拭き終わった。すごい汚れだ!?
ティーの布オムツ用だったけどキレイになるかな?
そうだ、オムツも替えないと…
あと服はあの人のところで買えばいいや。
とはいえ、これは一時しのぎにしかならない。
仕方ないかこれも運命女神のせいか…カリネちゃん!
今度ブロッコリー大量に送るからね。ニコッ!
ゲプッ!
どうやら、赤子は2本目のミルクを飲んで満足したようだ。
だが、熱はまだあるし、多分下痢もしているだろう。
病院に連れて行っても補助金無しだから大金を請求されるだろう。幸い私が知ってる症状で良かった。
これなら、なんとかなる。
とりあえず、冷却布を首と脇に巻いておこう。
「さて、この子はなんとかなるけど、このままでは同じことが起こるわよ。」
「うー。でも…どうしたらいいか、わからない。ヒック」
まぁ、そうよね。
子供にこんなこと言っても理解出来ないよね。
でも、とても大事なこと…
「私が提案出来るのは3つ、いい?」
「うん。」
「一つ目はこのまま住む。
補助申請すれば生きることは出来ると思うわ。」
「2つ目は孤児申請ね。
孤児院に引き取ってもらって生活するの、自立出来るまで衣食住は困らないわ。」
「そして、最後に貴女が私の知り合いの服屋に弟子入りして自立するまで働くの。
この子は私の家で面倒を見るわ。ただし、元気になったら家事とか覚えてもらって、自立するまで使用人の真似事をしてもらうわ。」
「い、妹と一緒に居れますか?」
「一応貴女も学校に通える12歳くらいまでは私の家で面倒見てもいいよ。お店に通う方法はあるから心配しなくていいわ」
私に出来る提案はこれが限界ね。
これ以上はこの子の為にならない。
子供が出来て丸くなったかな?
「……やります。弟子入りします。」
さて、決心したところ悪いけど相手方に何も話してない。
まぁ、あの人なら歓迎すると思うけど、この子の決心が揺らがなければいいけど…汗
「そう、わかったわ。ただ、相手の方に伝えてないから弟子入りできるかは貴女次第よ。ダメだったら私の家で面倒見るわ。」
「はい…」
「あと、絶対に何を見ても逃げないようにね。」
「え?」
「さて、行くわよ。貴女の商品を作りかけでも全て持ちなさい。」
「は、はい!?」
私は赤子を布で包み抱く。早くティー抱きたい!
女の子は準備も終わったようで近づいて来た。
そういえば名前聞いてなかった。
「そういえば、貴女の名前聞いてなかったわね。」
「私はリリス、妹はクリスです。
あの、お姉さんの名前は…」
「私はルナールよ。よろしくね。」
「はい!!」
いい返事ね。ナデナデ
時間も押してるし、転移使うか。
座標良し!
「危ないから目を閉じてね。」
「え?何をするの?」
「はいはい、目を閉じる閉じる。」
私はリリスの目を手で隠すとパチンと指を鳴らした。
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