愛の告白のように
挑発にまんまと乗ってきたフレアは、俺が防御する余地のない近接攻撃を狙ってきた。
魔法を相手の身体に直接ねじ込めば、どんなに高レベルな魔道士でも防ぐ手立てはないからだ。
相手が魔道士ならば……だ。
だが、俺は違う。
俺の心臓の位置へ当ててきたフレアの右手を俺の左手が握り絞める。
「
火炎攻撃の方向をねじ曲げてやると、炎が荒れ狂う竜のように空へと昇って行く。
「消し炭になれ!」
「
「消し炭になれ!」
「
「消し炭になれ!」
「
「消し炭になれ!」
「
何度攻撃してきても、結果は同じ。
厚く立ちこめた雲に向かって、炎の竜が次々にうねり昇って行く。
俺の左手がフレアの右手を握っている間は、魔力の使い放題なのだ。
「っあッ! 離すのッ! その手を離すのっ!」
「は、離すものか! この手は死んでも離さねぇーからな!」
フレアは俺の手を振りほどこうと、ガシガシ蹴飛ばしてくる。
痛みなど気にしている場合ではないのだが、痛いものは痛い。
俺は何とか暴れる彼女の後ろに回り込み、右腕を回して押さえ込む。
「ぎゃあぁぁぁぁー離すのぉぉぉーッ!!」
後ろから抱きつくような体勢になった途端、大きく首を前後に振ってきたので、彼女の後頭部が俺のアゴに何度も何度も直撃する。
「俺はゼッタイお前を離さねぇーから!」
まるで愛の告白みたいなことを言ったが、それを自嘲する余裕もねぇー!
だが、これは俺の予想通りの展開だ。
「お前、魔力を消費したことで、だいぶ楽になってきたんじゃないか?」
「……は?」
ものすごく気持ち悪い物を見るような表情で振り向くフレア。
だが、その目はもう飢えた猛獣の目ではなくなっている。
「お前は魔力が貯まりすぎると、あふれる魔力を制御できずに暴走していたんだ。だから、余分な魔力を使ったことで、正気に戻ったんだよ」
きっと、これまでに何度も。
こんな失敗を繰り返して来たんだろう。
「そんな……わたしは……」
「なら、今でも俺を喰いたいと思っているか?」
「は?」
「だろう?」
何が〝だろう?〟だよ。
自分で言いながら、心に軽く傷を負ったようなこの感覚は何なんだ?
「俺が魔力制御の練習相手になってやるよ。だからもう暴れるな!」
「そ、そんなこと……ただの人間ができるわけがないの!」
「俺を信じろ! なんなら、お前の最上級の魔法を俺にかけてみろ。今の俺なら、お前の全てを受け止めてやる!」
俺は彼女を抱きしめながら、そう言った。
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