この世界のメイドさんは戦えるのか<Ⅲ>
「“ディテクト”目の前の巨大な生物」
【大型魔族:トロル】
【巨人を除く人型モンスターとしては最大の種。体長はおおよそ3~5m程で中には6mを超える個体も存在する】
【大昔は巨人の世界の住人だったが、世代交代を繰り返す間に知性を失っていき今に至る】
元巨人なのか。巨人て結構地味だけどかなり強い部類に入るんだよな。
【大柄な身体を支える強靱な肉体と全身が石のように硬い表皮で覆われている】
【体格や防御力も人型としては規格外だが、それ以上に恐ろしいのが驚異的な回復力である】
【手や脚などを切り取られたとしても直ぐに元に戻り、たとえ頭を吹き飛ばしたとしても回復する】
まじか……そんなヤツどうやって倒すんだよ。
【彼らの一撃は木製の城壁をいとも簡単に壊すほどであり、もし人間などがそれら攻撃を受けた場合深刻なダメージとなる】
【通常は人の居ない山奥でひっそりと暮らしているがエサ不足などにより人里まで降りてくる場合がある】
【人型種を主食としているが、何もなければその辺の岩や木など口に入ればなんでも食す悪食である】
【人間とは住む場所が離れているため、あまり出会うことはないがオークやゴブリン、コボルドなどは住む場所が近いため彼らは頻繁に襲われて食糧となっている】
【場合によってはより大きなオーガやノールなど人よりも大きな魔族なども平気で襲う】
【しかし知性は低いため、言葉さえ通じれば比較的騙しやすい】
そうなんだ……コボルドとかの魔物って人間以外にも天敵が結構居るんだな。
「“ディテクト”トロル更に詳細」
【他の惑星の原始的な知性体で、本来は大人しい性質だったがこの星に連れてこられて天敵が少なかったため、世代が進むつれて傲慢になっていった】
【驚異的な回復力を持つため、通常の物理攻撃で倒すのにはかなり苦労する】
【そのため強力な炎系か電撃系の魔法で細胞ごと焼けば、その部位の再生が不能となるため、比較的容易に倒すことが可能である】
なるほど……デルの本気魔法なら倒せそうだな。
しかしトロルも元は異星人なのか。なんだか少しだけ同情しそうになったが、だからといって食糧になる気はさらさらない。
【それらの方法が取れない場合、頭部を切断した後に胸から少し下に回復を司る臓器がありそこを破壊すれば、かなりの間相手の動きを停止させることが出来る】
【だがそれは行動を停止させることが出来るだけで、しばらくすれば回復して再び動き出すので注意が必要である】
そういう対処方もあるのか。
でも、あんなぶっとい首と分厚い胸板を斬るとか出来るかよ。
などと考えている間に対岸の魔物はクンクンと匂いを嗅ぐ仕草をする。
そして周りを見渡しメイドさんの方に視線を向けると見つけるとばかりにニヤッと笑い、こちらにゆっくりと向かってくる。
俺達とは川を隔てているがそいつはお構いなしに水の中に入って歩く。体長が大きいからか川の流れなど気にせず余裕そうだ。
「い、今の内なら逃げられるのでは!?」
「脚はこっちより速いから逃げ切れない……って、逃げなさい!」
「まじで!?」
奴は川の中腹辺りにまで来ている。さすがお腹の辺りまで沈んでいるが流されるような雰囲気は全くない。
「……はあっ!」
メイドさんは先手必勝とばかりに攻撃を仕掛ける。
浅瀬にまで入って長いポールウェポンを勢いよく振り回すがトロルの方は避ける素振りもなくそれを受け止める。
がいんっ!
メイドさんの一撃がトロルの肩の辺りに当たる。かなり重いのだろう激しく石に打ち付けたような固く乾いた音が響く。
だがそれだけの攻撃を受けてもトロルの表皮には傷一つ付いていなかった。
「くっ!」
軽口を叩きながら攻撃の手を緩めず数度繰り返して、全てがクリンヒットのはずだがトロルは涼しい顔をして脚を止めて全て受け止めた。
あの巨大昆虫を一撃で葬ったメイドさんの攻撃が全く効いていないなんて……なんつー固い表皮なんだよ。
「それにどうやってお手入れしてんだ?」
しばらくすると攻撃を受け続けるのに飽きたのかトロルが今度はポールウェポンと引けを取らないほど長い腕で攻撃にまわった。
腕を上段に振り上げ蚊でも殺すかのように平手を振り下ろす。
ばっしゃーん!!!
駆け引きも何もない。ただ腕を高くから振り下ろしただけだが浅瀬の水が爆発したかのように大きく弾け飛び、一瞬メイドさんが潰れたのかと思った。
「ぐお?」
トロルは不思議そうに自分の手の平を見るが、そこには何もない。
いつの間にかメイドさんはトロルの真横に移動していて、ポールウェポンでトロルの腕を目掛けて真横に一閃……。
がいんっ!
ほんの少しだけ刃が通ったみたいだが、とても有効打とは言えない。
攻撃を受けたトロルはそれに怒ったのかフックのようなパンチを繰り出すが、メイドさんはそれに合わせて今度は横腹にカウンター気味に強力な一撃を加える。
がいぃぃんっ!!
やはり石を打ち付けたような強烈に響く音がするが、これもまたさほど効いている様子はない。
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