第137話 vsウッドゴーレム(下)

「ケイスケ、あんたなに冷静に言ってんのよ!? どうすんのよこれ!? 早くアドバイスちょうだいよ!?」


 おいおいまったく。

 全然攻撃が通らないから焦りたくなるのは分かるけど、それで後ろで見ている俺まで焦ったらまずいだろう?


 それにアイセルとサクラのコンビなら倒せなくても、そう簡単にはやられないだろうっていう強い信頼もあるわけで。


 というわけで、俺はここまで冷静にウッドゴーレムとの戦いを観察して導き出した結論を伝えた。


「ウッドゴーレムって、ゴーレムとは言うけどそもそもこれって精霊に分類されてるんだよな。ってことでサクラ、『精霊攻撃』をしてみてくれないか? 外側を叩くと同時に、中の精霊へ『精霊攻撃』をぶちこむ感じで」


「う、うん、分かった! 『フラストレ』、パワー解放! 行くよ! ぬぬぬぬぬぬうぉりゃぁぁぁぁぁっっっ!!」


 サクラが怒りの精霊『フラストレ』の力を微暴走させる。

 サクラも既に慣れたもので、わずかに暴走させた『フラストレ』の力を見事にコントロールしていて、俺ももう安心して見ていられた。


 精霊の力をまといながらのサクラの攻撃がウッドゴーレムに炸裂し、ウッドゴーレムはひっくり返ったまま動かなくなった。


「やったぁ! 一体撃破! 今度は効いたね!」


「よしよし、外側は無事でも、中の精霊本体がダメージを受けて活動できなくなったんだ」


「やっぱりケースケの分析力は頼りになるわね」


「だったらわたしも――!」


 アイセルは数体のウッドゴーレムに囲まれながらも巧みなステップと身のこなしで攻撃をかわすと、1体の後ろに回り込んで、


「ハァッ!」

 鋭く斬りこんだ──と言うよりは鈍器で殴るようにしてウッドゴーレムの後頭部を剣で攻撃した。


 するとウッドゴーレムは一瞬ふらついた後、ガクリと崩れ落ちたのだった。

 そのまま動かなくなる。


「おおっ!」

 まるで演武のような、回避からの流れるような一撃に俺は感嘆の声をあげた。


「『剣気帯刃・オーラブレード』で普通よりも多くのオーラを込めて殴りました。剣の使い方としては正直どうかと思いますが、ここは結果優先です」


 相手をよく見て、必要とあらば剣で斬るという自身の戦闘スタイルすらも臨機応変に変更してみせる。

 物理的な強さだけでなく、判断力なども含めた総合的な戦闘力。

 その姿はまさにSランクパーティの絶対エースだった。


 俺はアイセルの柔軟な発想力と頭の切り替えの速さに、うんうんと満足顔でうなずいた。

 もう完全にアイセルは俺の手を離れて独り立ちしてるよなぁ……。


 アイセルもチラッと俺の反応を見て褒められたのが分かったのだろう。

 戦闘中のアイセルにしては珍しく、ほんの一瞬わずかに表情を崩して微笑んだ。


「じゃあ攻略方法も見えてきたし、数が多いからアタシも少し働かないとね」

 さらにはシャーリーもそこに参戦する。


 相手はアイセルとサクラの防衛ラインを越えてこっちにやってきた1体のウッドゴーレムだ。

 さすがに強力なウッドゴーレムが20体もいると、アイセルとサクラのコンビであっても取り逃がしてしまう。


 それをシャーリーが迎撃する。


「世界を形造りし神なる元素よ、我が衣となりてせ散じよ! まとうは極光の羽衣! ライトニング・クロス!」


 呪文の詠唱とともにシャーリーの身体に、バチバチと音をたてて極光の羽衣がまとわりついていく。


 魔力消費の少ない近接戦闘用の攻防一体の装備魔法を発動したのだ。


 シャーリーは極光魔法を身にまとうと、振りまわしてくる巨大な拳を上手くよけながら、杖で殴ると同時に極光魔法をぶち込んだ。

 光がほとばしり、ウッドゴーレムが一瞬ビクンと身体を硬直させる。


 もちろんシャーリーは接近戦が得意というわけではないので、この一発だけでは倒せない。

 しかし複数回立て続けに繰り返すことで、ウッドゴーレムを撃破してみせたのだった。


 そんなシャーリーの活躍を見て、


「同じ後衛でも何もできない俺と違って、シャーリーは戦力になるから隣にいてくれるとほんと安心だなぁ」

 俺はしみじみとつぶやいたのだった。

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