第472話 ガレリアの宿敵

王家のスキルを使い快進撃を続けていた先王であったが、ある日、その王が急死してしまった。(病死という事であったが、おそらく敵方の放った即死系の呪いであったとも噂されている。)


その後、王子達は次の国王となるべく、挙って前線に出兵した。この国では実力が全てであった。力を示さなければ誰もついて来ない。逆に言えば、王位継承の順位が低くとも、武功をあげれば王になれる。


だが、戦果を逸り、前線で無茶をした王子達は、なんと全員、戦死してしまったのだ……。


リーダーを失ったガレリアの戦線は大きく後退する事となった。国境を超えて隣国を侵略していたガレリア軍だったが、旧来の国境まで後退を余儀なくされた。こうしてガレリア王国の世界制覇の野望は潰えたのであった。


後継者が居なくなってしまったガレリア王国は混乱した。その時、なんとか事態をまとめ上げたのがユキーデス伯爵であった。エドワードの存在を明かし、エドワードを王に迎える事で、事態を収拾させたのである。


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リュー 「なるほどねぇ……エド王にとっては、ユキーデス伯爵は父親みたいなものだってわけか」


エド王 「まぁそんなところだ」


伯爵とエド王の関係を知る必要があると思ったリューは、王の寝所に転移で侵入したのであった。神眼で心の中を漁る作業は思いの外大変なのである。相手に質問しながら、相手が想起した情報を読むほうがはるかに楽なのであった。


就寝しようとしていたエド王だったが、リューの侵入を咎める事もなく、快くリューの質問に答えてくれたのだった。


リュー 「悪かったな、睡眠時間を削らせてしまったな」


エド王 「いや、構わん、それよりどうか、ユキーデス伯爵の力になってやってくれ」


リュー 「俺には大した事はできないさ、ただ、依頼をこなすだけだ」


エド王 「それで十分だ」






翌日、伯爵の元を訪れたリューは、伯爵に調査結果を報告した。


ライーダとその実家であるワルグ男爵家を唆しているのがライオネル子爵という貴族であるという報告を聞いた伯爵は、特に驚きはしなかった。


リュー 「当然、そんな情報は伯爵の諜報部隊が掴んでいるってわけか」


伯爵 「まぁな。クーデターが失敗し、反エド王派の主要貴族は失脚したが、何人かは軽い処罰だけで生きながらえた。そんな連中の中には、今でもエド王を憎んでいる者も多い。ライオネルも僻地へ領地替えになった事を恨んでいるのだろうな。


だが、こんな短期間でよくそこまで調べ上げたな。一体どうやって……?」


リュー 「それは企業秘密だ。それより、情報には続きがある。ライオネル子爵には、手を貸している勢力がある」


伯爵 「そこまで辿り着いていたか」


リュー 「でなければ調査報告には来ないさ」


伯爵 「正直に言うと、その勢力がどこの者なのかは、まだ確証は掴めていないのだ。この国は敵が多すぎるしな」


リュー 「ライオネルに手を貸しているのは、ドネル帝国だよ」


伯爵 「…やはりそうか……。候補の一つには挙がっていた。ライーダに渡された毒が、どうもドネル帝国に由来するものらしかったのでな」


クーデターが失敗し、グリンガルが処刑され、ライオネルも子爵に降格され地方へと異動させられたが、ボスである侯爵が居なくなった後もライオネルが反エド王派の活動を続けていたのは、敵対するドネル帝国の諜報員が接触してきて、支援してくれたからなのであった。


ドネル帝国とは、ガレリア王国に比肩する魔法強国であり、ガレリアに唯一魔法で対抗できる国である。この国の存在が、ガレリアが世界制覇を成し遂げられなかった最大の理由でもあった。


ガレリア同様、魔法が非常に得意な国なのだが、ガレリアとその魔力の扱い方は大きく異なっている。


ガレリアの魔法が外部に作用する古来からある一般的な魔法であるのに対し、ドネルの魔法は身体強化に特化したものなのだ。魔力を体内にひたすら蓄え、それを使って超人的な能力を発揮する。


ガレリアの魔法使いによる攻撃にも耐え反撃してくるため、非常に手強い。ただ、体内に蓄積した魔力が尽きると、再び時間を掛けて魔力を蓄積する必要があるため、撤退して何年間か大人しくなるのだ。ドネル帝国もまた、世界制覇を目指す思想を持った国であったが、その特性のせいで、なかなか上手く進んでいないのであった。


ビンガム王の死因は病死という事になっていたがそれは表向きの話で、実は呪い殺されたという噂もあったのだが、それは当たらずも遠からずであった。真相は、ドネル帝国の刺客が己の命を落としながらも、即死級の強力な呪いを放ち、ビンガム王と刺し違えたのである。


ガレリア王を倒したものの、ドネル帝国軍も限界を迎えており、そこから押し込む力はなかったのだが……


そのように争いを続けてきた両国であったが現状は、ガレリアの先王との戦いで消耗したドネル帝国が現在は充電期間に入り小休止中というところなのであったが、それでもスパイを潜り込ませてちょこまかとちょっかいを出してくる。もちろん、ガレリア側も敵国の内情を探るための間者は当然送り込んでいるのだろうが。



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次回予告


伯爵の娘


乞うご期待!


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