奇跡の生還?<Ⅳ>

「……じゃあさ、僕で練習してみる?」


「はあ!?」


 いきなり何か凄いことを言い始めたぞ!?


「実は僕って……人間との混血だから子供は作れない身体らしいから」


「え……ま、まじで?」


「僕みたいな混血が出産をしたって記録はないんだ。だから里の男から見向きもされないんだけど……、あんたはい、一応僕の見た目は嫌じゃないっぽいし、そ、そういうに興味もあるから……」


 確か地球でも馬とロバの配合によってラバが生まれたり、ライオンと虎からライガーも生まれたりするが、彼らは総じて繁殖力がほとんどないって聞いたことがあるけど、それと同じような理由だろうか。


「ど、どうかな……やっぱり僕みたいのは気持ち悪い?」


 デルの紋様が、薄らと色を付けていくが複雑な色合いで感情が読みづらい。

 それだけ彼女も複雑な気持ちなのだろう。


「気持ち悪かったら、こうやって顔を埋めて嬉しそうにしていないと思うのだが」


「そ、そっか、じゃあ……」


 正直どうしたら良いかは全く分からない。

 彼女としたいかと問われればしたいと言うだろう。だが今すぐとは……。


「気にしなくて大丈夫。それで笑ったりしないし、それに僕はそれと同じくらい恥ずかしいものを見られているんだし」


 あ、そういえばそうでしたね。おしっこ中なんて裸以上に恥ずかしいかもしれないもんな。


「彼女はきっと待ってると思うし、あんまり待たせるのは可哀想だよ」


「そ、それは分かってる。分かってるけど……人間……いや勇者には色々とあるんだよ」


「なーんか難しいこと考えてるの?」


「そういうことじゃないんだけど……、勇者っていうか俺が居た場所は一夫一婦という考え方があってだな」


「それって絶対神の考え方と同じヤツ?」


「絶対神? いやそれはよく分からないけど」


 そんな神が存在するのか。そういえば神の正体が分かってるからか、女神以外の神様を調べたことはなかったな。今度セレーネに詳しく教えてもらおう。


「そ、それはつまり……浮気っていうかだな……」


「浮気? それって人間の社会で婚姻契約を結んだことで発生する話でしょ、え、もしかしてセレーネと結婚しているの?」


 顔を上げると、デルは不思議そうな表情で俺を見ていた。


「いや違うけど……」


「ん? えーっと、じゃあ何が問題なの?」


 そう言われても困ってしまう。

 真顔で話す彼女に、からかいや冗談の雰囲気は感じない。


「き、気持ちの問題?」


「はあ? じゃあ、こうやって人の身体をスケベに触りまくるのは問題ないっていうの?」


「ぐぬっ……」


 痛いところを突かれてしまった。


「まあ人間はセレーネみたいに上品でおっぱいの大きな娘が好みみたいだしね」


「だからそれを言ったらこんなことしてないっての」


「そう? 確かにいまだに触っているけど……」


「おっと……」


 あまりにも気持ちよくて、顔を上げても思わずずっと触っていた。


「少なくとも今日は止めておくよ。結構飲まされたから、しらふの時にちゃんと判断させてくれ」


「こういうときは酔った勢いの方が早いと思うんだけど」


「俺はしっかりとしておきたいの」


「ふーん、じゃあそれでもいいよ。考えが決まったら言って何時でも相手してあげるから」


「……本当にいいのか?」


「よく言うよ。散々触りまくっておいて、それにどんだけキスしたと思ってんのよ」


「いや、あれは……ま、まあそうだけど……」


 確かに彼女にMPを渡すために何度もそうやってしているのは事実。


「でしょ、だったら今更一度や二度したところでそんなに変わらないでしょ」


 お触りやキスとエッチは大分違うと思うのだが。


「でも、もう直ぐにここを出発するんだよね?」


「セレーネの治療次第だけど、数日以内にはそうするつもり」


「だったらそれまでにしないとダメじゃない」


「なるようになるって感じで流れ任せで考えるよ」


「なにそれ……。ああ、つまり僕に襲えって言うんだね」


「そういうわけじゃないから……」


「うん、大丈夫だって分かってるよ」


 こいつ絶対に分かっていないだろ。でも確かにいずれは乗り越えないといけないトラウマなんだし、最悪そういう流れになったらなったでどうにかなるだろ。


「ここに……ずっと居るのはダメなのかな?」


「ここも良い場所だけど、せっかくの異世界なんだし、もう少し色々と見聞きして周りたいかな」


「そっか……、もしかして元の世界に帰る方法を探しているの?」


「あ、それはないよ。どうせ帰れないって知っているからさ」


「帰れないの?」


「そうらしい。まあ前の世界にあまり未練はないから帰るつもりはないけどね」


「そうなの?」


「あっちにはあんまり良い記憶がないし、最後は仕事で心と体を磨り減らして病気で死ぬ一歩手前だったんだ」


「そっか、あんたも色々と大変だったのね」


「これでも一応な」


 その後、デルとの会話が途切れ、しばらくの間俺は彼女の太ももを楽しむ。


「……さてと、じゃあそろそろ僕は寝ようかな」


「このままここで寝ても良いのか」


「構わないよ。じゃあ一緒に寝る?」


「そうだな……なんか疲れたし、このまま寝てもいいかな」


「じゃあ、寝よっか」


 疲れに酔いもあり、彼女が一緒に寝るという言葉を素直に受け入れてしまった。

 セレーネの時みたいに眠れないかと思ったけど、意外とあっさり眠ってしまうのだった。

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