第26話
グレンは竜が動かなくなったことを確認すると、大きな溜め息を吐き、身体から少し力を抜いた。
……賭けには勝ったか。
この竜が放った最後の一撃は、グレンをして恐ろしいという感想を抱くほどの攻撃だった。
竜がそうするように仕向けたのはグレンだが、その威力を間近で見た瞬間には勝てるという確信は持てなかった。
それでも対応をしなくてはならない。
だから全力を尽くした。
ただ、グレンの技量が竜よりもわずかに優れていたらしい。
その結果として、グレンが生き残った。
現状から言えることは、それだけだった。
……我ながら少し無茶をしすぎたな。
結果論だけでものをいうのなら、勝てたからそれでいいと、そういう話でしかないのだが。
いち冒険者としては、本来であれば、単体の力量として確実に優位であったとしても、何かに一人で挑むなどという選択肢は採るべきではなかった。
無事に生き残ること。次に繋げること。
それらを実現するために行動を選択することが、冒険者として長く生きるために最も重要な行動であるからだ。
たとえそれらの行動を選んだがゆえに、自分以外にどれほどの犠牲が発生しようとも。
己が生き残るために行動することこそ職業冒険者の最善である。
……とは言え、そこまで割り切って動くのは難しいもんだ。
これっぽっちも届かない力を束ねて、脅威に抵抗する人間の姿を見た。
彼らは、時間を稼げているかどうかもわからないだろうに、ほかの誰かのために自分の命を危険に晒すという行動を、そうするのが当然というように選択していた。
そして、グレンはそんな尊い姿勢を見て心が動かされないような冷血な人間ではなかった。
グレンが一人で逃げずに戦うことを選んだ理由は、本当にそれだけのことでしかない。
……ま、職業冒険者の人間として最低限の保険はかけさせてもらったけどな。
相応の被害は出た。
しかし、原因は取り除いた。
……だったらまぁ、あとはどうにかするだろうさ。
やれることはやってやった。
「……あー、ほんっとに疲れた。
後始末だけしてさっさと引き上げるとしよう」
流石にこれ以上の面倒事に巻き込まれるのは勘弁だと、グレンは疲れたように吐息を吐きながらそう呟いた。
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