私を照らすもの
惟風
現在、キャンバスに向かう①
自分の中身は、真っ黒な泥が詰まっているのだとしみじみ思う。
大人になったら自分の思考や行動の責任は自分で取らなければいけない、それはわかっている。
でも、もしも自分が、物心ついた頃から暴力に晒されず、具合が悪い時は適切な医療を受けられ、持ち物を気まぐれで奪われたりせずに成長できていたとしたら。
この貧相な肉体の中身は、もう少しマシになっていたのじゃないか、と思わずにはいられない。
私は、様々な暗い色の絵の具を乱雑にキャンバスに塗り籠める。何とも言えない、汚ならしいものが一面に広がっていく。
これは私だ。一方的に蹂躙されて、わけもわからず汚され塗り潰された、私の心そのもの。
キャンバスを自分の心に見立てて、嫌いな色を素敵な色で覆って、全て隠してしまえば。私の人生もこの先良いものに塗り替えられる気がする。
やり直したかった。すべて、消してしまえたら。祈るような気持ちで筆を握る。
問題は、上から塗りたい「素敵な色」が全く思い浮かばなくて、ずっと先に進めないでいることだった。
そして今日も黒い絵の具を塗り重ねる。
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