秋の痛み

 自転車で走る

 小雨が降る

 レインコート着て

 顔は無防備


 濡れるのが気になって

 ちょっと休憩

 タオルで顔をぬぐう


 ふと香る

 この匂いは金木犀だね

 鼻腔をくすぐる

 秋の訪れを報せる花


 脳裏に甦るは

 苦い失恋の記憶


 あの日もそう

 金木犀が香ってた


 喧嘩して

 別れた

 苦い恋の幕引き


 終わる数ヵ月前から

 彼はもう

 次の恋に

 夢中だったんだってさ


 知らなくても良かった

 綺麗な思い出だったら

 良かった


 ふたたび

 自転車をこぎ出す


 なしにならない

 消したい恋の記憶





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