デスゲームを求めて
@G_EALAZ
1話
曇天が広場を包んでいた。
ゲームエンジンがとんでもなくリアルに再現したじめじめした空気、プレイヤーたちの反応は様々だ。
手で模様を描き、システムメニューを開く。ログアウトボタンはまだ残っていた。閉じる。5秒待つ。また開く。まだ残っている。このゲームはなかなか
―――――来た。ログアウトボタンが消えている。俺は新たな
俺がやれやれしていると、なんかめっちゃ強そうなアバターに入った
「この『ブレイドロード・オンライン』が、只今より
ゴミ共がさっきにも増してわぁっと沸いた。俺も負けじとわぁっと沸く。一方、一部のニュービーは驚いている。例えば、俺の隣に立っている一人なんかはこっちに話し掛けてきた。
「え、あ、あの……デスゲームって、
「そう、
「え、そりゃ、ふ、不安ですけど……そもそも、なんで皆さんは、その―――歓声を?」
「ああ、それは―――」
その時、ゲームマスターが口を開き、俺の発言を遮った。
「信じられない、という方もいらっしゃるでしょう―――しかし事実なのです。例えば―――そう、そこの貴方!貴方で実演して差し上げますよ―――"死"をね」
ゲームマスターは俺を指差し、何やらコンソールの操作を始め―――
「何やってんだテメェェッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」
―――俺の怒号にびっくりして止めた。
「何、とは?」
「とぼけてんじゃねーよクソが」
俺はキレた。ゴミ共もキレていた。心無い罵声がゲームマスターへ飛ぶ。
「無能!」「何もわかってない!」「近頃の開発者はまったく!」「お前なんかGMはGMでも
俺は穏健派だから、普段なら折角デスゲームを提供してくれるGM様にそんな口を聞いてはいけませんよ~~~~とかいって説得しただろうが、今の俺は違う。怒っているからだ。俺は言った。
「そのコンソールで
「え、えっと」
「そう、殺そうとしたんだろ?そんでもって心拍数のデータなりVRシステムの量子波観測機能で再現した俺の死体なりを映して、このゲームでは
「あー……」
「吐いちまえよ!」「楽になるぜ!」「無能!」「頭おかしいだろお前!」「消費者庁に通報するぞ!」「いや通報は不可能だろ」「なんかVRシステムに脳弄られてるしな」「無能!」「脳弄って通報禁止するの冷静に考えて犯罪では?」「利用規約に書いてあるのでセーフ」「無能!」罵声が飛ぶ。
「…………ええ、認めましょう」
GMは罵声に耐えかねたのか自分の行為を認めた。俺はより一層キレた。
「ッッッッッッハァ~~~~~~~~~~~~お前マジでさぁ、デスゲームってのを何も理解してねーよな、っつー。いや別にお前に限らねーよ、お前みたいな奴はどいつもこいつも何つーか「とりあえず人が死ねばいいんでしょ?」みたいにデスゲームを甘く見てるフシがあるよ。そういうんじゃないんだよね、そういうんじゃ………お前さぁ、「デスゲームを始めます!!!!」ってその無駄にデカいアバターで言うのはいいよ、それはいい。デスゲームだもんな、実際の所。でもその
俺がここまで言ったところでちょっと頭が冷えたので休憩ついでに辺りを見回してみると、ゴミ共全員が思い思いの罵声をGMに投げつけていた。
「そもそもの話、演出に工夫がなさすぎない?」「マジで完成度が低すぎる」「アーリーアクセスタグ付けないのは控えめに言って詐欺だろ」「お前ほんとにデスゲームやったことあんの?実はエアプじゃねーのかよオイ」「詐欺師!!!!」「クソゲー」「オラァこれでも食らえェ!!」「いやGMに石投げても意味ないだろ……ん?」「あれ、ダメージ入ってるじゃん」「まさかこれダメージ無効付けてないの?クオリティ低すぎて笑えて来たわ」「お前HP99999しかないのかよオイオイオイオイオイオイ~~~~~~~ストーンコレクターなるわ」「っつーかそのアバターどっかで見たことあるんだけどひょっとしてアセット?」「マジか、このゲームで唯一褒められるところだと思ったのに」「地雷だったわ……早く解放されてレビュー書きてぇ~~~~」「これ宙返りしたときに若干右腕がずれてる感覚があるんだけど壁抜けできる?」「無能!」
本格的に混沌としてきたな……俺はなんかめんどくさくなってきたので罵声を浴びせるのをやめてWebブラウザを開いてネットサーフィンを始めた。というかデスゲーム中でもブラウザ開けるの地味に欠陥では?ウケる。俺がウケていると、GMが40分ぶりに口を開いた。
「……皆さんのご意見、真摯に受け止めさせて頂きます」
俺とゴミ共は頷いた。分かればいいんだ。
「ですので、今回のリリースは……その、中止ということで、宜しいでしょうか」
全然いいとも!!!!!俺とゴミ共は笑顔で受け入れた。お前のゲームが改めてストアに上がる日を、待ってるぜ。そんな爽やかメンバーズを、寝っ転がっておもしろサイトを見ているミドルたちがキモがり、座って虚ろな目をしているニュービー達もキモがった。しかし俺は気にしなかった。GMの新たな門出を心の底から祝福していたからだ。
いつしか曇天は消え、夕焼けが空を染めていた。それを背景に、GMは付け加えた。
「あぁあとさっき私が殺そうとしてしまった方……申し訳ありません、お言葉、大変参考になりました。またお話を伺いたいのですが、フレンドになっていただいてもよろしいでしょうか……???」
いいぜ。俺は快諾した。GMは俺にフレコの書かれたtxtデータを渡すとコンソールに何やら入力し、30秒足らずで世界はポリゴンに分解され消滅していった。なぜか空に「GAME CLEAR!!」という文字表示が出現した。若干影を落とすそれは、夕焼けの空と非常にマッチしていた。
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