第10章 信頼と裏切りと①
事務所(作戦本部)に戻ると、怒号が飛び交い慌ただしく動いていた。
「武田捜査官、大変です!」
「何事だ?!」
「国会議事堂が武装グループと例の化け物に襲撃されています!」
「なに?!」
巨大スクリーンにライヴ映像が写し出されている。
武装グループに混じって化け物まで建物になだれ込んでいる。
警官や自衛隊員も応戦してはいるが化け物の姿が見えていないせいもあって次々と吹き飛ばされていく。
「まずいだろ、これ!今すぐ行かないと!」
徹は今にも外に飛び出しそうな勢いだ。
「徹、落ち着け!」
こちらには5人そこそこの捜査官しかいないし、まずは警察や自衛隊と連携を取らないと。
ザッザッザッザッ…
??
突然、事務所の扉が開いて20人程の武装した捜査官?達と、黒い上下のスーツを着た男が現れた。
「注目!」
突然現れたスーツの男が号令をかけた。
「私は新たに参事官の任を拝した城田だ。たった今から私がこの特別対策チームを率いることとなった。」
なるほど、前の参事官がああなってしまっては放っておくわけにいかないよな。
「今から特別戦術チームを編成する。だが、困ったことに部外者が4名もいるようだな。」
全く…コイツ等は!
「ばかな!そんなこと言っている場合か!」
俺の言葉に城井の鋭い眼光が向く。
「口を慎め!私はこれから貴様の上官となる男だぞ!」
…何?
「私のチームに部外者が混ざるなど言語道断だ。そこで、君達部外者4人を臨時捜査官に任命する!」
『は?』
見事に俺達4人の声がハモった。
「…我々には本来君達へ強制できる立場には無いが、この国をテロリストから救うためだ。我々だけでは人外の勢力に対抗できる術がない。頼む、力を貸してほしい。」
…そういうことなら最初からそう言え!
「クレア、徹、林さん、もう迷う余地なんてないよな?」
「ええ、もちろん。」
「しゃあないよな。」
「今は我々にできることをしないと。」
よし。
「参事官、全会一致だ。」
「そうか、ありがとう。では君達4人と、田辺、桐山、山西、轟の4人を現場対応チームとする!」
『は!』
捜査官4人はビシィッと敬礼をした。
…俺達もした方がいいのか?
クレア達も俺と同じ考えなのか、慌てて敬礼した。
「君達にも戦闘服と、ヘルメット、イヤモニターが支給されている。着替えておくように!」
『了解!!』
今度こそ俺達の敬礼が揃った。
…気分は悪くない。
「加藤、黒部…」
城田…さんは各チーム編成を行った後、俺を呼び止めた。
「何ですか?」
「我々の武器にも君の力を分けてもらうことはできないかな?」
「構いませんよ。」
「ただ、無限に力があるわけではないので、限定はしますが。」
「あぁ、それで構わない。」
「了解です。出動はいつですか?」
「すぐにでもと言いたいんだが、我々にも準備が必要だ。
ろくな作戦もなしに突っ込んだとあれば、多くの部下が死んでしまうからな。」
この男なら少しくらい信用しても良さそうだな。
「でも、俺達が行くまで持ち堪えられるんですか?」
「あぁ、君達が戻る少し前に瀬戸さんが危険を承知で化け物の封じ込めを自ら買って出てくれた。」
…瀬戸さんも無茶をする。
「敵性戦闘員へは同行した捜査官や警察、自衛隊員が応戦しているから多少の時間は稼げるはずだ。」
「なるほど。急いだ方がいいのは間違いなさそうですね。」
「そうだ。早速部隊の弾丸を強化してもらえるかな?」
「わかりました。」
早速俺は準備にかかった。
「大変なことになっちゃったね…」
「あぁ、そうだな。」
ガチャ…
よし、これで最後だ。
俺は武器担当を呼んだ。
「でも、俺達しかこの事件を解決できないのも間違いないしな。」
「…そうだね。ちょっと来て。」
俺はクレアに手を引かれ、応接室に入った。
扉を閉めると、カギを掛けブラインドを締めた。
…なるほど。
「これが最後になるかも知れないから!」
そう言ってクレアと、俺は服を脱いだ。
死ぬかも知れない作戦の前だ、これくらい許してもらえるはずだ。
…そもそもここは俺達の事務所だしな!
事が済み、応接室を出ると、
「…終わったかよ。」
徹が応接室の扉の前で両腕を組んで待っていた。
「えぇ、最高なお祈りの時間だったよ♡」
クレアはそう言って徹にウィンクを送った。
「…よかったな。それより後15分くらいで出発だぞ、早く着替えてこい。」
「わかった。」
クレアと俺は着替えを済ませると城田参事官が歩いてきた。
「君達にはモデルガンしか持たせてなかったと聞いたが、もう立派は捜査官だ。装備を整えていけ。」
「それは、俺達に人も殺せと言うことですよね?」
「超法規的措置ではあるが、あくまで自衛の為だと思っていてくれ。だが、いざというときは…躊躇うなよ。」
「…了解。」
「それと、彼女と仲良くしてたみたいだが、体力は残っている?だろうな?」
…バレてたか。
「大丈夫です。」
「…ならいい。武器を選んでおいてくれ。」
俺はアサルトライフル、ハンドガン、コンバットナイフを選んだ。
クレアはアサルトライフル、マシンピストルのみを受け取った。刃物は持ちたくないそうだ。
向こう側では徹と、林さんが武器を選んでいた。
そろそろ出動だな。
俺とクレア、田辺、桐山捜査官がアルファチーム。リーダーはなぜか素人の俺になった。反対して理由を求めたが瀬戸さんからの指示だというだけで、リーダー辞退は却下された。
瀬戸さんの指示って、あの人は一体何者なんだよ。
徹、林、山西、轟捜査官がブラボーチームだ。山西捜査官がブラボーリーダーだ。
「黒衣さん、現地で会おう!」
武田さんか、支援部隊だったな。
「あぁ、お互い絶対生きて帰ろう!」
俺と武田捜査官は固く握手をした。
「アルファ、ブラボー出動だ!支援部隊は後に続け!」
『イェッサー!』
気持ちいい、一度言ってみたかったんだ!
俺達は装甲車に乗り込んだ。
現地に付くと、一般人や捜査官達の死体が横たわり、血液などもあちこちに飛び散っており、かなり悲惨な状況だった。
「各員、腰を低くして慎重に進め!」
『了解!』
俺の指示に3人が答える。
…悪くない、悪くないぞ!
(ダメだ、舞い上がっている場合じゃない、冷静に行かないと!)
正門に到着したが、誰も居ない。
…瀬戸さんは無事なのか?
正門を進むと突然銃声が鳴った。
ピキューン!!!
?!
「スナイパーだ!」
俺はチームに注意を促し、安全なカバーポイント(身を隠せる場所)に移動し、周囲を確認した。
議事堂の監視塔が光って見えた。
そこか!
「10時方向、スナイパーだ!!」
桐山捜査官が腰程の高さのコンクリート壁にライフルのバレルを置く。
バァァァン!!
「スナイパーダウン!」
ス、スゲー!!
「よくやった!先へ進むぞ。」
議事堂正面玄関に到着した。徹達は西棟から侵入する手筈となっている。
俺は扉にブリーチングチャージ(扉を破壊する為のリモコン式爆薬)をセットした。
「離れろ!」
ピッ
…ドゴォォン!
鍵が吹き飛び扉が開いた。
思っていたりよりすごい衝撃だな。
「突入だ!」
俺達は中に突入し、それぞれがカバーポイントについた。隣にはクレアがいる。
ここまでは銃を使わずに済んだが、この先は敵の本拠地になっているはず。
いざというときは俺が…
バババババババ…!!
来た!
「クレア顔を出すなよ!」
俺は顔を少しだけ出し応戦する。
ババ!
バババババ!
「うぐぁ!」
よし、一人倒れた。
…死んでないよな?
田辺捜査官達も応戦している。
…おかしい、なぜ化け物がいない?
『公安部の諸君、ようこそ。』
例の黒幕か!
『これを聞きたまえ。』
『黒衣さん、皆さん。ここへ来てはいけません!すぐ帰りなさ…ぐっ!』
『失礼した。瀬戸さんはこちらで預かっている。これ以上邪魔立てする気ならただでは済まないと思いたまえ。』
ブチッ
通信が切れたようだ。
…くそっどうする!
俺は本部に連絡を取った。
「こちら黒衣。本部どうぞ!」
『こちら本部。』
「瀬戸さんが人質になっているようです。どうぞ!」
『それは確かか?マズいな。
彼女は国家レベルの要人だ。何かあってからじゃ遅い。一旦下がれ!どうぞ。』
「了解。」
そんな要人ならなぜ前線に出したんだよ!仕方ない、戻るか。
俺達は一旦退き、車両まで戻ることにした。
ブチンッ!!
?!
正面玄関を出ようとした瞬間、全ての照明が落ちた。
「みんな気を付けろ!」
俺達はライフルのフラッシュライトを付け周囲を確認する。
くっ、奇襲でも掛けるつもりか…
「ぅわ!なんだ?!」
田辺捜査官の声だ。
バババババババ…!!!
銃を乱射している、マズい!
どこだ?!
俺は意識を研ぎ澄ませる。
…この感じは、化け物だ!
「各員一ヶ所に集まれ!こっちだ!」
ダッダッダッダ!!
「桐山です。どうなってるんです?!」
「化け物だ!奴等が来た!」
周囲を暗闇にすれば、瀬戸さんの力で化け物が視認できても意味がなくなる。
「来るなぁぁぁ!」
バババババババ…!!
「田辺落ち着け!」
「んぐっや、やめ…」
?!
俺がライトで田辺を見つけた時には、化け物はその胸に腕を突き刺し、心臓ごと貫いていた。
「ひっ!」
クレアの悲鳴が聞こえた。
「くそったれが!!」
バンッババッバババババババ…ッ!!!
俺は田辺を殺した化け物に弾丸を何発も打ち込んだ。
{ぴぎゃぁぁぁぁ!!!}
断末魔の悲鳴を残し化け物は粉々に散った。
「今だ!扉を蹴破るぞ!」
『イェッサー!!』
バゴォン!!
俺達3人は議事堂からの脱出に成功した。
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