第48話 ダネルの説明
待っていると、来たのは長男ではない。三男のダネルだ。
武器屋の主人は大島に仕入れに行っているらしく、代わりに三男が来たそうだ。
大島? 一瞬考えたが、おそらく四国の事だろう。
ダネルは部屋に入ってきて、おれとティアの顔を見ておどろいた。
「おお、おめえと氷屋の娘が、何してんだ?」
「三人知り合いか?」
「ええまあ」
「なら、話は早いな。この娘がつけている装備は、ダン・ネヴィスの物か?」
ダネルは、ちらっとティアの鋼の拳を見て、即答した。
「兄貴の店でしょうね。そんな変わり種は」
「なら、これは申請されているか? 密輸ではないのか?」
「まあ、間違いなく、申請してないでしょうね」
憲兵隊長と目が合った。おいおい、ダネル、賢いお前らしくない。正直すぎるぞ。
「密輸でもないですよ。これは、もろもろの部品から作った創作武器です」
「創作武器?」
おれと隊長が同時に聞いた。
「ええ。世の中で話は聞くが、手に入らない武器ってのは多いです。そういうのを作っちまうんですよ」
おいおい、オリジナルかよ。こんな田舎でやる仕事じゃない。
しかもティアに渡している。夜な夜な、おっさんが乙女のために凶器の手袋を作っていたのか。感動というより、気持ち悪い。
ガレンガイル隊長は納得したようで、おれたち三人は帰っていいと言われた。帰り際に、少し、釘だけ刺された。
「知らない武器が流通しているというのも、問題はある。お前ら兄弟の店は、時々見回るぞ」
ダネルは首をすくめた。
「君は、少し付き合う人を考えたほうがいい」
これは、ダネルではなくティアに向けた言葉だ。
大きなお世話だ! と言いたいが、反論しづらい。怨霊の一件で、かなり危険に晒してしまったからだ。
三人揃って憲兵本部を出た。歩きながら、ティアの事をダネルにかいつまんで説明する。
「かっこいいなあ! 武闘家の資質か」
「無責任に言うなよ。ティア、オヤジさんは知ってるのか?」
ティアは首を振った。
「学校の先生に元武闘家の人がいて、ここ一ヶ月、手ほどきを受けてたんです」
わお。そういう先生っている。学生にロック聞かせたりな。
姪っ子を持った気持ちとなった今では、その先生に文句を言いたい。
でも、これは困ったぞ。いつまでもオヤジに黙っておくわけにいかない。おれから話すしかないか。いやー、それって気が重い。
「あの羊肉パンとエール、旨かったなあ。また食べに行かねえと」
のんきなダネルの声に思いついた。道連れは、ひとりより、ふたりだ。
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