急に異世界に飛ばされても困ります……あれ？困りませんね？ - 持っててよかった収縮拡張魔法！ -

第23話 依頼先に到着する

「すいませーん！　ギルドから依頼を受けた者ですけどー。……。あれ？　また？」

　ユーフェが施設に到着し、扉を叩いたが沈黙が訪れた。鍛冶屋でドワイトが寝ていた為に反応がなかったのを思い出しながら、扉を押したり引いたりしてみたが開くことはなかった。

「えー。今回は本当に留守なのかなー。でも身寄りのない子供達が居るって聞いたから誰もいないって事は……。ん？」

　ユーフェが困惑しながら視線を移すと、窓から子供達が覗き込んでいるのが見えた。しかし、ユーフェと目が合うと一瞬で隠れるように姿が消える。

「なんだったんだろう？」

「……。お、お待たせしました。ギルド紹介の冒険者さんですよね？　そうですよね！？」

「ええ。ギルドで依頼を受けたユーフェっていいます。中に入ってもいいですか？」

　扉を少しだけ開けて怪しい人物かどうかを確認する若い女性に、ユーフェが柔らかな笑みを浮かべて問題ないと伝える。最初は怪しいそうにユーフェを見ていた若い女性だったが、改めてユーフェの容姿を見て驚きの表情を浮かべたまま言葉を失う。

　透き通るような銀色で腰まで伸びる髪。長い睫毛に潤んでいる瞳。柔らかい笑みを浮かべる唇は見る者を引き付けるような艶やかさがあった。

　まるで絵画から飛び出してきたような造形美であり、着ている服も生地からして平民には買えないような物である事が分かった。そんなユーフェを見て若い女性は思わず見惚れてしまう。

「あ、あの、どうかされましたか？」

「はっ！　い、いえ。すいません。どうぞ中にお入りください」

　硬直している女性の反応にユーフェが困惑していると、若い女性が申し訳なさそうに施設の中に招き入れてくれた。中に入ったユーフェだが、ギルドと同じような自分に向いている強烈な視線に気付く。

　ギルドでの視線の集中とは違い、好奇心だけに満ち溢れているように感じていた。

「わー。お姫様だー！」

　視線を向けている一同の中で、一番小さな少女が大きな声で叫んだ。それを皮切りに周りの女の子達も騒ぎだし、男の子はチラチラと視線を向けては恥ずかしそうに下を向いていた。

「ほら。邪魔しちゃダメだから部屋に戻っていないさい」

「「「　えー　」」」

　扉を開け対応してくれている若い女性が子供達を追い払う。女の子達はユーフェに向かって手を振り、男の子達は逃げ出すように走り去っていった。

「ふふっ。みんな元気で可愛い」

「そうですね。本当に可愛い子達ですよ。元気が良すぎるので大変なんですけどね。あっ、応接間はこちらです」

　勢いよく走り去っていく子供達を見ながらユーフェが呟いていると、若い女性が嬉しそうに答える。2人は応接間に移動して暫くすると、先程叫んでいた小さな少女が危なっかしげにお茶を持ってきた。

「どーぞ、お姫様！」

「ふふふ。ありがとう。これはお礼よ。皆んなで仲良く分けるのよ。お名前は？」

「アンだよ！　わーい、ありがとうお姫様！」

　アンと名乗った少女からお茶を受けとったユーフェが、アイテムボックスから市場で買ったお菓子を取り出してアンに手渡しながら頭を撫でる。

　嬉しそうに目を細めながら、されるがままになっていたアンだが、お菓子が入った袋をギュッと胸に抱くと元気よく走り去っていった。

「ユーフェさん。よかったのですか？」

「ええ。まだいっぱいありますからいいですよ。それで依頼内容を確認したいんですが」

　お菓子を手渡したユーフェに申し訳なさそうにしている若い女性に、問題ないと柔らかく笑みを浮かべたユーフェが依頼内容を確認する。

「ギルドからはお手伝いをして欲しいとの事でしたが、何をすればいいですか？　あと、シスターにも挨拶をしたいんですが、今はどこに？　あっ！　あなたのお名前を聞いていませんでしたね」

　ユーフェの問い掛けに若い女性はシスターの補助をしているマリアと名乗る。また、教会でシスターの見習いをしており、この施設には手伝いに来ていると伝えた。自己紹介が終わったマリアは手伝って欲しい内容を伝える。

「この時期はシスターが寄付集めに周辺の街まで行かれるので、私が1人で子供たちの面倒を見ています。なのでユーフェさんにはお手伝いをお願いしたいのです」

「ギルドで聞いた内容と同じですね。問題ないですよ。まずは掃除からでいいですか？」

　腕まくりしながらやる気を見せているユーフェの様子に、可愛らし者を見るようにマリアは微笑みながら掃除場所に案内をするのだった。