第2話・魔王様、勇者を探す。
ここは、自然に愛されている美しい程の景色が広がる土地【人間界】。
その中央にそびえ立つ巨大な街【王都】。
街は巨大な城を中心に活気ある街並みをそろえ、溢れんばかりの人で賑わっている。
そんな街を悠然と歩く魔王とその配下、ベルがいた。
「魔王様――いえ、キース様。
城を空けてしまって良かったのですか?」
魔王こと――【キース・レシア】の後を追うベルが心配そうに尋ねる。
2人は今、魔王城を留守にして王都の街を歩いている。
目的はキースが決めた――“勇者を育てる”ということにある。
「問題はないだろう。
この500年の間、誰一人として城まで訪れた者はいないからな・・・」
魔王城にいるのは、魔王であるキースとその配下のベル――二人だけ。
その2人が留守にしているということは今、魔王城はもぬけの殻。
無数のトラップはあるとはいえ、攻め放題の状態に等しい。
「心配ならベルが城に残っていてくれてもよかったのだぞ」
「そんなことできません。
キース様おひとりで敵陣に向かわれたなどいえば、他の魔族達に何を言われるか・・・」
まさか魔王が自ら敵陣の中央にいるなど誰も考えないだろう。
下級魔族に敗れる人間達に魔王を倒す術はないとはいえ、おひとりで向かわれたとなれば、城を空ける以上に心配が尽きない。
「まぁ、城の事は心配しなくても大丈夫だ。
何かあればすぐに分かる」
実は魔王城を形成している核となる部分には魔王の力の一部が使われている。
そのため、城と魔王自身には繋がりがあり、離れた場所にいたとしてもすぐに感知でき、一瞬で城に戻ることができる。
「わかりました。
――所でキース様、どちらに向かわれているのですか?」
ベルはキースに着いてきただけで、行き先などは聞かされていなかった。
「とりあえずは現在の勇者を見ておこうと思ってな・・・」
「まぁ!勇者とお会いになるのですか?」
「いや、遠目からでも姿が見れたらそれでいい」
キースはまだ勇者を見たことがないため、一目見ようと大都市に来ていた。
ここでなら、勇者の情報が手に入ると考えて。
2人は情報をもっていそうな人間を探して、時折周りを見渡す。
「――ん?」
すると、2人の存在がどこか注目を集めているように感じる。
「キース様――私達、見られていませんか?」
キースの疑問にベルも気づいたようで警戒を高めている。
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