【妻シリーズ第三弾】エロ小説作家の婿ですが、何か?
udonlevel2
第一章 妻はエロ小説作家ですが、何か?
第1話 妻は素敵な女性ですが、何か?
妻との出会いは、何処から話せばいいだろうか。
魔物討伐隊が、魔族の集落である村に討伐に来た時に始まるのだが……その集落では、人間も多く生活しており、彼らは一般的に邪教徒と呼ばれていたらしい。
そして、魔物討伐隊は魔物も含め、邪教とを殺すことが命令されていたのだと言う。
例外なく、魔族であった母も、人間であった父も亡くなった。
壮絶な戦いが繰り広げられる中、魔族と人間とのハーフ等、魔族討伐隊にとっては滅ぼさなくてはならない存在だっただろう。
とは言っても、魔族と人間のハーフ等、数はそんなに存在しない。
生き残ったハーフの子供は、俺一人だけだった。
殺すか、生かすか、森に放置するか。
そんな論議される中、俺は呆然と人間の大人たちの会話を聞いていた。
別に父親が殺されたことがショックな訳ではない。
別に母親が死んだことがショックな訳ではない。
何時かはこの村は無くなるだろうと大人たちは常々話していたんだ。
俺だってその日が来れば死ぬだろうと覚悟を決めていたのもあって、怖くはなかった。
「やはり、殺すべきだろう」
誰かが、そう口にした。
俺はその声の方へと静かに歩み寄る。
――さぁ、俺を消してくれ。
そう思って前に出たのに、俺の前に一つの影が伸びた。
「まぁ、待ちたまえ! 例え魔族とのハーフであろうと幼子であることに変わりはなかろう! 罪なき子を殺すこと事が誉だというのかね! 私は違うと断言しようではないか!」
「ミランダ副隊長」
「良ければ彼の処遇は私に任せてはくれんかね! なぁに、悪いようにはしないさ!」
――豪快な女性だった。
――それと同時に、強い生命力を感じる女性だった。
――何より、何よりもその力強さに惹かれた。
「我が名はミランダ! さぁ、君の名はなんだい!」
そう言って差し出された手と輝く笑顔。
何よりも、夕日に負けないオレンジの髪に新緑の瞳が脳裏に焼け付いた。
……この時、俺は初めて恋と言うものを知った。
それからは、彼女の保護の元、孤児院で成人するまで生活することになった。
人間の生活と言うものを覚える為でもあったけれど、目標があったのだ。
それは、ミランダからの提案だった。
『君が無事成人した暁には、私の許へ来るがいい!』
脳がしびれるほど喜びに打ち震えた。
彼女と共にある為に、最低限ではあるものの、人間関係の構築や、家事に関することを、とにかく吸収していった。
成人したらミランダが俺を迎えに来る。
その事だけを胸の希望にし続け……俺は16歳になり孤児院を出る日――。
「約束を守りに来たぞ! 我が婿殿よ!」
あの時よりも大人になった彼女が、満面の笑顔で俺を受け止めてくれた。
その日のうちに婚姻関係を結び、俺はミランダの夫になった。
それからは怒涛の日々だったし、予想外の事もあった。
妻は、ミランダは……魔物討伐隊は表の仕事で、裏では――エロ小説作家だった。
――その後、紆余曲折あった後、ミランダ魔物討伐隊を引退し、実の父である、ミハエル・ジョルノア伯爵の家へ戻ることになり、俺も婿養子と言う形でジョルノア家に入ることになった。
そして俺も、オスカー・ロベンと言う庶民から、オスカー・ジョルノア伯爵へ。
魔族と人間のハーフが伯爵になること自体、本来ならあってはならない事だが、俺が魔族の血が流れていることは殆ど知られていない。
そして、ミランダも全く気にしない。
ミランダの父である、ミハエル様さえも気にしない。
この親子、豪快過ぎるだろう。
問題があるとすれば、貴族社会に関して全く無頓着のミランダにかわり、俺が伯爵としてジョルノア家を守っていくことになった事だろうか。
――仕事は山のようにある。
――覚える事だって気が遠くなりそうだ。
それでも、ミランダが俺を守る為に苦虫を噛む思いで庶民から貴族になったことを思えば、我慢できる事でもあった。
この辺りは後日語ろうと思うが、ミランダが俺を守る為に頑張っているのは事実だ。
10も年上の妻には、思う事があるのだろう。
だから俺はせめて、妻がエロ小説作家として羽ばたきながら執筆出来るように頑張ることを誓いながら、伯爵家に相応しい人材になるべく、家庭教師を付けてもらいながら勉強を進めていくのだ。
ただ、一つだけ言いたいことがある。
「今度の小説には、ショタの初々しい恋愛を入れ込みたいと思っているんだがね! モデルは無論、君だ! さぁ、私にネタを提供したまえ。 初々しい恋愛と言うものを私にぶつけたまえ!! さぁさぁさぁさぁさぁ!!!」
「ウザいっす」
小説のネタに俺を使おうとするのだけは、どうにかして辞めさせなくてはならない。
ただの恋愛小説ならネタは提供できるだろう。
だが、何度も言う。
ミランダは、エロ小説作家だ。
つまり、そのエロ小説のモデルになれと言っているのだ。
冗談じゃないがお断りだ。
「ミラノ・フェルン先生はスランプのようですね」
「ぐ……っ 萌が足りないのだよ、萌が!!」
「オネショタ最高~! とか叫んで執筆進めてたじゃないっすか。理想のショタがいないんすか?」
「理想のショタかね? 君にことかな?」
「さらっと口説いてくるの、やめてくれませんかね?」
「ははは!! そうやって顔を赤らめる! 実に良い……どうだね、今から子作りでもするかね?」
「夜まで我慢してくださいっす」
こんな妻に助けられ、愛され、守られてばかりでは男が廃る。
俺も頑張らなきゃな。
そんなやり取りを二年ほど送った頃、俺は晴れて義父であるミハエル様から、当主に相応しいだけの教養を手に入れたと言われ、家庭教師の勉学から解放され、更にミハエル様からの要望により、庶民の頃のように彼女の手助けをする日々を送ることになった。
庶民だった俺がしていたこと。
それは――ミランダ宛に届くファンレターのチェックだ。
正直に言おう。
……地獄だったのは言うまでもない。
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本日より、妻シリーズ第三弾(一応ラスト?)がスタートです!
婿視点と言う斬新な目線で書かせていただきます!
また、小説家や絵師等でてきますので、是非お楽しみに!
本日は3話まで一気に更新です。
最後にあとがきを書かせていただきます(`・ω・´)ゞ
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