二度目の帰還

二度目の帰還

 里のドームに戻ると紋様族のみんなが出迎えてくれそのまま祝勝会を開くことになり準備する間に軽く温泉に入って汚れと疲れを取ることになった。

 普段は食に興味が薄い彼らも今日ばかりはご馳走やお酒を用意しているとのこと。


「ふう……」


 やはりいい湯だな。


 彼らは過去数度に渡る人間の侵攻にずっと戦わずに逃げ続けていた。

 その都度、住処を追われ同胞を数多く失っていったのだ。

 だがとうとう逃げる場所がなくなり、このドームが最後の里になっていた。


 そんな中で、またも人間の身勝手な理由で侵攻が開始されてしまうが、結果的に軍隊との一度も戦闘をすることなく、双方に大きな被害を出さずに撤退させることに成功した。


 十分に大きな戦果と言えるだろう……。

 これで数年くらいは大丈夫だろうが、また忘れてやってくる可能性はあるんだよな。


「勇者様、また何か考えごとですか?」


 となりに座って湯船に浸かっているセレーネが話しかけてきた。


「少しね。今回は上手く立ち回って最小限の被害で済んだけど、これで二度と攻めてこないってわけじゃないんだよなって」


「ああ、確かにそうですね」


 何事もなく隣に座っているセレーネに、もう気にするのは止めた。

 いや、もちろん気になるよ。極力そうしているつもりなだけだけどさ。


 ……まあ無理なときはどうあっても無理だけど。


「この世界は弱肉強食で強い側が弱い側を押し潰していくのが当たり前なんだろうけど、それでもなぁ……」


「出来れば彼らを何とか守っていきたいと思っていらっしゃるのですね」


「まあね……、でも少しおこがましいかもしれないけど」


「勇者様は大変難しいことを成し遂げたのですから、その先を考えても決しておこがましいとは思いませんよ」


「そうかな……まあ色々と考えてみたけど、どれもこれも難しくてさ。俺がここにずっといれば何とかなるかもしれないけど、それはさすがに無理だし」


 俺としては、もう少し色々と世界を歩いて回りたい。

 ポータルってところや玉さんとの約束の図書館都市にも行きたいし。


「勇者さん、聖女さん、用意が出来ましたのでお風呂から上がったら来てくださいねー」


「あ、はーい」


 カトリナが準備が出来たと呼びに来た。


「それでは行きましょうか」


「そうだね」

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