第12話 みかんの樹

「レインシャワーなの」

「今日も水やりご苦労さん」

「ポイズンミスト。あなたのためじゃないんだからね。虫食いのない野菜のためなんだから」

「虫とりご苦労さん。助かっているよ」

「そう、もっとめなさいよ」

「偉い、偉い」


 俺はジョセアラの頭を撫でた。


「子供じゃないんだからね」


「朝ごはん出来た」

「エリザドラ、ありがとう」

「うちも手伝ったんやで」

「ステイニーも、ありがとう」


「キャロリアも、土の耕しお疲れ様。ヴェネッサ、助かったよ。疲れが飛んで何時もより力が出せた。さあ朝食にしよう」


 じゃがいもの塩茹でに野菜炒めという何時ものメニューに、今日はトマトときゅうりのサラダが加わった。

 マヨネーズがあればな。

 ポテトサラダが作れるのに。

 そうだ、鳥だ。

 みかんの木を植えて鳥に来てもらおう。

 みかんの苗が一本2,980円で三本買った。

 一本は大精霊用、もう一本は眷属用、最後の一本は鳥用だ。


 みかん樹をさっそく植えた明日が楽しみだ。


  ◆◆◆


 翌日。

 二十メートルほどの大木に成長したみかんの樹を前にこの大精霊はどんな魔法だろうか想像した。

 甘いから砂糖魔法。

 いや薬効もあるから治癒魔法かも。

 樹に生った2メートルほどのみかんが光る。

 おっ、お出ましだ。


 オレンジ色の髪でオレンジのドレスを着た女の子が舞い降りた。

 緑の髪留めをしている。

 やっぱりグラマー体型だ。


 そこはかとなく良い匂いがする。

 【名前ジェネレータ】オン。


「君はミリアルマだ」

「分かりましたわ」


「魔法属性を教えてくれるか?」

「香魔法ですわ」

「良い魔法だ。水を魔法で出してもらって、身体は毎日洗っているけど、臭いが気になる」

「私がお役に立てるようですわ。ではさっそく、パフュームミスト」


 俺は良い香りに包まれた。

 リラックスできそうな良い香りだ。

 眷属用のみかんの苗を植える。

 ミリアルマが手をかざしいつものように眷属を作った。


「「「みかっ」」」

「「「みかみか」」」


 可愛い精霊がやはり十人ほど産まれて、樹が枯れる。


「さあ、お行きなさい。人々を香りで癒すのです」


 精霊達は散って行った。

 みかんの苗は高いから、頻繁には眷属は作れないな。

 香りの精霊の需要は低いだろうから、沢山作らなくても良いよな、きっと。


「ミリアルマも俺と結婚するか?」

「くん、くん。土の香りが致しますわ。植物にとって、土は極上の香り。あなたは私にとって理想の男性ですわ」

「そうか。【賢者モード】オフ」


 やはり致してしまった。


  ◆◆◆


 問題発生。

 給料日まであと20日もあるのに、残金が半分を切った。

 食料は野菜があるからなんとかなる。

 大体一ヶ月ぐらいは生り続けるはずだ。

 一回で収穫が終わるじゃがいもは、掘った芋をまた植えているから問題ない。

 問題は眷属を増やせない事だ。


 眷属を増やさないと女神に給料減らされそうだ。

 異世界で採った種からでも、眷属は生まれるか聞いてみよう。



「一つ聞きたい。異世界で採った種で眷族は産まれるのか?」

「産まれますの。でも、聖域の魔力を吸ってしまうから、聖域が小さくなるの」

「じゃあ、駄目だな」


 それにきゅうりとなすはだいたい品種改良されている。

 繰り返し種を取ると原種に戻る。


「種を採ると原種に戻るんだが、何か不都合はあるか?」

「味が良い方が強い精霊が産まれますの」

「そうかそういう意味でもだめか。苗は必須だな」


 ええと。

 きゅうりの苗が498円。

 ナスの苗が498円。

 ゴーヤの苗が498円。

 鷹の爪の苗が348円。

 トマトの苗が498円。

 ジャガイモの種芋3Kgが1,920円。

 ジャガイモは20個入っているから、一回分が96円。


 足してみると一日で2,436円になる。

 掛ける20で48,720円。

 余裕じゃん、心配して損した。

 それを引いても十万円ほどの残金がある。

 よし、32,800円のマットを買おう。

 クリッとクリック。


 遂に買ってしまった。

 これからは少し節約していこう。

 給料もらうまでは、新しい大精霊は増やさん。

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