第3話 部活とバイト?

 今日も1日の授業が終わる。

 俺は部活に行くためカバンを持って……席を立って出ようとしたところで、件のヤンキー少女・種田恵が走って出ていくのを発見する。


 「なんだ?最近いつもダッシュしていなくなるけど。」


 「おぉ?もう別居か?」

 あほか。モモタロウは突拍子もない事を言ってくる。


 「別居も何も結婚してなければ付き合ってもいない。だいたい……」

 

 「あー、はいはい。お前は紺b……」


 慌ててモモタロウの口を塞ぐ。

 「お前は人の趣味や癖をばら撒く趣味でもあるのか?お前の性癖は勝手にバレてたからノーカンだぞ。」


 「まぁ自分でバラしたのだからそれは仕方ない。」


 これでも性癖が明らかになる前、それなりに声はかかっていた。


 それこそ体育館裏で。


☆ ☆ ☆


 「好きです。付き合ってください。」


 「あ、ごめん。俺絶対領域85点以上じゃないと無理。」

 そう言って断ったのを、数人に見られていて勝手に広まっていった。


 その時振られた彼女が言いふらしたわけではないが、告白が成就しなかった瞬間からしばらく固まっていた。


 ちなみにその彼女は普通に短いソックスのため絶対領域が存在しない。

 モモタロウ的には論外だそうだ。


 ちなみにその告白シーンを偶然目撃した者の中に俺も含まれている。

 だが俺はバラしていない。


 端から見ても可愛い子だったんだけどな。

 1年も2年もクラスが違うので現在彼女がどうしているかは知らないけど。

 「じゃあ部活言ってくるわ。」


☆☆☆



 弱小とまでは言わないが、万年3回戦止まりである我が野球部。

 親世代の頃は公式戦1回勝つだけで奇跡呼ばわりだったから成長しているとは思う。


 甲子園は無理でも、浦学を破った川口や白岡のような番狂わせ旋風を起こしたいなと日々打ち込んでいる。


 部員も20人いないし実際は厳しい。

 いつから時代はサッカーに人口を持っていかれたのか。

 プロか、プロの在り方か?

 髪型の問題か?

 

 そういえばもうすぐ春季大会が始まる。

 夏の予選でのシードを獲得したければ、ここで成績を残さなければならない。

 1回戦からだと7回勝たないと甲子園の切符が手に入らないため過酷な道だ。


 部員数の関係で1年からベンチ入りは出来たものの、中々思うようにはいかない。

 昨年春緒戦敗退、夏2回戦敗退、秋、地区大会2回戦敗退と公式戦はせいぜい1回勝てるくらい。


 この春の新入生で戦力がどれだけあがるか、どれだけ練度を高められるかが鍵なんだけど。

 リトルやシニア経験者が入っては来たけれどそれだけで勝てる程甘くはない。


 1球1球の勝負は個かもしれないが、試合はチームプレイ。

 全体の底上げと練度がモノをいう。


 かくいう俺もそんな上級者ではない。

 小中とやってきたからには甲子園を目指したい。

 漠然とそう思っているだけだ。

 どうしても甲子園に行きたければ可能性の高い学校に進学するべきだった。

 つまりはそういうことだ。


 部活として野球が出来ればそれで良い。

 


 だからこそ本気でやってる奴らには劣る。

 別に手を抜いているわけではないんだけど。

 それは強豪だろうと弱小だろうと関係ない。


 今日も練習が終わり帰路に立つ。


 まだそんなに暗くはなっていない。

 大昔と違い、長い時間練習すれば良いわけでもないという風潮にある。

 やらないよりはやった方が良いだろうけれど。

 効率よく濃密な……とは理想論だけど。


 そのため平日は19時には学校を出れるように活動しなければならない。


 学校を出て歩いていると商店街に行きつく。

 部員数人で馴染みの定食屋に入っていった。


 コミュニケーション作りは大切だ。

 無礼講とは言わないが、遠慮して何も言えずにってのが良くない。


 何代か前の先輩がそう言っていたらしい。

 だから週に1度くらいは一緒に飯食って帰ろうという風習が出来上がっていた。



 「それで、先輩は女傑と付き合ってるんですか?」

 期待の新人の一人が問いかけてきた。

 ちなみに女傑とは偽大和撫子である種田恵の事だ。



 「いつどこでだれがそんな噂を?何時何分何秒地球が何回回った時?」

 嫌味な返しをしてしまった自覚があるが、どうも周りはほぼ孤高の彼女を俺の特別だと思っている人が多いらしい。


 確かに大抵の人が授業での必要最低限以外で彼女と会話しているところをほとんどみない。

 彼女が誰かと話しているところ、俺は見た事なんどもあるけどな。

 相手の名前はしらないけど。


 「付き合ってはいない。あまり他の人と喋ってるところを見ないからそう感じるだけじゃないのか?」


 

 「そうですか。噂って一人歩きするとか言いますしね。」

 噂の出所が気にならないわけではないが、気にしても仕方ないだろう。

 食べ物が運ばれてからこの話題はお開きとなった。


 

 「お疲れ様でしたー」



 定食屋を出て歩いていると、駅から出てくる種田恵の姿を発見する。


 「ん?どうして駅から?」


 授業が終わると真っ先に教室を出て行ったはずの彼女が駅から出てきた事に違和感を感じる。


 1年の時も同じクラスだったからこそ情報として耳に入っているのだが、彼女は電車通学ではない。

 というか、電車に乗るため駅に行くならまだわかるが、駅から出てきたという事は電車で帰ってきたということ。


 つまり、学校が終わって電車でどこかへ行き、そのどこかから帰ってきたという事になる、一人で。


 まぁ遊びだろうとバイトだろうと他人のプライバシーに踏み込むわけにもいくまいと、今日のところはそれ以上は詮索しなかった。

 


 その後、何度か同じ時間に駅前を通ったが、やはり駅から出てくる彼女を何度か発見した。


 「同じ時間帯であればバイトだろうか。」




 ある日の朝。


 「おはようございますにゃ」


 と、校門を過ぎたあたりでばったり会い、朝の挨拶をしてきた彼女の言葉に、俺は全身が硬直した。



――――――――――――――――――――――――――


 後書きです。


 真白君、高校球児やらせました。


 恵さん、どうやら放課後どこかへ行っているようです。


 そしてナニがあった。 

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