二匹の魔物無事に帰還?
二匹の魔物無事に帰還?
「はぁはぁ……し、死ぬかと思った……た、大将が来てくれなかったら……喰われてるところでした……」
「な、なあ、俺っちの頭ちゃんとあるよな?」
なんとなく帰りが気になり大きい方のトロルと少し様子を見に行ったところ、二匹が危うく小さいトロルに喰われるところであった。
特にノールは頭を囓られる寸前で後数秒遅かったら首がなかったかもしれない。
「で、でも……一体何が?」
オークがブヒブヒと鼻を鳴らしながら水を一気に飲み干す。
「ふう……それがトロルの野郎が人間の言葉にあっさりと騙されたみたいで、あっしらを敵だと思ってずっと追いかけてきたんですよ」
「……人間?」
こんなところに人間がいるのかと少し疑問に思った。
「トロルを騙したのが人間の雄で、もう一体は雌で、あの臭いだと有角族か……いや女戦士族かもしれやせん」
有角族……女戦士族? ノールの説明から聞き慣れない部族名が出て来た。
「そ、それって……」
「ええ人間達が言うところの“亜人”種ってやつですな」
亜人……、亜人というのはつまり人間に似ている種族ってこと……だよね?
「人間のメイド服を着ていたから、女戦士族じゃないっすかね。彼奴らは人間の文化に染まりやすいって聞いたことがありやすし」
め、メイド服だと!? き、来た……。来た来た来たー! 待ちに待った待望の亜人の女の子!!
「そ、その亜人て……つ、強いの?」
「彼奴らは半端な連中のくせに人間と連んで、武器やら魔法やらを所持しているから結構厄介ですが、まあでもトロルの敵じゃないでしょう」
そうか、トロルよりは弱いのか。
「いや待てよ。俺っち達が着いたときトロルの野郎の首がなかったから、相当な手練れと見るべきじゃないのか」
こういうときに冷静な目を持つノールの意見は重要だとここ数日よく分かっていた。
そ、そうなんだ。女の子なのに強くて綺麗なのか……。
誰も綺麗とは言っていないが期待が膨らみすぎた彼の脳内では、既に亜人種が綺麗であったり可愛かったりしているらしかった。
「ムコウから、エサのニオイがいっぱいスル」
アマゾネスにボコボコにされたらしいトロルはケロッとした顔でそう言う。
「……あ、あっちに?」
ぐふふと嬉しそうに笑うトロルだった。
「あっちにエサでもあるって? もしかしたら近くに亜人共のキャンプでもあるのかもしれやせんね」
「この辺りは大分人里にも近いし、彼奴らはショボい傭兵稼業をしているからどこかで戦争でも起こるのかもしれないっすね」
オークとノールの話を聞いて思わず心が弾んでしまう。
そんなに沢山のメイドさんがいるのか!?
「どう、しよう……」
『主よ……、ワレはそんなものに負けることはない』
「あ、う、うん……そうだね」
仲間のトロルが大分痛めつけられたからか大きい方のトロルは鼻息を荒くしていた。
「それで、どうするんですかい?」
亜人の女の子をゲットしたい気持ちが強くあった。しかもトロルを追い込むほどの強さがあるのであれば大歓迎である。
「あ、う、うん……」
しかしもう一人の男というのが気になる。こんな森に人間が単体いるとなると、やはり勇者の可能性を考えてしまう。
だがもしそれが勇者であったらトロルなんて簡単に倒せていただろうし……もしかしたら自分と同じ駆け出しで、同じく魔王軍に捕まっていたところ上手く逃げ出したとか……。
いずれにせよ。そこに行かなければ彼女たちは手に入らない。
彼は光線銃を手に持つと、今は決意すべきであると判断した。
「そこに向かおう」
「まじですかい!? アマゾネスは言いたかないですが結構強いですぜ」
「そ、そう……」
ノールの言葉に決意が鈍ってしまう。
「で、でもそろそろ本拠地みたいのが欲しいし……それに、しょ、食糧とかも限界だから……」
「確かに、いつまでもトロルにコボルドやゴブリンを与えるのも限界がありやすしね。それにあっし等もそろそろ屋根のあるところで寝たいところではありやす」
「そう言われると反対のしようがないな。アマゾネスは強いっすけどトロルが二体いればまず負けることはないでしょうし」
なんとなく意見がまとまった。
その二人を追って強襲し彼女をゲットしよう。
「トロル……」
「お任せクダさい……ワレはトロル族一の戦士、命の限りアナタ様と共に戦いましょう」
やはりトロルの存在は心強かった。
少しだけ不安は残るが大きい方のトロルが前面に出て戦えばきっと大丈夫だろうと考えた。
「よっしゃ! じゃあまずは例の場所まで進軍しやしょう」
「あ、うん……」
言葉は素っ気なかったが、彼はこの世界に来て初めてこれ以上無い興奮していた。
「き、綺麗な子もいいけど……か、可愛い子、だといいな……」
どうにもキモい笑顔を浮かび上げながら、ひひ、ひひっとこれまたキモい声を漏らしながら期待に胸を膨らます。
最も不純だがある意味純粋なやつを大将とし、トロルを中心とした魔物の混成部隊がついに動き出すのだった。
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