そして就寝

そして就寝<Ⅰ>

「そんなに嫌でしょうか?」


「嫌なわけじゃない。ただ……一緒に寝たらその……」


 彼女に情けなくも抱きしめて慰めてもらった後、就寝することにした。


「何か勇者様は困るってしまうことが起こるのでしょうか?」


 分かってて言っているだろう。

 セレーネの言葉はなんとなくわざとらしさを感じた。


「それでしたらわたくしがこのベッドで寝ましょうか?」


「せっかく大きくて柔らかいベッドなんだ。こんな小さいベッドは勿体ないだろ」


 大きなベッドが一つしかないので俺は雑嚢から出したコットで寝ると言ったら、思い切り反対された。


「これだけ広いのですから一緒に眠りましょうよ」


 ちゃんと眠れればそれでもいいんだけどね。


「今日はばっちりお風呂に入りましたから臭くないはずです!」


「それはさっきで分かってるよ」


「でしたら何も問題はありませんよね」


 この感じだともう何を言っても一歩も引くことはないだろう。

 それに何より今日は色々とありすぎて疲れているし……そろそろ眠りたい。


「分かったよ……じゃあ一緒に寝よう」


「はいっ、数日ぶりのベッドですからね。楽しみです」


「ああ、本当にそうだな」


 まあこれだけ大きいんだ端っこ同士で寝れば大丈夫だろう。


「そうと決まりましたら……ふわぁ……」


「眠そうだな」


「……も、申し訳ありません」


 セレーネはあくびを隠すように手を口元に置いて話した。


「いや、俺ももう相当眠いわ」


「そうですよね、今日も色々とありましたし、それではお休みなさいです」


「あ、ああ」


 俺は彼女に背を向けて極力離れて寝ることにする。


 何度か彼女とは一緒に寝ているけど簡単に慣れるものではない。

 ましてや、こうなるとどうしてもあの日を思い出してしまう。


 そう……俺は暴発してしまった。

 彼女は優しく大丈夫と言ってくれるが、俺自身はどうしても情けない気持ちが蘇ってしまう。


 一緒に寝るのは自分は気にしてないという彼女なりの優しさなのかもしれない。

 もし逆で『勇者様早すぎ~、ちょ~ウケる』とか思ってたら死にたくなりそうだが、セレーネに限ってそれはない……と思いたい。


 このベッドは広くて思ったよりも寝心地が良い。これなら今日は眠れるかもしれない。

 掛け布団は一枚なので極力寝るタイミングは同じ方が良さそう。

 それに起きていてもやることはないしな。


 ……嘘である。


 実はひじょーに、今! 俺は! とんでもなく自家発電! がしたくてしょうがなかった。


 女神の元に居たときは仕事を与えられて、身体よりも精神の方が優先されていたのか自家発電とかそういう気持ちにならなかった。


 だが今は色々と女性陣からありがたいギフトの数々をいただいたことで、若返った肉体の方が前面に出て来て諸々旺盛な感じなのです。


 現在の性欲ゲージはマックスを振り切る勢いの状態になっているのです。


 先ほどセレーネさんのお胸やお尻に括れた腰やうなじ、それだけではなく喋らなければ美人であるデルのしてるところとか妙に色気のある族長さんとキスもしたわけで……。

 綺麗な形のおっぱいとか無毛地帯や、放物線とか小っちゃい口とか。なんだかんだで皆様ありがとうって感じである。


 出来れば記憶が新鮮なウチに是非とも使いたいところなのだが……。

 せめて部屋が別々だったら助かったんだけど、どうしたものか。


 ぱおーんっ!!


 うわ……ちょこっと触ったがめちゃくちゃすげえ状態じゃねーか。さすが若返った肉体は反応が凄いな。


 ここで誰もが思うことだろう。だったらセレーネに頼めばいいじゃないかと。


 ふっ……、それは当然考えたさ、だがどう頼む? そんな簡単に今夜どう? とかHしようぜ! なんて言えるかっての。


 いや……済みません。もっと正直に言うとしたいのはしたい。大いにしてみたい。

 でも、どうしてもあの失敗した日がよぎってしまいその先に進む勇気がない。もしもう一度失敗したら二度と立ち直れない気がしてならないからだ。


 おっさんである精神はそのトラウマをずっと引きずっているが、若い身体はそんなトラウマなんて全く関係なく、いつでもフルバーストいけるといった状態になっている。


 この精神と身体の乖離というかバランスの悪さここでも顔を出していて、これであの失敗を生んだわけだからどうしても慎重になってしまう。


 だがしかし性欲は解消するしか方法はない。

 というか正直に言って、ともかく今は一人エッチがとてもしたいんですっ!

 いや普通の若い男だったらするべき日だろ!


 って、俺は一体誰にそんなに力強く言ってんだ……。

 うーん、チラリとセレーネの様子を伺おうとほんの少しだけ彼女の方に見てみる。


「どうかなさいましたか」


 既に寝ているかと思ったがセレーネはまだ起きてこちらを見ていた。


「い、いや別に……」


 変な誤解をされていないだろうか。


「あら? すんすん……」


「ど、どうかした?」


「あ、やっぱり……、ずっと気になっていたのですが勇者さまって」


 げっ、もしかして……状態に気付かれてる?


「なんだかいつもよりもすごくいい匂いがするのですが」


「え!?」


 お、男がいい匂いだなんて、もしかして彼女は淫魔のたぐいなのか?

 聖女で淫魔……なんだそれめっちゃエロゲの世界じゃないか!?

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