第11話 小倉七虹登場、200m二人三脚には魔が潜んでる。

 「ちょ、くっつき過ぎ。」

 種田が抗議してくるが、顔が若干赤いのはなぜだろうか。

 結んだ足の影響で脹脛とか腰とかが密着しているのは確かだが。


 「仕方ないだろ、二人三脚なんだから。」

 俺もしっかり反論はする、別に腰に手を回したわけでもあるまいし。


 「ほら、肩組んで。」

 ガシっと肩に手を置き掴む。

 種田の体温を感じるが、それは向こうも同じ。

 身長が近いのだから変な事も起こらない……はず。

 あ、ちょっといい匂いとかは思っちゃうけど、それはヤンキーでも女の子なんだなと思ってはしまうけど。

 

 「これは中々ハードル高い……」

 

 足は紐で縛ってあり、身体は密着。

 肩を組んでくんずほぐれつ。

 ようやく形だけは二人三脚になった。


 「それじゃぁ、イチ、ニ、イチ、ニで足を交互に出すぞ。」

 「お、おう。」

 

 「せーの、イチ、のわっ」

 俺の掛け声で第一歩目を踏み出そうとして、二人して右足を出すものだから当然態勢を崩して、そのまま……

 おっとっとと耐えようとするものの勢いには勝てずに転んだ。


 俺が地面に腹ばいに、俺の背中と種田の背中がくっつくように。


 「な、なんで同じ側の足を出し……ってどっちからって決めてなかったのが悪かった。それより種田、お前は大丈夫か?」


 背中がくっついているということは、場合によっては頭が地面にぶつかるともとれるわけで。


 「あぁ、うん。大丈夫だけど。」

 背中から感じる体温が何やらやらしく感じてしま……って何を考えてる。



 どうにか邪念と砂利を振り払い、立ち上がり仕切り直し。

 背中同士がという話だったが、それは当然尻と尻も重なっていたわけで、確かに意識していないわけではない。


 声には出せないが柔らかかった。


 「じゃぁ、外側の足をイチ。縛ってる内側の足をニでいこう。」



 「イチ、ニ、イチ、ニ……」


 その後15分ほど練習をしているが、それなりに形になり良い速度が出せるようになっていた。


 最初の照れとかぎこちなさはどこへいったのやら。



 「これなら優勝も狙えるな。」

 種田は闘志がみなぎっていた。


 優勝はともかくいい線はいきそうだとは思った。



 「じゃぁ、明日からも練習して優勝狙うか。」


 「れれ、練習てまだ必要か?そんなずっとくっついてると……」

 最後の方は種田が何を言ってるのか聞き取れなかった。


 地面に座っている種田、立っている俺。

 特に意識して見たわけではないのだが、体操服から……その、肌が……

 いかん、何をしているんだ。


 こういう時女子って勘が良いというし気付いてしまうものではないのか。



 どうやらそういう事もないようで、普通に流された。

 


 こうして本番までの練習でガチで優勝狙えるのではないかという自信が付く程度には上手くなったと思う。


 そして当日。


 

 校長の話もさくっと流れて、各種競技が始まる。


 奇数のクラスが赤組、偶数のクラスが白組、決して奇面組とか男組とかうしろゆびさされ隊とか貧乳乙女隊とか魔法使いTaiとかはない。

 

 結構接戦で午前中を終わって赤組が若干リードしたところで昼食となる。



 モモタロウと食べようかと歩いていると、見覚えのある人物が種田と会話しているところに行き当たった。


 「午後の勝負で見てなさい。白組が逆転してあげるんだから。」


 「へっ、このまま紅組が逃げ切るに決まってんだろこのパッド入り女。」


 見覚えのある人物は、あのお店の娘だった。


 「あれ、同じ学校だったんだ。」


 種田も相手の女子もこちらを向いて驚く。


 「なっちょっと同じ学校だなんて聞いてない。」


 「言ってないし聞かれてないし、ああいう場でプライベートな話はタブーでは?」

 俺が正論で返答する。


 わなわなと拳を太腿の辺りで握る小倉七虹の姿も萌えるなと思った。


 「同じ二人三脚でまずは勝負だ!」

 なんか種田が挑発をしているのだが。



 「ふん、ほぼぼっちで男とまともに会話も出来ないヤンキー崩れに負けるもんですか。」

 ビシィッと人差し指で小倉七虹さんは種田に挑戦状を叩きつけた。


 「へんっだ。じゃぁ勝負しょうぜ。あたしが勝ったらアレ買ってもらうからな。」


 ※アレ、物語の時系列上まだ明かせません。金額に換算すると諭吉10人分くらいです。つまり一か月のバイト代で足りないよね?


 「ふんっ、私が勝ったら……そうね。そこの男とデートしなさい、私が後ろからチェックするから。」


 「な、な、に、にゃ、にゃにおー」

 もはやヤンキーの威厳は皆無である。


 「「勝ちゃぁ良いのよっ」」


 ここに仁義なき乙女の戦いが約束された。


 その間俺はただの案山子と化していた。



☆☆☆


 しかしその戦いは不本意な形で終息を迎える。



 俺・種田恵組と知らない男子・小倉七虹組はくしくも同じ組でレース。

 二人三脚200m走。

 中々ハードな競技でもあると思う。


 スタートラインは滞りなく行い、いざスタート。

 パァンという合図と共に両チームは走り始めた。


 最初は順調だった。

 イチ、ニ、イチ、ニと、昨日までの練習通りに走っていった。

 半分である100mくらいまでは2位である小倉組と5メートル以上離して独走状態。

 周囲の声援も助けになっていた。

 なんだかんだ言いながらも、クラスメイトである俺達をみんな応援してくれていた。



 あと30mくらいというところで、二人の息というかバランスが崩れる。

 結んである方の足の同期に乱れが生じ、なまじヤンキーで力の強い種田の脚力に追いつけなかった。


 その結果。


 「危ないっ」


 思わず俺は叫んだが……

 種田が前のめりに転んでしまった。


 「痛っ」

 ちらりと見えたが、多分膝からいっている。

 あとから転んだ自分は、先に僅かに転んだ種田の影響からか、ワンクッションおいているため激しくは転倒していない。

 少し擦りむいたかくらいだった。

 血が少し出ているがそれよりも種田の様子だ。

 

 さっきから声にならない呻きのようなものしか聞こえない。

 「悪い、身体起こすぞ。」

 返事を待たずに種田の身体を起こし、足の様子を確認すると膝下あたりが腫れていて擦った部分からは血が流れていた。

 

 その様子を見て、ポケットに入れていたハンカチを取り出し、血の出ている個所を覆って結んだ。


 「すまん。レースは中断だ。立てるか?」


 手を握り立たせようとするが、痛みからかすぐにまた転んでしまう。


 「ははっ、この程度で立つのがきつくなるなんてなっ。」

 悔しそうに地面を見つめる種田。

 この間に2組に抜かれている、他の組に抜かれるのも時間の問題だろう。

 周りの声援はそれでもまだ続いていた。


 俺は意を決して……


 脳内に選択肢が沸いた気がした。



 ①種田恵を背中におぶって救護テントへ走った。(ない胸が背中にあたります。)


 ②種田恵をお姫様抱っこして救護所テント走った。 (いろいろな意味で注目の的です。)




―――――――――――――――――――――――――


 後書きです。


 10月4日日曜の夜中にPCラヴィちゃんがホワイトアウトしてから4日ぶりの既存作品の公開となります。

 ケーズデンキ産新ラヴィちゃんが8日に届いてからようやくです。

 バックアップ起こして、5分コンテストの新作書いて。


 壊れる前に書いていたMAXを後回しにしてヤンデレを先に公開です。

 そして選択肢です。


 卑怯ですが、読者様に①か②を選んで欲しいと思ってます。


 いつまでという明確な締め切りは設けていませんが、MAX1話、NTR1話を公開した後に書きます。

 共通しているのは、救護所といえば保健の先生、保健の先生といえば……旧ヤンデレにも登場したあの人が登場します。

 

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