第6話平穏の終了

夜間戦闘演習が開始され20分が経った。


しかし自分の隊はどこの部隊にも接敵していない。


それどころか撃墜報告が一切無い。


確かに夜間戦闘において目視よりもレーザーと音を頼りにするのがセオリーで今回の演習ではレーザーの使用が禁止されてる為セオリー通りにできず頼れるのは夜目が使えるまで使い物にならない目視と自機と敵機を聞き分ける音だけなので速度も出せず飛ぶことも出来ないのだ。


そのため徒歩行軍しかできず20分間ではろくに進めていない。


「一、この状態どう思う?」


「そうだな。敵もエンジンの炎を見られるのを嫌ってこちらと同じように歩いてるだろうな。それがセオリーだし仕方ないだろ。」


「やっぱりそうだよな。よし!こうなったら離陸して敵をいち早く発見して一斉に掃射するしかないだろ。」


「それってセオリー通りじゃないよな!?リスクがあり過ぎだろ。」


「そこだよ。確かにリスクは高いしセオリー通りじゃないだから逆に対処はしずらいはず。敵が対処しだしたら即刻後退してまた別の戦法で叩く。」


「確かにそうだな・・・。試してみるか。全機上昇!」


一の合図と共に部隊全てがエンジンを点火し上昇する。


飛んでみるとあっという間に敵を発見できた。


「全機掃射始め!合図あるまで撃ち続けろ!」


小銃と機体に備わっている機銃が火を吹き敵部隊を弾丸の雨にさらす。


一機、二機、と徐々に撃墜判定がでる。


しかし何故か数が足りない。


敵機は12機居るはずなのにここには撃墜判定が出た者も入れて8機しかない。


そんな事を考えていると徐々に敵機も対処し始めてきたのだ。


そのためこちらも小破、中破の機体も出始めた。


「掃射辞め!後退!」


エンジンを逆噴射し演習広域ギリギリまで後退する。


しかしなぜか離れる度に一機、二機と撃墜されていく。


考えられる事は一つ。


さっき居なかった機体が別働隊として動いていたのだろう。


「宗司、こっちも別働隊を作ろう。」


「一も同じ考えか。残った本隊を叩く部隊と別働隊を叩く部隊に分けるべきだと思う。」


「本隊は3機、別働隊が4機居るはずだからこっちは9機いるから4:5に分けよう。3機はおれが指揮するからお前は4機を連れて別働隊を叩け!」


「了解!セイバー7,8,9,11は俺に続け!」


広域ギリギリに沿って飛行していく。


さっきと同じ所を飛ぶと狙い撃ちにされると思ったからだ。


別働隊の捜索をしていると急に少佐から連絡が入った。


「全養成校生に告ぐ。即刻送信したポイントに集合せよ。繰り返す即刻送信したポイントに集合せよ。基地が敵機の奇襲を受け壊滅的被害を被った。とにかくそのポイントに迎え!基地の守備隊ではどうにもできん!その後の説明はそのポイントにいる隊の指揮下には入れ!」


その連絡を受け戸惑いながらもすぐに動きだす。


そのポイントは宮古島の上池間島の端だった。


ここは伊良部島なので飛べばすぐそこだった。


そこには養成校から付いてきた教官が待っていた。


「来たか・・・。貴様等にはこれより模擬弾から実弾に持ち替え宮古島基地の防衛、周りの住民の避難誘導をして欲しい・・・。」


それを聞きある生徒が走り教官に距離を詰めた。


「守備隊はどうしてんだよ!スクランブル可能機はどうしたんだ!教官!」


「すぐさまスクランブルは行われた。しかし敵は3つに別れ進軍していたらしい。そのためスクランブルに出撃した部隊はまんまと囮に引っかかり残った2つの部隊に奇襲された。守備隊も出動し対処したがなにぶん数が多く1部隊分しか対処出来なかった。そのため敵に好き勝手にされ現在は破壊の限りを尽くしている。そして現在稼働していて無事な機体は貴様等だけなんだ・・・。死にに行けと言っているようだが許して欲しい・・・。そして現時刻より貴様等は第4帝都防衛用機動歩行機搭乗員育成校を卒業、実戦投入という運びになった。スクランブルを行った部隊が戻ってくるまでなんとか耐えて欲しい。現在貴様等の機体の武装の切り替え作業を行っている。それが完了しだい出撃してもらう。以上!」


それだけ言うと教官は後ろを向き歩き出した。


それを見届けるしかできなかった。


この話を聞いて泣き出す者や自暴自棄になる者も居た。


「一・・・。」


「ああ・・・。」


会話が続かなかった。


「宗司!一!なんて顔してんだよ!」


「知恵お前この状況分かってんのか?」


「当たり前じゃん!要はスクランブルした部隊が戻ってくるまで敵に弾を当てつつ逃げ切ればいいんだろ?やるしかないじゃん!」


「それもそうだけどよ・・・死ぬかもしれないんだぞ?」


「その時はその時で考えるしかないじゃん。どうせもともと卒業後は戦場に投げ出されるんだからそれが早くなっただけだよ。」


「確かにそうだけどさ・・・」


話していると教官の怒号が走った。


「貴様等!切り替え作業が完了した!全機乗り込め!」


その声を聞きみんな心を入れ替え乗り込む。


逃げるという選択肢は無いからだ。


全員が乗り込むのを確認すると教官から無線が届いた。


「貴様等の指揮は俺がとる。俺も俺の機体も時代遅れのオンボロだ。だが貴様等は違う。もし死ぬとしても俺だけでいい。行くぞ!全機出撃!」


合図と同時に一斉にエンジンを噴かし上昇していく。


未来は生か死か分からない。


だが自分達は出撃した。

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