第14話 教会を建てる

「なあ、うちの要望もかなえてくれへん」

「そうだな。ジョセアラばかりに甘い顔をしてられないな。よし、言ってみろ」

「教会を建てたいんや」

「無理」

「即答やな」

「ない袖は振れん」


「なんです。教えて下さいな」

「少し興味がありますわ」

「ヴェネッサとミリアルマか。二人は仲がいいのか?」


「仕事がなくて、とても暇なのですわ」

「ステイニーに教会を建てたいと言われてな。そんな資材も金もない」

「なるほど。正義はステイニーにある。ステイニー無罪。シゲルは教会を建てるように」

「ひどいよ、ヴェネッサ。ヴェネッサの前世が分かったぞ拷問士じゃなくて裁判官だ。そうに違いない」

「言われてみれば、人を裁いていた記憶があるよ」


「うちの要求はどうなるんや?」

「私にお任せください」

「おお、ミリアルマに何か名案があるのか?」

「ええ、妥協とそして利益ですわ」

「妥協は分かるが、利益は分からん」


「聞いた話ですと、ピピデの民が引っ越してくるのですね」

「そうだよ」

「そこでです、大精霊が作った教会があれば、お参りと寄付がひっきりなしですわ」

「お金がないんだけど」

「今あるもので作って、寄付がある程度、溜まったら改築すればよろしいですわ」

「なるほど、それでいって見るか」


 俺は植物由来の教会があると良いなと思った。

 なら、ワイヤーフェンスはどうだ。

 ワイヤーフェンスっていうのは針金で壁ができていて、それにつる植物を這わせたりして楽しむ物だ。

 俺はワイヤーフェンスを買ってやった。


「どうだ。どんぐりの形だから、教会の飾りに見えるだろ」

「おおきに、恩に着るわ」

「植物を這わせただけでは教会とは言えないから、中央に神様を祭るべきだな」

「ご神体はどうするんや」

「ステイニーが前に出したゴーヤの種があるだろ。あれを削って作るんだ。ナイフも用意した」

「うちにもなんとかできそうやな」

「そうだ心だよ。心がこもっていれば、多少不細工でもいいんだ。きっとピピデの民も喜ぶさ」

「きっと、がっぽがっぽですわ」


「ミリアルマの前世が分かったよ。商人だろ」

「違うようですわよ。何かこう箱入りだった気がします」

「まあ良いや、ありがとな。よし、作成に掛かろう」


 ワイヤーフェンスの根元にゴーヤの苗を植える。

 ステイニーが精霊力を注ぎ込むとゴーヤはワイヤーフェンスに絡みついて緑の壁になった。

 試しに削ってないゴーヤの種を中央に飾る。

 うん良い感じだ。

 賽銭箱の代わりにさば缶の空き缶を置く。

 うーん、一気に安っぽくなったな。

 浮浪者感が出てきた。

 何かないかな。

 おっ、不思議な色合いのテープがある。

 なめくじ避けだけどこれで良いか。

 缶に巻いてみる。

 なかなか良い感じ。

 浮浪者感が学芸会感にパワーアップだ。

 ご神体も手作りだし、これでいいだろ。


 鳥がワイヤーフェンスに停まった。

 俺も鳥に用があるんだ。


「ほれ、みかん食うか。美味いぞ」


 俺がみかんを差し出すと地面に降りて、俺の手のみかんを突き始めた。

 空を舞っている四羽の鳥が次々に降りてきてみかんをねだる。


「お前ら、喧嘩するなよ。仲良くな」


 仲良くみかんをついばむ鳥達。


「無精卵を譲ってくれないか?」


 一際甲高く鳴いたと思ったらそこには五つの玉子があった。

 全部メスなのか。

 メスのグループとオスが離れて暮らすタイプの生物なのだな。


「くれるのか?」


 うなづく鳥達。

 玉子は駝鳥の玉子ほどの大きさがある。

 マヨネーズは失敗するともったいないから、スクランブルエッグあたりが妥当かな。


「みかんを好きなだけ食っていいから、ここに永住してくれないか?」


 甲高く一斉に鳴く鳥達。

 承諾したということなのかな。


 ステイニーが玉子を一つ拾う。


「生命が宿ってへんな」

「分かるのか?」

「精霊なら誰で分かると思うわ」

「ヴェネッサ、ミリアルマ。どっちか無精卵を判断する仕事してくれないか?」

「私がやりたい。判定するのが前世の仕事だったみたいだから」

「そうか、ヴェネッサがやってくれるか。よろしくな」


「生命が宿るって難しいものや。うちもはよう生命を宿したいものや」

「おっ、お誘いですか。夕飯に玉子のおかずが出るんで、パワーでると思うから期待して」


 夜は玉子パワーでステイニーと致しました。

 大変パワーが出たとだけ言っておきます。

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