第202話「うがー! 裸じゃん! レディになんてもの見せんのよ! さっさとちんちん隠しなさいよね! この淫獣!!」

「まずは温泉から上がったら、ベッドをくっ付けて3人一緒に寝られるようにしないとね」

「言わば今夜の戦場ですからね。しっかりと作っておきませんと」


「実はこうなることを見越して、もう宿の人にお願いしてあるの」

「わわっ!? さすがシャーリーさん、手が早いです! できる大人の女性です!」


「ケースケがお疲れだからね。温泉を上がってから用意をしたら、その間にケースケが寝ちゃうかもだし」


「なんかもう、話がものすごいスピードで進んでいくんだが……??」


 当の本人の俺は、完全に置き去りだった。

 っていうかシャーリーの手際が良すぎて、ちょっと怖い。


「そうだ、ケースケ」

「……まだ何かあるのか?」


「こんなこともあろうかと、クエストの前にスッポンとかマムシとかのエキスを濃縮した丸薬を買っておいたから、上がったら飲んでね。なんでも、すごく元気が出るらしいの」


「ふわっ! それ聞いた事があります! 男がみなぎる魔法の丸薬だって。さすがシャーリーさんです。準備に抜かりがありませんね!」


「いやいや、スッポンって亀だろ? マムシって蛇だろ? 俺もその話を耳にしたことはあるんだけどさ。凄くマズそうで、ぶっちゃけ嫌なんだけど……そもそもあんな生き物のエキスを、人間の身体に取り入れて大丈夫なのか? 俺はそこが心配なんだが」


「男とチャンスは逃したら終わりだからね。準備し過ぎてし過ぎることはないのよ」

「ケースケ様が教えてくれたことと、考え方は同じですね! なるほど、勉強になります!」


 俺の抗議の声はしかし華麗にスルーされてしまい、2人は意気揚々と話を先へ先へと進めていく。


「お、お手柔らかに頼むな。マジで俺の身体、限界ギリギリだから……」


 もはやこの流れは止められないと悟った俺は、最後に心からのお願いをしたのだった。


 話が完全に一段落したことろで、

「ねーねー、エロい話はもう終わったー?」


 さっきから俺たちの話をこれっぽっちも興味なさそうな態度で、ひたすらに温泉で泳いだり浮いたりしていたサクラが、すいすいと平泳ぎをしながら近づいてきた。


 これまた幼い頃に同じことをしたことがあるので、『温泉で泳いじゃいけません』などとは強く言えない俺である。

 温泉で泳ぐのは子供の特権であるからして。


「一応言っておくが、エロい話はしてないからな」


「え? ケイスケのちんちんと、子作りの話をしてたんでしょ? ほら、エロい話じゃん」


「平然とちんちんとか言うんじゃない。お前レディなんだろ」


「だったら私のいないところでしてよね! 全部丸聞こえだもん!」

「まったくもって申し訳ありませんでした」


 俺は素直に謝罪をし、


「分かればよろしい」

 サクラも笑顔で許してくれた。


 その後、温泉を上がると、宣言通りにアイセルとシャーリーにベッドに連れ込まれた俺は、


「今日は寝かさないからね?」


 やる気満々のシャーリーとアイセルに、寝落ちするまで夜のご奉仕を受けたのだった――。



 翌朝は3人してぐっすり裸で寝入っているところを、サクラに起こされた。


「みんなして、いつまで寝てるし! 朝ご飯ができてるって宿の人が呼んでるよ!」


 大きな声とともに、掛け布団を容赦なく引っぺがされる。


「ふぁ~~あ」

 俺は上体を起こすと盛大にあくびをした。


「うがー! 裸じゃん! レディになんてもの見せんのよ! さっさとちんちん隠しなさいよね! この淫獣!!」

「誠にもって申し訳ありませんでした……」


 サクラにしこたま怒られてから、しかしすっきりと晴れ晴れとしたした気分で朝食を食べてから、俺たちパーティ『アルケイン』は馬車で拠点へと向かって出立した。


 特に何がある訳でもなく、行きと同じ道を通って俺たちは無事に帰還した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る