セピア色の花
もうずっとずっと昔に 抱いていた
まだ形になっていないくらいの 淡い花
本当は 少しずつ少しずつ
育てていくものだった はずなのに
ある日 まわりが
きちんと咲く前に つぼみの中を知りたがり
結果 花は無残にあばかれてしまった
優しかったあの人は「それでも良い」と 言ってくれたけど
「好きだよ」と 耳に口を寄せて 応えてくれたけど
あばかれた花は まだ全然 色づいていなくて
私は 無言で立ち尽くすしかなかった
今なら そこからでも
もっと 「どうにか」しようも あったと思うのに
あの頃の自分は 頭がまっ白で
全てを なかったことにしたくて
花も彼も 遠ざけてしまった
そのうち 花は
だってまだ 根さえきちんと張れていなかったのだ
あのまま 咲いていたなら
どんな花が 咲いていたのだろうと
今でも ときどき 思い出す……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます