夢
危機が迫っている。
そんな感覚にいきなり襲われた。
ここが何処かなんて疑問を
何かから逃げていた。
不安と焦燥感が背中をチリチリと焦がす。
つい、振り向いてしまった。
後ろで走る彼女から、地面を滑るかのような音がしたから。
彼女は転んだのではなく、立ち止まっていた。
両手を広げて庇われていた。
待って……!
思わず手を伸ばした。
駄目だと心には浮かんでいる。
しかし手を伸ばさずにはいられない。
――――行って。
そう彼女は言う。
いや、言おうとしていた。
彼女の腹部から赤黒い粒子が流れ出ていく。
彼女の唇は僅かに動くが、何も聞き取れなかった。
涙は流れない。
流す理由を今、失ったのだから。
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