5-2

 終礼を終えて帰ろうとしたら、彼女が僕の元へと小走りでやってきた。僕の友達は驚いた顔をして、静かに去っていった。残された僕は突然のことにびっくりして、何の反応もできなかった。


「今日、暇……?」


 僕は黙って頷いた。彼女から行動を起こしてくれたことに、救われたような思いがしていた。


「……ついていくよ」


 途中までは“木漏れ日の里”に行く道順だったのに、あとちょっと、という所で蘭は違う道を選んだ。あれ?と思ったけれど、そのままついていった。


 蘭が立ち止まった。こじんまりとした、ブランコと砂場とベンチがあるだけの公園にたどり着いていた。


 蘭はまた歩き出して、ブランコに座った。僕ももう1つのブランコに腰掛けた。


「……ここなら、滅多に人は来ないから」

「うん……あの「あのっ」」


 声が重なったので、順番を譲った。蘭はブランコから勢い良く立ち上がった。


「あのっ、この前はごめんなさいっ」


 立ち上がった勢いそのまま、頭を下げた。


「響也の言う通りなの……本当に分からない所もあるんだけど、隠してた所もある。でもあの時は、どうしても言えなくて……でも、確かにあの場面で嘘つかれたり隠し事されたりしたら、誰でも怒るよね。心配してわざわざ声かけたのに、あんな態度取られたら。私、響也の優しさにすごい甘えてたんだと思う……。あの後、すっっっっごい後悔して。泣けば許されるわけじゃないのに、意味もなく泣いて引き止めようとして。ただの友達なのに、重すぎたよね、友達以上のことを態度で要求してた。ごめんなさい。まだ、怒ってるかもしれないけど、とにかくごめんなさいって気持ちだけは伝えなくちゃって思ってて、でも悩んでるうちにこんなに時間が経っちゃって……手遅れ、かもしれないけど…………」


 頭をゆっくり上げながら、蘭は僕の顔色を伺うようにチラリと見た。


「……ありがとう、蘭」

「え?」


 僕もブランコから勢い良く立ち上がって、勢い良く頭を下げた。


「というか、ごめんなさいっ! 蘭のこと、すごい傷つけたよね。それこそただの友達なのに知ったような口利いてさ。言いたくても言えないことって誰にでもあるよな、なのに……。ちゃんと謝りたかったんだけど、勇気がなかった。だから今日蘭が呼び出してくれて、謝る機会をくれて、嬉しかった、ありがとう」


 頭を上げると、蘭は僅かに微笑んでいた。良かった、と何度も言っていた。僕もつられて少し笑った。こんな僕でも許してくれた蘭は、本当に優しい。こんな時なのに、好きになって良かった、と思った。


 蘭は再びブランコに座った。僕も彼女に倣った。


「あの、さ。この前言えなかったこと、話してもいい……?」

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