夕立

 急な雨に降られて

 喫茶店に駆け込み

 雨宿り


 初夏の夕立は

 雷も連れて


 渋いマスターの淹れた

 珈琲は

 芳しい香り

 深い味わい


「観光ですか?」

「ええ、以前ある人と約束したんです。母の日にこの街でまた会おうって。ずっとずっと昔のことなんですけどね。急に思い出して」


 マスターから

 サービスですと

 置かれた

 レモンチーズケーキ 


「あっ、私の大好物です」

「そうですか。良かった、お好きでしたか。レシピはある女性から教えてもらったのです」


 懐古の喫茶店

 思い出の味

 あの約束の相手は

 あなたでしょうか?


 父のいない私に

 母が聞かせてくれた

 唯一の手掛かり


「もしかして、私が約束したのはマスター、あなたですか?」


 喫茶店のマスターは

 困ったように微笑う


 その笑みは

 肯定なの?

 否定なの?


 偶然の再会

 あなたが私の……?




 

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