第200話 照れ隠し? シャーリー
「もうね、なんだか最近は、肌の張りも落ちてきた気がするのよねぇ」
シャーリーがいじけたように呟いた。
シャーリーは割と自己肯定感が高く、イケイケの自信家なので、こんな弱気な姿を見るのはかなり珍しい。
でもシャーリーも女の子なんだし、年齢とか結婚とかがどうしても気になっちゃうんだろうな。
「そんなことありませんってば。シャーリーさんの肌はすごく綺麗ですから。それにスタイルも抜群じゃないですか。ボン、キュッ、ボンですごく羨ましいんですよ? ね、ケースケ様だってそう思いますよね?」
「シャーリーはとても魅力的な女の子だよ。美人だしスタイルもいいし、はっきりした性格で何でも素直に言い合えるから、すごく自然体でいられる。ストレートに好意を伝えてくれるのも嬉しい。だから自信を持ってくれ」
俺はシャーリーを元気づけたい一心で、柄にもなく歯の浮くようなセリフを言った。
普段はあまり言わないでいるが、これが俺の、シャーリーに対する嘘偽りのない本心である。
「ですって、シャーリーさん。でもいいなぁ、ケースケ様にこんなにはっきり気持ちを伝えてもらって」
アイセルが嬉しそうに――だけどちょっとだけ羨ましそうに――言ったのだが、
「……」
シャーリーは急に下を向いて沈黙してしまった。
さらには、なぜだか俺から顔も背けている。
「どうしたんだ、シャーリー?」
「どうしたんです、シャーリーさん?」
「……」
「シャーリー?」
「シャーリーさん?」
急に一言も発しなくなったシャーリーを心配する俺とアイセル。
特に俺はまた気付かないうちに
「――なり――たら……」
「え、なんだって?」
口を開いたものの、あまりに小声過ぎて聞き取れなかった俺が聞き返すと、
「いきなりそんなこと言われたら照れるでしょ!」
真っ赤にした顔を俺に向けたシャーリーが、突然ガーっと盛大にキレた。
「珍しく本音で語ったのに、なんでキレられるんだよ」
「はっ!? ケースケ様ケースケ様。これは照れ隠しというものです」
「照れ隠し? シャーリーが、俺にか?」
「間違いありません! ふふっ、普段は大人びたシャーリーさんも、ケースケ様に面と向かって愛を
アイセルはこれ以上なく嬉しそうだった。
「……別に愛は囁いてなくないか?」
「いえいえ、囁いていましたよ? ラブ満載でしたよ? いいなぁ、シャーリーさん。ケースケ様に愛を囁いてもらって。羨ましいなぁ」
「そうよケースケ。アタシばっかりに言ってないで、ちゃんとアイセルにも言わないと不公平でしょ」
「あ! シャーリーさんはいいこと言いますね! というわけでケースケ様、よろしくお願いしますね」
「なんでそうなる」
「2人を同時に愛するなら、不公平は絶対にダメよ。ね、アイセル」
「そうですよ! 不公平の『不』は不幸の『不』なんですから」
「ああもう、分かったよ――」
その後、俺はアイセルとシャーリーにラブっぽいことを何度も言わされてしまった。
アイセルに言えば、今度はシャーリーがアタシにもと要求し、逆もまた然り。
2人が満足するまで、俺は愛の言葉をささやき続けた。
この様子を見ている限り、どうやら2人は、俺が思っている以上に仲良しになっているようだ。
いや、いいんだけどな?
むしろ俺を巡ってケンカになったりするよりは、2人仲良く俺を好きでいてくれる方が、はるかに平和でいいんだけども。
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