足を斬られてダンジョンに置き去りにされた少年、強くなって生還したので復讐します(習作2)

田中寿郎

起動編

第1話 足を斬られて置き去りにされた少年(戯曲)




※この作品は「戯曲」の書き方となっております




―――――――――――――

■セット:ダンジョン内部


ドラゴンの吠声(大音響)とともに開幕


舞台上に数人の人間


全員、上手かみて側を警戒するように剣を構えている


下手しもてから少年(リュージーン)が男二人(ゴジとヨルマ)に乱暴に押し出されてくる。


ゴジ「おら! さっさと行け!」


ゴジが少年を突き飛ばす。


舞台上の者達が押し出されてよろけたリュージーンを受け取り、さらに前(上手側)に引きずって行く。


リュージーン「俺はポーターとして雇われただけだ、魔物と戦うのは契約に入っていないはずだぞ!」


リュージーンが暴れる。しかし周囲の者に強く押さえられて動けない。


ゴジ(ニヤニヤしながら)「うるせぇな、緊急事態だ、仕方ねぇだろ。少し時間を稼いでくれればいいんだよ」


ヨルマ「仕方ねぇな。おい!」(アゴで指示)


頷いた一人がリュージーンに近づき、膝裏を剣で斬りつける。


リュー「ああ!」


倒れるリュー


リュー「な、何を・・・!?」


ゴジ「お前が臆病風に吹かれて逃げ出さねぇようにだよ。歩けなければ逃げられねぇだろ?」


ヨルマ「別に魔物と戦えとは言ってない。これを使え、魔法障壁を発生させる魔道具だ」


魔道具をリューのほうに放り投げるヨルマ


ヨルマ「魔導砲の魔力チャージが終わるまで、そこにとどまって障壁バリアを維持してくれればいい、簡単な仕事だ」


ゴジ「魔力ゼロのお前にはそれくらいの仕事しかできんのだから、しっかり働けよ!」


ヨルマ「チャージが終われば魔導砲でドラゴンなど一撃で倒せる」


ゴジ「ドラゴンを倒したらその後で治療してやる、せいぜいしっかり食い止めておけ」


リューを残して全員下手側に退場


ドラゴンの吠声とともに閉幕開始


悲鳴をあげながら這って逃げようとするリュージーン


途中で慌てながら魔道具を拾い、起動させようとする…


完全閉幕


―――――――――――――


閉幕したまま(幕内セット変更作業)


幕前、上手側からヨルマほか数名登場


ヨルマ「急いで撤退するぞ!」


冒険者A「おいヨルマ、『魔導砲』を使わないのか?!」


ヨルマ「魔導砲ってなんだ? この煙管の事か?」


ゴジ「……リューを騙したのか?! ヒデェな!」(笑)


ヨルマ「結界石は本物だ、起動すれば魔法障壁バリアが発生してしばらくは持ちこたえられるだろう。」


冒険者A「バリアが切れたら……? ドラゴンが追ってくるんじゃないのか? 早く逃げないと!」


ヨルマ「バリアが切れると同時に自爆石が作動するようになってる。ドラゴンが出てこれないように出口を爆破してしまう必要があるからな。」


ゴジ「それで出口は塞げるのか?」


ヨルマ「ああ、かなり強力な威力の自爆石だ……リューも苦しまずに死ねるだろうさ」


冒険者B(肩を竦めながら)「お優しい事で……」


ヨルマ「それに……ないとは思うが、万が一、生きて帰られて訴えられても迷惑だからな」


肩を竦め顔を顰める冒険者達


ヨルマ「時間がない、さっさと撤退するぞ!」


全員下手側に退場


―――――――――――――


開幕


■セット:冒険者ギルド


舞台上にヨルマ・ゴジ、他数名の冒険者とギルドマスター(ダニエル)


ダニエル「ダンジョンの中にはやはりドラゴンが居たか!」


ヨルマ「アース・ドラゴンだ。それも結構浅い階層だった。」


ダニエル「もしアースドラゴンが地上に出てきたら大変な事になる。一匹だけなら、何とか討伐できるかもしれない。しかし、複数であったら、間違いなく街は壊滅するだろう」


ヨルマ「階層の出口は爆破してきたから、しばらくは出ては来れないだろう」


ダニエル「よくやってくれた、早急に領主に報告し、国から軍隊を派遣してもう事も検討する必要があるだろう」


ゴジ「ポーターの少年が一人、その身を捨てて出口を塞いでくれたんだ。彼の尊い犠牲のおかげで街ハ救ワレタワケダ。感謝シナイトナ」(笑う)


ダニエル「Gランク冒険者が一人ダンジョンで死んだところで、大した問題ではない」


下手からリュージーン登場


扉を開け、ギルドに入ってくる


リュー(ヨルマを睨みつけながら)「最初から捨て石にするつもりで連れて行ったのか?!」


ヨルマ「リュージーン! オマエ…生きていたのか……」




―――――――――――――

◆舞台背景


のどかな片田舎という表現が似合う街ミムル。その東に、十数年前、ダンジョンが発生した。


これといった主要産業のなかった街は、資源としてのダンジョンを歓迎し、積極的な攻略はしなかった。


だが、ダンジョンを破壊せずに管理するのは細心の注意が必要であるが、ミムルの街はそのノウハウも知らず、冒険者が気まぐれにダンジョンに潜るに任せていた。


やがてダンジョンはなぜかいびつな成長を遂げ、浅い階層に高ランクの魔物が溢れるようになってしまったのである。


冒険者達はダンジョンの魔物の“間引き”に手こずるようになり、増えた魔物はダンジョンから出てきて街の周囲を闊歩し始める。


魔物による住民の被害が多発するようになり、ついに貴族の関係者にまで被害が出たところで、やっと領主からダンジョンの破壊命令が出されたのであった。


それを受け、冒険者ギルドではレイド(複数パーティ合同による大規模攻略作戦)が計画されたのであった。


― ― ― ― ― ― ―


16歳の少年、リュージーンは、薬草取りを主な仕事として生計を立てているGランク冒険者であった。


本人は必死で努力しているのだが、何故かレベルがまったく上がらず、ランクの高い依頼が受けられないまま、薬草取りだけを続けて3年が経っていた。


実力が足りない事を自覚している少年は、レイドにも参加するつもりはなかったのだが、ポーターとして半ば無理やり駆り出されたのであった。


― ― ― ― ― ― ―


そして開始されたダンジョン攻略レイド。多少苦戦はあったものの、順調に攻略は進んでいったのだが、十層ほど進んだところでドラゴンに遭遇してしまったのだ。


這竜クロウドラゴンの危険度はA。一匹でも軍隊一個中隊で退治できるかどうかという凶悪なモンスターである。それが無数にダンジョン内を彷徨いているのである。


正直、そこまでの想定をしていなかった冒険者達。即座にヨルマは撤退の判断をしたが、ドラゴンから逃げ果せるために、ポーターとして連れてきた少年を犠牲にする事にしたのである。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


悔しかったらランクを上げろ


乞うご期待!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る