第13話 体育祭への意気込みと失敗(恵視点)

 今日は体育祭だ。

 昨年はサボっているため、高校で初めての体育祭。

 今年はあのへんた……男のせいで参加せざるを得なくなっている。


 あれだけ練習したのだから出ないのも癪に障るというのもある。

 し、あそだ。

 その前にシャワーを浴びよう。


 それが間違いの一つ目だった。

 ギリギリでシャワーを浴びたせいで、着替える時にブラジャーをするのを忘れてしまっていた。

 普通の人は忘れないだろうけど……

 ないからなくても違和感があまりないんだって何言わせんだよっ


 実際そんなはずはないのだが、の事もあったし何だかんだ体育祭が楽しみに感じている今気のゆるみがあったんだと思う。


 あたしには話せる友達が少ない。

 澪やあいつとあいつを除けば野球部の連中くらいしかいない。

 そのため午前中の競技は物陰に隠れて適当に見ていた。


 午前中の競技も終わり、昼食の時間。

 勝負の時間。

 あたしは《弁当》を持ってあいつを探した。

 

 こんな性格ではあるけれど、こういう時の弁当って誰かと一緒に食いたいじゃないか。

 だからこれは口実。

 多分話せば澪とかなら一緒に食ってくれるんだろうけど、彼女にも自分のクラスの友達がいるだろうし。

 3組と4組なので赤白組が別なのだ。


 だから一緒に食う分として、作ってきた。

  

 

 ※ちなみに恵に他意はありません。本人は恋愛感情の有無で弁当を作ったわけではありません。少なくとも本人はそこにすら気付いてません。



 二人分の弁当を持って移動していると、ここで会いたくない人物と会ってしまう。

 小倉七虹……バイト先でNo1の人気であり、昔からの腐れ縁幼馴染であり、何かとライバルな女。

 もちろんあたしがヤンキーなのも知っている。だってあいつも……

 過去の武勇伝は高校では何の役にも立たないし自慢しても仕方ない。

 現に今高校で役に立っていない、孤立する原因にもなっている。

 同じ中学オナチュー時代の話は別の機会があればその時に言えばいい。


 とにかくあいつと会うと言い合いになる事が多い。

 今日もどっちが勝つだのという話になった。

 あたしとしてはバイト先の人気で負けている事から体育祭では勝ちたいと思っていた。

 同じ競技だというのも澪経由で知っている。

 マネージャー有能、他のクラスの体育祭競技事情なんて極秘なのに。

 

 結果、言い合いになったところでもう一人のあいつがやってきた。

 そのせいで話がおかしな方向に。

 競技で勝ったら相手は罰ゲームを受けることに。

 あたしが勝てば高くて手の出なかったアレが……

 負けたら……ほわい?こいつとデート?

 なななななな、な。

 にゃじぇ、しょうにゃる……


 だけど、取り乱しても仕方ない。

 ようは勝てば良かろうなのだァ

 あのお方(DIO様)もそうおっしゃっていた。 


 「「勝ちゃぁ良いのよっ」」

 あたしと七虹がタンカ切ったのは同時だった。

 ねこみみメイド喫茶の人気ツートップ二人による二人三脚勝負はこうして決まった。


 そうこうしていたら弁当を食べる時間がなくなっていた。


 せっかく作ったんだけどな。



☆☆☆


 スタートは順調だった、いや半分過ぎまでは順調だった。

 残り30mくらいという所でさっきの失敗がここに出た。

 弁当を食べ損ねたので、お腹の虫が鳴いたのだ。

 あいつは気付いてなかったみたいだけど。


 でもその時のあたしにはそこに動転してしまい、イチ・ニの呼吸に乱れが生じた。

 あいつと結んである左足を蹴る力がいつもより圧倒的に強くなってしまった。

 あたしが左利きだからこういう布陣になったわけだけど、あたし左利きって言った事あったっけ。

 鉛筆や箸は右手で使ってるし、右投げ左打ちが多い昨今ノックで気付かれたという線も薄い。


 その強くなってしまった蹴力のせいで二人のバランスが崩れてド派手に転んでしまった。

 「痛っ」

 って思った時には膝周辺からの痛みで上手く立ち上がれない。

 そうしている間に七虹はおろか他の組にどんどん抜かれて行った。


 ははっという自嘲染みた乾いた笑いをするのが関の山だった。


 そ、そんな時あいつが……


 にゃ、にゃんであたしはお姫様抱っこされてるんだ?


 ちょ、ちょっと恥ずかしいし色々威厳とか……あぁもう色々オワタ


 でも周囲の声は馬鹿にするものではなく、応援と気遣う声だった。

 中にはあいつに向かって死ねーとかも聞こえたけど。


 いつの間にか恥ずかしさは半減していた。あくまで半減。

 あちこち身体のパーツの微妙な部分を掴まれてるし、左側は密着してるし。

 心臓はばっくばくやで。ってなぜ関西弁。


 救護室で下ろされたあたしはおば……保健の先生に診てもらう。

 唾つけとけば治るって、あんたの時代ではでしょうが。

 あ、いや。そんなに世代変わりませんごめんなさい。

 おば……保健の先生の視線が怖かった。

 流石あたしの……


 どうやらまだ治療が必要らしく保健室で後は診るとのことだった。


 流石にまたお姫様抱っこは恥ずかしかったため、今度はおんぶで運ばれる事に。


 「あ、ない。」

 あたしを背負うや否やそんな事を言うものだから思わず拳骨を落としてしまった。

 あらやだ、あたしったら思わず手が先に出ちゃったよ。


 でも乙女の大事な部分にその言葉は失礼でしょう。

 何かの呪いかあたしだけ親族で平べったいのだから。

 あ、いや、ちょっとはあるよ。

 自称甘食くらいは。



 ここにきて今朝ブラジャーを忘れてきたことが仇になる。

 肌着は着ているものの、歩く度に肌着と擦れ変な感触がない胸の突起から感じる。

 ぁ…ぁ…ちょ…にゃにこりぇ……


 なぜかおまたのあたりもじん。としていた。

 なんなんだろう。

 人には相談出来ない案件だわ。

 それだけは断言出来た。


 保健室につくと先におば……保健の先生が到着しており、椅子に座るよう促された。

 その時あいつは保健室の外に追い出された。

 男子禁制ってなんだ?


 「雌の匂いがするわね……」

 突然おば……保健の先生が言ってきた。


 「二人きりだから姉さんで良いわ。まだぴちぴちの23歳だけど。」

 心の中でおばさんと思い言い切らなかったのは、23の癖に10代のように振舞おうとするその態度でついおばさんと言いそうになってしまう。


 「で、姉さんは態々保健室でこれ以上何の治療を?」

 素人ではわからないが、現状学校で出来る範囲の治療は先ほどの救護所で行っていた。

 という事は何か別の目的があって人の少ない保健室へ来たことになる。


 「昔のようにお姉ちゃんと呼んでも良いわよ?」

 

 「呼ばない。あたしも成長してるんだし、この性格と口調だし。」

 姉が近づいてきてあたしの表情を確認し、なぜかおでこに手を当てる。

 胸のあたりをしばし確認して、そのあと舐めるように視線を落としていき……


 この姉はシスコンなのだ。

 ことあるごとに一緒に風呂に入ってこようとするし、何かと身体に触れたり密着してくる。

  

 「あ、これ別府でも湯布院でも伝説の草津でも治らんやつや。。」

 突然姉がそのような事を口に出して、もうダメぽとorzのポーズで床に伏してしまった。


 「ま、あんたが気付いてないなら仕方ない。残りの高校生活楽しみな。あんたの貞操は諦めるわ。」

 最後の方は聞き取れなかったが、学校生活を応援してくれている事はわかった。


 そして徐に立ち上がったかと思うと、いきなり抱き着いてきて妹成分吸収~とかわけのわからないことを口走る。


 耳元で……

 「ここまで運ばれてくる時、乳〇大分擦れてたよね。気持ちよかった?雌の匂いぷんぷんだぞ。お姉ちゃん悲しい。」  


 種田聖子、これでもあたしの姉でこの高校の保健教師である。

 


 誰にも相談出来ないと思ったのはこのせいだった。


 どうやらアレは、あの感覚は……きゃー恥ずか死ぬわっ

 中学の時の保健体育で習ったわ。


 これは墓場まで持っていこう。

 だって……


 あいつの背中で……そ、そのぉ。か、感じてしまっただなんて言えねー。

 もーなんだよー。

 大体無意識無自覚の事なのだからわけわかんねーよ。


 ※種田恵には中学保健体育までの知識しかありません。ないはず。



 姉が余計な事言うものだから、あいつが保健室に通された時あたしは放心状態だった。


 姉の喝で正気に戻ったけど、姉はグランドに戻りあたしたちを保健室に二人きりにして出て行った。



―――――――――――――――――――――――――――


 後書きです。

 本作にはラッキースケベは存在しますが、スケベは存在しますが、エロは存在しません。


 しないはず。


 保健の先生は前作ヤンデレ(仮)同様姉が引き継ぎました。

 心の中でおば……とか思うから叔母にしようかとも思いましたけど。

  

 姉のせいでえちぃ方は意識されましたが、恋心的なものはうまい事隠されました。

 そのせいで気付くのがまた遅れます。


 あと前作登場していて本作で出てないのは担任だけとなりましたね。


  

 

 

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