第18話 火曜日、まだ質問は止まず。そしてアニスミアへ。
火曜日になってもお姫様抱っこの件をいまだ質問される真白と恵。
しまいには二人纏めてインタビューしようとする輩も現れる。
流石に恵もそろそろ同じ質問には限界。
「あまりしつこいと張ったおすぞ。」
以前だとこれで誰一人寄ってこなくなっていたものであるが、体育祭の件が余程美化されていたのか、それを真に受けてトボトボいなくなるクラスメイトはいなかった。
ぼっちじゃない事は喜ばしいことであるが、話す事はあまり得意ではないため今の状況も決して安息とは言い難い。
挨拶や世間話くらいなら出来るのだが、今話にきているのは体育祭の事ばかり。
頭は沸騰寸前、思考回路はショート寸前、今すぐ逃げたいよである。
「じゃ、バイトがあるんで!」
どうにか一日を乗り切った恵であったが、早くその場から逃げ出したくて思わずバイトと口に出してしまった。
「え、何のバイトしてるの?」
当然そう聞き返すクラスメイトは存在する。
真白は横で聞いていて内心ドキドキだった。
素直に言うのか、怒声でも浴びせてやり過ごすのか。
「あ、あぁ。それは秘密。急がないといけないからじゃな。」
普通に敵前逃亡であった。
「気になる……」
「追いかけてみようか。」
という声が聞こえてきたので真白は立ち上がった。
「そういう詮索は良くないんじゃないか?誰にだって秘密にしたい事はあるだろうし。それに流石に悪どい仕事じゃないだろ。」
フォローしているつもりなのだが、説得力と言う面では精彩を欠いていた。
「でもなぁ、旦那のいう事じゃなぁ。」
「でも詮索されて良い気分はしないよね。」
結局自分たちで盛り上がって勝手に収束していく。
クラスメイトの会話や興味なんてものはそんなものである。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
気になった真白は電車に乗って隣駅にいる。
誰にも後は付けられていない。
久しぶりに歩く隣駅の歩道は、妙に懐かしさを感じる。
「いらっしゃいましぇにゃ、ご主人しゃま~……げっ」
真白が店に入ると出迎えてくれたのは先程まで同じ教室にいた種田恵であった。
いるのは知っているのだから充分考えられるシチュエーションである。
それにしても「げっ」は接客業なのだからよろしくない。
幸い他の従業員には聞かれていないものの、入り口近くのお客様には聞かれていたかもしれない。
「げっはないんじゃないか?」
「だ、だ、だってまさかお前が来るなんて思ってなかった……にゃん。」
照れてるのか仕事に忠実なのか中途半端になってしまうめぐにゃん。
その後ぎこちない態度のまま席を案内される。
夕飯前だからあまり多く摂取出来ないため、例によって萌え萌えオムライスだけにした。
もちろん指名:めぐにゃんで。
やがて恵の手によって萌え萌えオムライスの元が運ばれてくる。
「で、何を書けば良い……にゃん。」
唇を尖らせ少し目線を反らしている。
これは照れ……であっているはずだと真白は思った。
クラスでの恵を見ているからこそ、このギャップが良いと最近気付き始めたようだ
。
真白は何食わぬ顔をしてこう答える。
「お姫様抱っこの感想を一言で。」
お前がそれを聞くか!
恵は目を見開いて声に出そうとして【ぶふっ】と吹いてしまった。
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