第175話 vsミトラ神(3)
「アタシたちを攻撃する理由……ね。ちなみにケースケは何か思いついたのかしら?」
「いやそこまではまだだ。シャーリーは何か思いつかないか?」
「残念ながらケースケが思いつかないことを、アタシがパッと思いつくことはそうそうないと思うのよね。というわけで、期待してるわよケースケ?」
にっこり笑うと極上のウインクを飛ばしてくるシャーリー。
「一応、一緒に考えてはくれるんだよな?」
「もちろんよ。なにせ今回は、見ているだけのアタシが一番役に立ってないわけだし」
考える方向性が定まった俺は、頭の中でもう一度情報を整理してみた。
・エンジェルの正体は冒険者の神様であるミトラ神だった。
・俺たちを『愛しき我が子ら』と呼んでいることから、敵とは認識されていないはず。
・なのに攻撃を仕掛けてくる。
・しかし本来、冒険の神ミトラは俺たちは味方のはずだ。
・そして冒険の神ミトラは全職業の全スキルが使えるはずなのに、俺たちの4人の持つスキルだけしか使わずに、縛りプレイで戦おうとする。
・なにより簡単に勝てるはずのに、なぜか延々と長引かせて勝負を決めには来ない。
・おそらく本気で殺しに来てはいない。
判断力も含めたアイセルの総合的な戦闘力が、それだけすごいってのもあるんだろうけど、それでも相手は神様なのだ。
冒険の神ミトラが本気を出せば、俺たちは一瞬で完膚なきまでに敗北するはずだった。
「どうして冒険の神ミトラはこんなにも面倒なことをしているんだ? 勝敗は目的じゃないってことか?」
なら、冒険の神ミトラの目的はなんだ?
考えろ、考えるんだ。
開幕バフしたら終わりのバッファーは、こうやって考えることくらいでしかパーティの役には立つことができない。
だからアイセルが、苦しい状況をなんとか跳ね返そうと必死で戦ってくれている間に、攻略のための糸口を見つけるんだ――!
わずかだが突破口の片鱗は見え隠れしている。
だから死ぬ気で考えろケースケ=ホンダム!
これが俺がずっと続けてきた、パーティへの貢献の仕方なのだから!
俺はシャーリーとともにこの状況を打開すべく、頭をフル回転させて思考の深みに潜っていたんだけど――、
「ケイスケ、ぼーっとしてちゃダメ!」
突然サクラの鋭い声が飛んできて、俺はハッと意識を戦闘へと戻した。
「くぅっ――!」
見るとアイセルが空中に激しく弾き飛ばされていた。
即座に体勢を立て直していたが、そのわずかの間隙に、冒険の神ミトラがこっちに向かって、巨大なバトルアックスを
「バトルアックスを投擲!? まさかサクラの『武器
しまった!
ずっとこっちをノーマークだったから、攻撃はしてこないものだと思って戦闘中だっていうのに
「ケースケ!」
慌てて逃げ出そうとする俺の腕を、シャーリーが鋭い叫び声とともに横合いから強く引っ張る。
だが、くそっ!
だめだ!
もう間に合わない――!
投擲されたバトルアックスが大気を切り裂く衝撃波を放ちながら、信じられない速度で俺に向かって一直線に飛んできた――
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